成城大学

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河口 洋行 教授 「データ解析入門Ⅰ」

— 30分×3セット、図・グラフ(視覚化)で理解、
授業ビデオ等さまざまな仕掛けで学ぶ統計学入門 —

河口 洋行 教授 「データ解析入門Ⅰ」

教員基本情報

氏 名:河口 洋行 (かわぐち ひろゆき)

所 属:経済学部

職 名:教授

専門分野:医療経済学

授業概要

対象者:経済学部1年生

授業形態:演習

実施学期:2018年度前期

履修者数:16 名

※ページ内のpoint!は授業のポイントです

授業内容と取材当日の授業状況について

 本授業は、経済学部の専門分野にわたって共通に必要とされる論理的思考や数量的な分析の基礎を習得することを目的とした基礎数理科目に位置づけられ、データサイエンスの基礎的な考え方およびその解析手法を、表計算ソフトのエクセルを用いながら実践的に学習する科目である。前期開講の「データ解析入門Ⅰ」(本授業)では主に記述統計部分(代表値、散布度、相関係数、回帰分析など)を、後期開講の「データ解析入門Ⅱ」では推測統計部分(信頼区間、統計的検定)を扱っている。
多くの統計学の授業は、90分間の講義形式で実施されることが多いが、理系科目に苦手意識がある文系の学生向けに、本授業では90分の授業を3つのパートに分けて30分毎に明示的に区切って講義を進行する方式をとっている。

河口 洋行 教授 「データ解析入門Ⅰ」

取材当日(2018年6月13日)の授業は、以下の流れで進められた。

講義の流れ

①前回授業の復習〈30分〉
リアクション・ペーパーの内容紹介(5分)
前回の演習課題答え合わせ(20分)
新聞記事の紹介(5分)

②講義〈30分〉

③エクセル演習〈30分〉

 この日の授業は、前回の授業で提出されたリアクション・ペーパー(以下RP)に書かれた質問の紹介とそれに対する河口先生の丁寧な回答から始まった。RPの活用は、多くの学生が質問することに対してしり込みする姿を見てきた教育経験に基づき、紙に書いて提出する形にすることで質問を活性化させている。自分のRPが読まれた学生は授業への参加者意識が高まり、さらに、他人の質問内容を聞いた学生も十分には理解していなかったことを認識するという効果を期待している。
 つぎに、前回授業の演習課題の答え合わせに移る。演習課題は、表計算ソフトのエクセルを使って、標準偏差・共分散・相関係数などの値を求めるもののほか、散布図の作成、また「最高気温と日経平均には相関があるか?」など自分の頭で深く考える問題などで構成されていた。答え合わせでは、河口先生が単に正答を伝えるだけでなく、答えが合っていた学生に対して、どのように解答を導いたのかを聞くなど、教員・学生間の双方向的なコミュニケーションがとられていた。
 つづけて、「広告費と商品の売り上げ」という内容の新聞記事を取り上げて、この後の講義のテーマとなる「回帰分析」について簡単な説明があった。

 ここで30分が経ち、次のセットに切り替わる。「回帰分析(計算編)」に関する講義である。パワーポイントの投影を用いて、はじめに講義の目的が述べられた後、相関係数の復習、そして回帰分析の説明に進む。テンポが良いが、河口先生は学生が授業内容を理解しているかどうか常にその表情をうかがいながら、時々、簡単な質問を投げかけ、学生の反応を確かめていた。この講義で何より特徴的なのは、数学が苦手な学生のために計算式はあまり出さず、計算方法などを視覚化(図やグラフで表現)していることであり、学生たちはその内容を理解しようと真剣に取り組んでいた。

河口 洋行 教授 「データ解析入門Ⅰ」

 講義の30分が経過し、最後のセットとなるエクセル演習に入る。学生はノートパソコンを使って授業支援システム(WebClass)にアクセスし、本日の課題をダウンロードする。課題の内容は、相関係数の算出、散布図の作成、回帰分析の実施などであったが、エクセルの操作手順だけでなく、概念を理解しないと解答できないような工夫がなされていた。学生たちが個々に集中して課題に取り組んでいるなか、河口先生は教室を回りながら、手が止まっている学生に対して、ヒントを与えたり、質問に答えたりしていた。演習問題の解答が終わった学生が出てくると、SA(Student Assistant)を募集し、手を上げたSAは積極的に他の学生のサポートを行っていた。学生相互の学びあいの風景がとても印象的ななか、30分×3セットの充実した内容の授業が終了した。

