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2022.03.03
経済学部河口洋行教授が執筆した「文系のための統計学入門」は、学部1~2年生向けの統計学の教科書です。昨年8月に発刊されてから販売が好調なため、このたび第2刷が発売になりました。
また、教科書として利用しやすいように、出版社のHPで、教科書採用のための「献本」の取り扱いが始まりました。
出版社の本書の紹介ページでは、本書内の図表のパワポファイルなどの教材が一括してダウンロードできるようになりました。また、第1刷にありました、以下の2か所の正誤情報が掲載されています。
①107ページ 図表7-2の題名を「統計的検定には、背理法(+検定統計量)が必要」に修正
②210ページ 図表13-3の比率尺度のコラム内の数式を「単位変換(XをaX)が可能」に修正
経済学科の1年生は「データ解析入門Ⅰ・Ⅱ」を全員履修し、データサイエンスの基礎知識を身に付けます。しかし、私立文系向けの勉強をしてきた学部1年生の中には数式が苦手な学生も多いため、グラフ(視覚化)によって統計学のエッセンスを教える本書を教科書として採用しています。
例えば、受験生にもよく知られている「偏差値」は、統計学ではよく使われる正規分布(ベルカーブとも呼ばれる)を利用した指標です。例えば、ある模試で社会の平均点が高く点数のバラつきが小さく、数学の平均点が低く点数のバラつきが大きい時に、自分の得点が両科目とも60点でも、同じ成績にはなりません。このため偏差値が、ある「数式」より算出され比較に利用されています。しかし、数式を暗記するだけでは、計算はできても、その意味を理解できない場合が多いのです。
本書では、偏差値の計算方法を図表により3段階で説明しています。社会の得点の偏差値を計算するには、①社会の平均点70が0点にくるまで平行移動させます。これにより、自分の得点は60点から-10点に変化します。②全体のバラつきの指標である標準偏差を5点から10点に2倍します。これにより自分の得点も2倍されて-20点になります。③平均値を0から戻して+50点に移動させます。これにより自分の得点にも50点を加点するので30点となり、これが偏差値の数値30になります。
今度は数学(平均点が40点)で得点が60点の場合の偏差値を計算するには、①全体の平均点40が0にくるまで平行移動させます。これにより、自分の得点は60点から20点に変化します。②全体のバラつきの標準偏差を20点から10点に0.5倍します。これにより自分の得点も0.5倍されて10点になります。③平均値を0から戻して+50点に移動させます。これにより自分の得点にも50点を加点するので60点となり、これが偏差値の数値60になります。
つまり、平均点やバラつきが異なる社会と数学の得点を比較するには、両科目の得点の分布を同じ正規分布(平均点が50、標準偏差が10)に変形して、得点の相対的な位置を比較できるように計算しているのです。偏差値は受験産業でよく利用されますが、統計学では「Tスコア」と呼ばれており、同じく正規分布を利用した「Zスコア」とともに統計分析を理解する上で重要なコンセプトなのです。
参考リンク
日本評論社「文系のための統計学入門-データサイエンスの基礎」紹介ページ
(下の方の「関連情報ファイル」から教材一式がダウンロードできます)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8597.html
日本評論社「教科書採用品のご案内(献本可能書籍のみ)」
https://www.nippyo.co.jp/shop/complimentaries/kenpon_list?kenpon_genre=2