成城大学

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修了生・在学生の声

修了生の声

国文学専攻

真島 望(2017年度博士号取得、熊本県立大学准教授)

 私は、主に近世の地誌や説話・俳諧を研究対象として扱ってきました。地誌というのは、ごく大ざっぱに言うならば、現在のガイドブックに類似する書物群を指します。ある地域に関する地理的・文化的・歴史的情報や知識を述べたもので、『○○名所記』あるいは『○○名所図会(めいしょずえ)』といった書名を持つものが代表的です。
 近世の地誌が叙述の対象とする「名所(めいしょ)」は、平安時代頃に定着した「歌枕(うたまくら)」という和歌における概念に関連します。日本の最も歴史あるポエジーと密接に関わるという点において、地誌とは優れて文学的だと言うことができるでしょう。
 また、地誌はその地域に積み重ねられた歴史や記憶を盛る器でもあり、史実か否かはさておいて、非常に豊かな伝説や説話の宝庫ともなっていますから、その点においても文学的側面を有するわけです。
 以上のような理由で、近世地誌は非常に魅力があり、またこれからの進展が期待される研究対象なのですが、ここまで簡単にたどり着いたわけではありません。当然のことながら大学院での苦闘の結果なのです。
 学部から大学院に進学する際は、ぼんやりともっと勉強がしたいという思いと、上田秋成が好きでしたので、それに関する何かが研究できればいいななどというごく安易な考えしか持っていませんでした。皆さんご承知の通り、上田秋成やその作品については、近世文学の他の作者に比較しても極めて分厚い研究の積み重ね(すなわち研究史)が存在します。多くの優れた先人によって様々な議論が尽くされてきたわけで、そのような領域に、私のように考えなしに飛び込んだところで、その研究史に何らかの足跡を残すことなどできるはずがありません。
 そんな時、行くべき道筋を示して下さったのが指導教授であった宮﨑修多先生です。卒業論文執筆を前に一本の論文をご紹介下さり、その中で、読本(よみほん)前史に位置づけられる重要な散文作品群の作者の一人として触れられていた菊岡沾凉(きくおかせんりょう)という俳諧師を扱ってはどうかと声をかけられました。
 沾凉は、芭蕉中心史観が幅をきかせる俳諧研究においては、長らく等閑に付され省みられることがありませんでした。しかし、実際に研究を始めてみると、俳諧史でも文学史でも重要な位置を占める作品が多いことに気付かされます。それまで着目されてこなかったからこそ、自分の調査によって明らかになる新事実が多く、そのことは研究活動の大きなモチベーションとなりました。
 その沾凉の著作の一つに『江戸砂子』という、江戸地誌の重要作品があっったことがきっかけとなり、近世地誌に関心をもち、紆余曲折の末これを散文史上で捉え直す試みに意義を見出したのです。すべては宮崎先生の御助言から始まったことで、いくら感謝してもし尽くすことはできません。
 上にも述べた通り、大学院進学時は(今もそう変わりませんが)、そもそも能力不足であった上に五里霧中の状態だったわけですが、それでも現在こうしてまがりなりにも研究者のはしくれとして生きることができている事実が、成城大学大学院の教育力の高さを物語っていると思います。
 指導教授はもちろんのこと、そのほかの先生方(退職された先生も含め)も授業の履修の如何に関わりなく、折々に的確な指摘や指導を惜しみなくして下さいます。すべての院生に対して暖かな目配りがなされていることは、成城大学の掲げる少人数教育の大きな利点でしょう。もちろんそれは、学問的厳格さに欠けるということではありません。むしろ、その逆で、学生は和やかな環境の中で自由に自分の発想や着想を延ばしてゆくことができる一方で、絶えず自分自身を厳しく律し、その都度具体的な目標を設けつつ努力を怠らない姿勢が求められます。「やさしさ」とそれに裏付けられた「厳しさ」の絶妙なバランスもまた本学の魅力の一つではないでしょうか。
 以上、思いつくままに述べてきましたが、ここで触れることができたのは本学大学院のほんの一側面に過ぎません。学問の大海原を旅するにあたり、貴方にとって最良の船と羅針盤がここにあることは間違いありません。一人でも多くの方が勇気をもって漕ぎ出して下さることを願います。

英文学専攻

大澤 舞(2020年度博士号取得、明治大学理工学部 専任講師)