教員インタビュー(Q&A)

Q.授業のポイントを教えてください。

A. 授業スタイルについては、90分の授業を30分×3セットで行う方式をとり、講義の進め方につぎの3点の工夫を加えています。第一に、講義部分の冒頭では、学習する統計知識に関連する新聞記事を紹介し、これから取り組む課題は現実社会で有効であることを意識させること、第二に、エクセル演習では統計的知識を手で動かして定着させる問題からより複雑な問題を徐々に増やし、単にエクセルの操作を言われたとおり行うだけでなく、統計知識の概念を深く理解しないと解答できないようにして、自分で考える癖をつけさせること、第三に、翌週の授業で行う振り返りでは、リアクション・ペーパー(以下RP)を使って、前回の講義に関する質問に細かく回答し、自分の質問が読まれる学生の参加者意識を高めるとともに、他の学生の深い理解を促すこと、の3つです。
 授業資料(パワーポイント説明資料)についても、工夫しています。統計学の概念(コンセプト)を伝えるツールは3つあると考えています。第一に文章、第二に数式、第三に図およびグラフですが、本授業では第三の図およびグラフを多く活用するようにし、数学知識の乏しい学生でも統計的知識を身につけることができるようにしています。RPでも「正確には理解していないと思うが、なんとなく分かったような雰囲気になった」との反応が多くありました。
 また、授業の予習・復習のツールとして授業支援システム(WebClass)を活用しており、授業資料(パワーポイント説明資料)と授業ビデオ(講義を撮影した動画のvideoファイル)を授業回数ごとに掲載しています。なお、WebClass上のデータは、本授業の履修期間だけでなく、履修者の卒業年度までいつでも利用できるようにしており、例えば、インターゼミナールの発表資料を作成する際や、卒業論文の作成時など、学生が必要と感じた時にいつでも視聴できるようにしています。

Q. SA(Student Assistant)の活用について教えてください。

A. エクセル演習では早くに解答作業が終わってしまう学生には、ボランティアでSAとしての役目をその場で指名し、まだ終わらない学生の質問に答えたり、エクセル操作の補助をしてもらっています。これは、SAの学生にとっては、一度理解した統計知識を他の学生に説明することによって、より深い理解をしてもらうことが狙いであり、また、他の学生にとっては教員よりも、より年の近い学生の方が質問しやすいだろうと考えられるためです。なお、SAに対しては、1回につき2点の成績評価上の加点を行うという仕組みにしていますが、本学の学生はほとんどの場合に積極的にSAを引き受けてくれます。エクセル演習は、その回によってできる人が異なるため、SAは固定しておらず、多くの学生が活躍できる機会を設けるようにしています。

河口 洋行 教授 「データ解析入門Ⅰ」

Q.「データ解析入門」は複数コマ開講されていますが、そのことで何か工夫していることはありますか?

A. シラバスを統一しているのに加えて、2018年度からは、成績評価方法を統一して期末試験を教場試験にて実施することとしました。具体的には、試験期間中に6クラスの履修者全員に同一のテストを課し、提出された貢献点(授業への参加度等)と合わせて合計点で成績評価を実施します。同じ科目名で同じシラバスでありながら、成績評価方法が統一されていないのは、受講する学生にとって不公平ですし、そのことにより学生の学習意欲を削いでいる可能性もあると考えられたためです。

学生インタビュー(Q&A)

Q. この授業のよいところは何ですか?

A. エクセルの操作だけでなく、どうしてこのような答えになるのか、根本的な考え方を教えてくれる点です。プリントも分かりやすいので、計算方法などを最初は理解できなくても、読み進めるうちに理解できるようなことがあります。

A. 授業の復習ビデオがWebClassに載っているので、後から復習することができるところです。

Q. 履修の前後で何か自分に変化がありましたか?

A. テレビや新聞で見るグラフや図に対して、自分なりの目線で読み解こうという考え癖がつきました。

A. 与えられた問題をただ単に解くだけでなく、自分の頭を使って考えられるようになりました。

A. パソコンの操作が得意になりました。

Q. 他の学生へのメッセージがあれば教えてください。

A. 授業中の新聞記事の紹介は、身近な話題をテーマにしたデータの取り扱いやグラフの説明なので、とても分かりやすいですよ。

A. 文系の学生でも分かりやすいように、データの扱い方を教えてくれます。