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2025.08.27
成城大学キャリアセンターでは、2025年度に新カリキュラム「Seijo Career Program(SCP)」1)がスタートしました。他者と社会と関わりながら実践的に学ぶ「キャリア・プラクティス」(計6科目)の中で、今回は「キャリア・プラクティスⅠ〈ホスピタリティ〉」(正課科目 全学部・全学年対象 前期開講)2)の授業をレポートします。
キャリア・プラクティスⅠ〈ホスピタリティ〉:科目概要
この授業は、学生が課外活動を通して社会と仕事を知ること、ホスピタリティについて学び実践すること、チームで意見を出しあいながら活動すること、大勢の前で発表すること、そして、社会で活躍される方々に出逢い関わりながら人生観・職業観を醸成することを目的としています。科目名にある「ホスピタリティ」は、職業人・世界市民としてのおもてなし・思いやりと広義に捉え、他者とともによく生きていくための在りようを、知識と実践を通して追究していきます。
授業15回の前半にはゲストスピーカー4名よりホスピタリティの実践について学び、加えて羽田空港へ全員でフィールドワークに出向きました3)。また、授業後半は学生たちがチームを編成し、ホスピタリティの現場を自ら選定しアポイントをとり、各分野のスペシャリストにインタビューに参りました。終盤には、ゲストスピーカーを招聘し、屋台村形式4)で活動成果を発表しあい、授業最終回には『わたしにとってのホスピタリティ』をテーマに持論を語りあいました。
インタビューのテーマ
『ホスピタリティを仕事にしている人たちは何をモットー*にキャリアを築いているだろうか』であり、学生たちが関心ある業種・職種を選定し、学生自らアポイントを直接とり、訪問しました。
*モットー:何を大事に、どんな働くスタンスのもと、どんな働きがいを感じているか、実例のエピソードをもとに
学生のインタビュー現地訪問先
セント・ラファエロチャペル東京(結婚式場)、ANA成田エアポートサービス株式会社、羽田空港旅客ターミナルインフォメーションセンター、ソラシドエア、エミレーツ航空、講談社、西武園ゆうえんち、東京ドームホテル、世田谷区議会議員
(講談社とエミレーツ航空はオンラインにて)
活動成果発表会もホスピタリティ発揮の場
活動成果発表会は2025年7月11日(金)に学内グローバルラウンジにて開催しました。このプレゼンテーションは全員がホスピタリティを発揮する場でもあり、”場を豊か”にすることが真の対話につながりました。発表の後は感想をわかちあい、一連の活動を意味づける機会となりました。
各チームがゲストスピーカーに活動成果を発表
発表会の終了後にゲストとともに学びをわかちあう
授業すべての回を通して:学生のコメント(一部改編)
「いつでも、誰でも、ホスピタリティは実践できる」。この授業を通して、役員秘書、消防士、キャビンアテンダント、グランドアテンダント、パイロット、エアポートコンシェルジュといった各業界で活躍されている方々よりホスピタリティについて学びました。また、和倉温泉加賀屋、カナダの航空会社WEST JET、ディズニーリゾート、リッツカールトンホテル、美容部員さんのエピソードからも、自分だったらどうするのかを考えながら学びを深めました。これらの学びから、おもてなしの仕方は人それぞれであり、正解はないということ、そして、常に相手を思いやり、求めていることを察し、冷静に広い視野をもって物事を見ることが大切であると感じました。このことから、仕事など限られた場面ではなく、日常生活の中でホスピタリティを発揮する機会はあり、周囲に気を配って過ごすことで心地よい空間が生まれると思いました。
授業すべての回を通して、自らのホスピタリティの定義が大きく変わりました。ホスピタリティは自分も提供する側であると気づいたことで、周りの人の役に立てるように、誰か困っている人はいないか周りを見るようになりました。混んでいる電車の中で小さい子を連れた親子に席を譲ったり、大人数で受ける授業で絶対に自分のことを認識していないだろうと思いながらも先生に挨拶をしたり(これは最終回の授業が始まる前にたまたま廊下でその先生にお会いしたので挨拶をしたのですが、そこから少しですがお話しすることができたので、自分のことを覚えていただけたような気がします)、周りの人に積極的に感謝を伝えることで、ホスピタリティを発揮できると思います。