 私は文学研究科英文学専攻の博士課程前期から博士課程後期へと進み、イギリス留学を経て単位取得満期退学後、博士号を取得し、大学の専任講師として就職することができました。この間に英文学専攻の先生方をはじめ、多くの方々や各種制度に支えられながら、さまざまな経験を積みました。英国レスター大学大学院への留学と同大学院での修士号取得には、本学の休学制度を利用しました。博士課程後期退学後は、本学のグローカル研究センターのPD研究員や本学および他大学の非常勤講師として勤務しながら、指導教員の先生をはじめ英文学専攻の先生方のアドバイスのもと、博士論文の執筆を進めました。学会での研究発表や学会誌への論文投稿に向けても、きめ細やかな指導をいただきました。
 今日のアカデミアでは就職ポストが少ないのは事実ではありますが、留学や学会発表、論文投稿、そして学位論文の提出を通して着実に成果を上げることで必ず道は拓かれます。みなさん自身が積極的に希望するならば、英文学専攻はそのための方法や「場」をいつでも提供してくれます。これからの長い研究生活のなかで、成城大学大学院を拠点に、国内外を問わず、まだ見ぬ「知」を求めてぜひ多くのことを経験してください。先が見えず苦しいと感じるときもありますが、焦らず腐らず、みなさんが自分なりの道を切り拓いていくことを願っています。

 
 

今井 英雄(成城学園初等学校 教諭)

 英文学専攻では「早期修了制度」が導入されており、学部在学中に科目等履修生制度を利用して大学院の授業を受講し、単位修得が認められた場合、大学院へ進学後に修了要件の単位として算入することができます。私はこの制度を利用し、大学4年次から専門性の高い授業や研究方法等にいち早く触れることができ、研究テーマへの関心を深めることができました。また、実際の授業や研究指導は少人数で実施されるため、一方向型の講義形式のものは少なく、自分たちのリクエストに応えていただくような場面が非常に多くあり、朝から晩まで常に探究心をくすぐられるようなキャンパスライフを送ることができました。
 私は実験言語学的視点から「英語学習者不安」について研究するため、実験ソフトのプログラミング、質問紙の作成や、統計処理の方法について、縦断的かつ横断的に学ぶことができました。また研究を進める中、学内では海外の大学教授を特別講師として行われるシンポジウムに参加することができたり、学外では指導教授にご紹介いただいた研究会へ参加・発表を行う機会にも恵まれました。このような成城大学大学院ならではといえる恵まれた環境、および先生方のご指導ご鞭撻のお陰もあり、修士号取得後は、自分の思い描いていた学校教員として就職をし、高等学校および小学校にて英語教育に携わることができました。
 このように英文学専攻には、大学院生たちの興味・関心に対して親身になって向き合ってくださる教授陣が沢山いらっしゃり、最後の最後まで学生一人ひとりの研究論文に磨きをかけてくださることと思います。そして修了後には、そこで培った知識・技能を新たな職場等に還元・応用できる力が身につくはずです。

 
 

丹羽 彩夏(東京都世田谷区立瀬田中学校 教諭)

 私は、学部では文芸学部英文学科、博士課程前期では文学研究科英文学専攻へ進み、単位取得修了後、現在、東京都の教員として働いています。学部生の時に一種教員免許状を取得し、中学・高等学校の英語科教員になりたいと思うようになり、専修教員免許状取得のために大学院へ進学しました。専門は英語文学でしたが、在学中は、アメリカ文学に留まらず、英語学・英語文化など様々な分野の講義を受講することで、外国の歴史的背景や言語の変遷に触れることができました。指導教員の先生をはじめ、英文学専攻の先生方からの手厚いご指導とアドバイスを受け、論文執筆を完成させることが出来ました。また、修士論文に留まらず、学内誌への論文掲載の機会もいただき、幼稚園からの成城学園生活に一定の成果を残せたと思っています。これらの大学院での経験を通じて、学生時代より広範な知識を得て、視野も広がりました。こうした成長のおかげで、教員という仕事に就くことができたと考えています。英文学専攻は、私にとってこれからの進路を切り開くための手立て・場所を提供してくれるものでした。ありがとうございました。

日本常民文化専攻

関口 由彦(国立アイヌ民族博物館・研究主査)

