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2024.09.24
経済学部河口洋行教授が執筆した「文系のための統計学入門」は、学部1年生向けの統計学の教科書です。発刊から3年が経過し、より理解しやすい図表を追加した「第2版」が発売になりました。
既に他大学でも教科書として採用されていますが、出版元の日本評論社のHPで、教科書採用のための「献本」の取り扱いやダウンロードできる「講義資料(パワポ講義ファイル・エクセル演習ファイル)」の掲載が行われています。
経済学科の1年生は「データ解析入門Ⅰ・Ⅱ」を全員履修し、データサイエンスの基礎知識を身に付けます。しかし、私立文系向けの勉強をしてきた学生の中には数学が苦手な学生もいるため、「グラフによる視覚化」によって学べるように、経済学科の学生向けに本書を執筆しました。
例えば、受験生にもよく知られている「偏差値」は、学力が多くの場合に「正規分布(ベルカーブとも呼ばれる)」する現象を利用した指標です。例えば、ある模試で社会の平均点が高く点数のバラつきが小さく、数学の平均点が低く点数のバラつきが大きい時に、自分の得点が両科目とも60点でも、同じ学力とはなりません。このため偏差値が、ある「数式」より算出され比較に利用されています。しかし、数式を見るだけで苦手意識が出たり、学習意欲が減退してしまう学生も少なくありません。
図表1 数学(平均点40点)で自分の得点が60点の時の偏差値の算出
本書では、偏差値の計算方法を上図のように視覚化して説明しています。平均点が40点(バラツキを示す標準偏差は20)の「数学」で自分の得点が60点の場合の偏差値を計算するには、①平均点40点が0点にくるまで全体を平行移動(つまり全員の得点から40を引く)させます。これにより、自分の得点も60点から20点に変化します。②全体のバラつきの指標である標準偏差を20から10になるように全体を0.5倍します。これにより自分の得点(20点)も0.5倍されて10点になります。③平均値を0から今度は50点になるように平行移動(全員の得点に50を足す)させます。これにより自分の得点(10点)にも50点を足すので60点となり、これが偏差値の数値60になります。
このように偏差値(統計学では「Tスコア」とも呼びます)の仕組みを視覚的に図表化することにより、数式の場合よりも直感的に理解しやすくして、途中で学習に躓いてしまうことを防いでいます。
この偏差値(Tスコア)の原理を理解できれば、次の段階では「Zスコア」(Z統計量とも呼びます)という統計学でよく使う指標を理解することが容易になります。
図表2 数学(平均点40点)で自分の得点が60点の時のZ統計量の算出
偏差値(Tスコア)は平均点が50で、100点満点の試験と似ているので受験産業で多く利用されています。しかし、試験以外で利用する場合には、より単純化した平均値0(標準偏差は1)の方が便利で、これがZスコア(Z統計量)です。「統計量」と聞くと非常に理解しにくそうですが、Tスコア(偏差値)が理解できていれば心配はありません。上図では、平均点40点の数学で自分の得点が60点の時のZスコアの算出の仕組みを示しています。最初の①は、偏差値の時と同じで平均点が0になるように40を引きます。自分の得点60点が20点になります。②’では数学の標準偏差20を「10」ではなく「1」にするために1/20倍(0.05倍)します。すると、自分の得点は1点になります。③の操作は必要ないので、「1」がZスコアの数値になります。あるデータが正規分布している場合には、Zスコア(Z統計量)を使うことで、分布全体に占める位置をより簡便に求めることができ、様々な統計分析に活用できます。
参考リンク
日本評論社「文系のための統計学入門-データサイエンスの基礎」紹介ページ
(下の方の「関連情報ファイル」から教材一式がダウンロードできます)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/9360.html
日本評論社「教科書採用品のご案内(献本のお申込みはこちらから)」
https://www.nippyo.co.jp/shop/complimentary/9360.html
成城大学 授業カタログ 河口洋行「データ解析入門Ⅰ」の紹介ページ
https://www.seijo.ac.jp/about/approach/fd/course_catalogue/jtmo42000000pngz.html