「ホスピタリティ」は人と人とを繋ぎ、心と心を繋ぐものです。授業ではクラスメイトや先生、知らない方と関わっていく上でもホスピタリティは不可欠だと気づきました。チーム活動やインタビューなど様々な活動を振り返った時、それらはホスピタリティで成り立っていました。些細な会話も、お礼の気持ちも、友達の話をちゃんと聞くことも、嫌がる仕事を進んでやることも、一つひとつのすべてが誰かのホスピタリティで成り立っていて、それが繋がったことで、過ごしやすい環境、授業になっていたと思います。意識してやるというより、ホスピタリティが人を繋ぎ、温かい想いを共有できる。私自身、こうしたら相手が喜ぶかな、こう動いたら嬉しいかなとか、一つ一つを意識して考えるようになりました。
授業に登壇された岩本さんは出井伸之さんの秘書をしていた方で、仕事内容を聞いただけでも一人でそのすべてを担っていることに驚きました。それにも関わらず、岩本さんはわきまえること、謙虚でいることを心がけているそうで、ご講演からもそのお人柄がうかがえ、数回お会いしただけですが私はとても尊敬しています。また、お仕事では1歩先のことを察して行動するとおっしゃっていました。これは偶然にも私たちが訪問したANAのグランドアテンダントの方も仰っていたことでした。相手の気持ちを考えながら先回りして行動するところに、ホスピタリティのレベルの高さを感じました。職種が異なってもホスピタリティが目指すものは同じようです。この授業はホスピタリティがテーマだったこともあり、私が履修したすべての授業で一番心地よいクラスでした。授業の最初の方では自分が受けた・与えたホスピタリティについて話す時間があったり、知らない人とも話す機会があったりしたことで空気が穏やかになっていったと思います。普段の生活でもホスピタリティを発揮できるようにします。
2025年度ゲストスピーカー 岩本明子様より (クォンタムリープ株式会社 CEO秘書)
秘書という仕事を通じて私自身が日頃から大切にしている考えを、気負わず、背伸びせずに伝えようという思いでお引き受けしました。大勢の前に立ち、しかも自分のことを話すということは全く不得手な領域で、上手く伝えられるか不安でしたが、学生の皆さんのまっすぐな目と素直な姿勢に助けられました。皆さんとの対話のお蔭で、私自身にとっても学びと新しい気づきに溢れた時間となりました。学生みなさんに心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
キャリア・プラクティスⅠ〈ホスピタリティ〉:シラバスより抜粋・一部改編
本科目の目的は,学生が,キャリア形成における「無形の資産」の価値(身体的文化資本)をホスピタリティとサービスの視点から探り,自ら発揮することである。成城学園では建学の精神(育む人間像)として、次のように述べている2)。
創立者、澤柳政太郎は、正直、真面目という道徳を身につけ、個人の「天分」を熱心かつ旺盛に伸ばした結果、知性・心情ゆたかで意志強固な「独立独行」の社会人になることを願いました。フェイアプレイの精神を持ち、美的生活を心がける「教養ある紳士淑女」になることと同時に、変わりゆく世界の中で「独創力」を持った奮起する人間となることをさらに期待しました。
本科目では、ライフ・キャリア教育の中の、特に人格教育として、「ホスピタリティ」(おもてなし、思いやり、優しさ、歓待といった意味合い)について専門家・実践家より学び、自らも体現しながら、人としての在りようを追究していく。このようなホスピタリティ教育は、教育理念を継承していくキャリア教育の一つと位置付け、2017年度よりキャリア教育に実装している。
注)
1)成城大学のキャリア教育 Seijo Career Program(SCP)
https://www.seijo.ac.jp/career/news/cvt4qu000000h94b.html
2) 2025年度「キャリア・プラクティスⅠ〈ホスピタリティ〉」シラバス
https://lc.seijo.ac.jp/lcu-web/SC_06001B00_22/referenceDirect?subjectID=202700695707&formatCD=1
3)2025年度Seijo Career Program(SCP)レポート:真のホスピタリティを現場で体感体得する。羽田空港でフィールドスタディを実施
https://www.seijo.ac.jp/career/news/cvt4qu000000ls9s.html
4) 屋台村形式
学生は交代で自らチームの代表としてブースを任され、全チームが同時に計6 ラウンドのプレゼンテーションを行った。ゲストとプレゼンター以外の学生はブースを巡回し、ブースに集まった全員が対話をしながらアイデアを発展させていく。
文責・撮影・科目担当者 勝又あずさ(成城大学 キャリアセンター)