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2026.09.25
2026年9月4日(金)、成城大学文芸学部主催シンポジウム「オーストリア民俗学の現在」が大学3号館311教室にて開催されました。
本シンポジウムは、近年ドイツ語圏で大きな発展を遂げている民俗学(経験文化学)の先端的状況への関心に基づくもので、オーストリアの研究者をお招きし、文化史学科の及川祥平准教授、ヨーロッパ文化学科の下田和宣准教授の企画進行のもと開催されました。
登壇者として、インスブルック大学准教授のマリオン・ネザー=ラター氏と共同発表者の同大学院生リブ・オールセン氏、ウィーン軍事史博物館学芸員のビルギット・ヨーラー氏に来日いただき、コメンテーターとして国立民族学博物館研究員である山川志典氏にお越しいただきました。
当日は日本語字幕の同時投影のもとドイツ語による講演が行われ、及川准教授のご挨拶と登壇者によるオーストリア経験文化学のご紹介とともに、幕を開けました。
講演中の様子
講演①「ハイブリッドなつながり—農村地域の若者における共同性の形成と政治参加」
ネザー=ラター氏とオールセン氏による講演では、ドイツ・オーストリア農村地域の若者の「ハイブリッドな空間(リアルとデジタルの融合空間)」での社会参加について論じられました。
農村地域では対話の場や通信インフラの不足があり、ソーシャルメディアは日常の重要な情報源となっています。SNSなどのデジタル空間では、感情的・視覚的な表現を通じて過激な思想に感化されるリスクがある一方で、マイノリティの若者にとって、アイデンティティ形成を支える第三の空間として機能しており、若者たちの政治的な共同性の形成が、デジタル空間と対面での相互作用を組み合わせたハイブリッドなかたちで行われていることが示されました。
マリオン・ネザー=ラター氏
リブ・オールセン氏
講演②「日常の「モノ」、知識を生み出す「モノ」—飲料ボトルにみる文化科学的「モノ」研究の意義」
続くヨーラー氏の講演では、日常的に用いられる「再利用可能な飲料ボトル(水筒)」に注目し、その歴史や現代社会における意味合いについて論じられました。
歴史的展開として、古代の容器から19世紀以降の軍用水筒の進化が辿られ、戦場での命の維持や連帯、さらには戦時プロパガンダに利用された象徴性が紹介され、対して現代のボトルは、機能性だけでなく個人のライフスタイルやステータスを表す存在へと変化し、水分補給を通じた「セルフケア」や環境問題と結びつくツールへ変容しています。
かつて軍事用だったボトルが現代では健康や環境を示す存在となり、文化的意味が変化していくことに注目することを通して、日常の「モノ」を文化科学的に研究することの意義が示されました。
ビルギット・ヨーラー氏
講演後はコメンテーターの山川氏より、2つの講演に対して日本の民俗学の立場からの見解や質問が投げかけられ、講演者の応答を通して、議論がより深められました。終盤には参加者からも質問を募り、より広い視野における議論が展開されました。会は盛況のうちに終了し、民俗学に対する多角的な視点を得られる実り多き時間となりました。
山川 志典 氏
質疑応答の様子