 成城大学大学院日本常民文化専攻は、日本史学、民俗学、文化人類学からなる専攻です。そこで何を学び、研究するかというと、誤解を恐れずに私なりに言えば、「普通の人たち」が特定の文化や生活様式をもってどのように生きてきたかということを探究するのだと思います。世界には多様な文化があり、したがって様々な生き方が存在します。日本の各地域にも多様な生き方がありますし、歴史的にも時代ごとに様々な生き方がありました。このような生き方の多様性というものを、「私」も「あなた」も普通の人間だという共感をベースにして理解しようとします。私が研究してきた首都圏で暮らすアイヌの人たちは、どこにでもいそうな人たちであると同時に、それぞれの計り知れない思いをもってアイヌ文化を受け継ごうと努力している人たちでもありました。等身大の生身の人間を具体的に議論するのが、常民文化専攻の特徴の一つだと思います。どんなに理論的な課題であっても、議論のベースとなるものは同じでしょう。そのため、研究の対象について徹底的に議論したことが、同じように「普通の人間」である自分自身の生き方を問い直すことにもつながっていったということを私は何度も経験しました。「こんな生き方もあるのか!」と驚くこともたびたびでした。
 私は、大学院博士課程後期に進学し、その後は非常勤で研究をつづけ、長い時間をかけて現在の職にたどり着きました。そのあいだ、何度も自分の道を問い直してきたのは言うまでもありません。そのような得難い経験ができることも、この専攻の特徴です。

 
 

玄蕃 充子(文化庁文化財第一課・調査官)

 私は文芸学部を卒業後に就職しましたが、学芸員として文化財保護行政に幅広く携わりたいと考え、退職して日本常民文化専攻に進学しました。企業という環境で働いたことで、学部在籍時には気づくことができなかった日常生活の成りたちを学ぶ意義や楽しさに気づくことになりました。
 日本常民文化専攻の魅力は、民俗学・日本史学・文化人類学という三つの分野の第一線で活躍されている先生方から指導を受けることできることです。複数の分野の研究成果や研究手法を学ぶことで、自分自身の研究課題を深めるための視野を拡げ多角的に研究対象を捉えることができるようになりました。また、成城大学には民俗学研究所やグローカル研究センター等の文化研究に関する附置機関が備わっており、最新の研究に触れることや、多才な先輩方との交流があり、研究に関するアドバイスを受けることもできました。
 大学院在籍中に鹿児島県大島郡与論町や千葉県南房総市、山梨県南巨摩郡早川町等、日本各地でフィールドワークや資料整理作業を行いました。これらへの参画は、自発的なものだけではなく、授業の一環や先生方や先輩方からの誘いによるものでした。このように日本常民文化専攻では、学外での知見を広げる機会も得られます。
 私は博士課程後期単位取得退学後、自治体に学芸員として就職し、文化財保護行政と博物館業務に従事した後、現在は文化庁で民俗部門の調査官として勤務しています。在学中に学んだこと、経験したことはすべて現在の仕事につながっています。
 生活文化の実証的研究をしたい人や、研究成果を社会に還元できる仕事をしたいと考えている人にとって、日本常民文化専攻は、最適な研究環境だと思います。

美学・美術史専攻

清水 友美(小杉放菴記念日光美術館 学芸員)

 大学院生活は、自らの研究を深める実に贅沢な時間であったと言えますが、それ以上に、今の私にとって、二つの大切なことを身につける場であったと振り返って思います。
 まず一つは、「多角的な視点」です。美学・美術史専攻では、日本・東洋・西洋美術史、美学など多岐にわたる分野の講義を受講することができます。自分の専門にこだわらず、様々な講義を受講することで、新たな視点と知見を得ることができました。昨今、美術館・博物館では所蔵作品展の見直しが進められつつあります。限りある作品で一つの展覧会を組み立てるには、美術史を横断的に捉える力が必要になりますが、ここで大学院での講義が大いに活かされているように思います。また、講義の他にも、本学では自らの研究を発表する場であるゼミが数多く設けられています。発表後は、先生と学生による活発な議論が繰り広げられ、これまで見落としていた視点に気づくなど、大いなる刺激を受けました。
 もう一つは、「言語化する力」です。私は修士課程から博士課程を通して、卒業論文で取り組んだテーマの研究を続け、修士論文・学会発表を経て、一つの論文としてまとめることができましたが、その過程で長年研究に向き合われてきた先生方から直接ご指導いただいたことは、この上ない貴重な経験となりました。とりわけ、美術史学は作品を様々な角度からアプローチし、そこに込められた意味を「言語化」する学問と言えます。実際に作品を見て、同時代の文献や資料などを読み解き、導き出した論を自らが発することばや文章で伝えることは、視覚に重きが置かれている一方、その表面だけで価値を測る現代において必要なことではないでしょうか。わかりやすいながらも、来館者に新しい価値観をもたらす展覧会を追究する今、先生方にご指導いただいたすべては、私の大きな指針となっています。
 限りある大学院生活は、無限の可能性を秘めています。成城大学大学院は、その可能性を広げられる場であると強く確信しています。

コミュニケーション学専攻

海老田 大五朗(2005年コミュニケーション学専攻博士課程後期単位取得退学 新潟青陵大学福祉心理学部社会福祉学科 准教授)

私は成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科で4年間学び、その後コミュニケーション学専攻博士課程前期及び博士課程後期に進学しました。後期課程在学中から東京都内の専門学校で教員を勤めはじめ、2011年4月から地方の私立大学で教員として働いています。
もともとジャーナリストになりたかったのですが、学部で勉強していくうちに、ジャーナリストという職業は自分が考えていたものとは異なることに気付きました。しかし、進路を変更するにしても、学部卒のままではどこにいっても通用しないのではないかと考えるようになり、大学院への進学を思い立ちました。論理的に物事を考え、難解な文章でも読みこなせるようになり、読者を説得できるような文章を書けるようになることは、どのような職業に就くにせよ「よい仕事」をするための必須事項と思っていましたし、現在もこの考えには修正を要しません。そして紆余曲折を経て大学の教員になりました。
少人数大学院のため週に2~3コマ分くらいの発表を抱えなければならず、生活費を捻出するために夜は塾講師として働きながら、睡眠時間を大幅に削って食事中も知識を詰め込み、明け方まで発表のためのレジュメを作成する日々を送っていました。このような大学院生活を経て自分が望んでいた能力を身につけることができたのか、いまだによくわかりませんが、幸運にも文学博士の学位をいただき、博士学位請求論文を書籍にすることもできました。それでも、大学院在学中にはもっと勉強ができたのではないかと、いまだに後悔しております。
大学院というところは徹底的な修学を課せられる場であると思いますし、そうでないなら大学院という場所に意味などないように思います。ただ勉強したいだけなら独学でよいです。あと30年は追いつけないと思わされるような先生方を目の前にして、その30年を10年に短縮できる道筋が示される場は大学院以外にないのだと思います。知識をもつものに憧れ、知識を得ることや自分の主張を文字にすることに寸暇を惜しむという生き方は、周囲の人びとから理解されがたいものですが、それなりに素敵な生き方だと思います。

ヨーロッパ文化専攻

櫻井 理恵(株式会社櫻井印刷所 代表取締役)

 私は成城大学文芸学部から成城大学大学院文学研究科にて、ドイツ文学を研究していました。進学を決めたきっかけは、大学時代の春休みに2ヶ月のミュンヘン留学。語学習得が主な目的でしたが、現地で触れたドイツの歴史や文化、また人々に大きな影響を受け、さらにドイツ文学に興味を持ちました。
 大学生時代はドイツ語があまり得意でなかったのですが、大学院へ進学して原文に触れるうちに、語学を学ぶことへの意欲はもちろんのこと、1冊の本から文学に関する興味に加え、美術や建築、宗教や政治へとどんどん枝葉が広がっていきます。そんな時に成城大学大学院には、さまざまな分野を研究されている先生方が身近にいらっしゃることで、学部・学科を超えた交流ができました。
 成城大学大学院で「知ること」に触れた時間は、現在経営者である私にとっての核ともなっていると感じています。経営に関する考え方の他にも、お客様との会話や企画提案の際に利益追求や効率化だけでなく、自らが感じる人間としての想いや在り方を織り込むことでより発想の幅が広がり、「業者」としての役割だけではなく「お客さまのパートナー」として、我が社の存在意義にもつながっていると強く感じています。
 また、この経験は社会だけでなく家庭で、特に子育ての方針にも大きな影響を与えていると感じています。世の中にはたくさんの知らない国、言語、そして人々がいること。また本を読み歴史を知ることで、先人たちの生きた時代や考え方を知ることができる喜び。インターネットが普及し情報収集が容易になった現代においても、我が家の4人の子どもたちには本を読むことの意義をしっかりと伝えていきたいと思っています。