文部科学省:私立大学研究ブランディング事業

事業内容

持続可能な相互包摂型社会の実現に向けた世界的グローカル研究拠点の確立と推進

(1)事業目的

 本事業は、成城大学が世界に先駆けて開始したグローカル研究の蓄積を基に、多様・多元・多層的な存在や価値観の併存を許す「相互包摂型社会」のあり方を提示するとともに、それを支える人と社会の「しなやかさ」(resilience)の解明を目的とする。また、その成果を本学が伝統とする高度教養教育に還元し、来たるべき未来社会においてしなやかに生き、活躍する「しなやか人材」の育成をも担う世界的なグ
ローカル研究・教育拠点を確立し、その推進を目指す。
 グローバル化の潮流はとどまることを知らず、政治や経済、文化等のあらゆる領域で急激な再編が進んでいる。それに伴い、近年、世界的規模で社会的、文化的な不平等や格差の拡大・固定が顕在化しつつあり、その是正と改善の道筋が模索されている。例えば、欧州委員会は2014年「ホライズン2020」(Horizon 2020)と題する新たな科学技術・イノベーション政策を公表し、その中で、貧困や格差問題を是正した包摂型社会(inclusive society)の構築を目標に掲げ、それに向けた高度知識人材のあり方と教育法の検討を提言している。
 以上のような世界的な社会情勢と研究環境の変化の動向に鑑み、本事業は、現代社会が直面するさまざまな課題、とりわけグローバル化の質的・量的な増大に伴う社会的、文化的な不平等や格差の拡大・固定を是正し改善する取り組みの一環として相互包摂型社会を構想し、そうした社会の実現に必要とされる新たな人間像を提示しようとするものである。
 複雑化を増す現代社会においては、世界的な課題が容易にローカル化すると同時に、ローカル固有の課題もまた容易にグローバル化する。この意味で、グローバル化(globalization)とローカル化(localization)は同時かつ相互に影響を及ぼしながら進行、浸透、拡大するものであり、こうした状況はグローカル化(glocalization)と呼ぶべきである。欧米先進諸国を「中心」とするグローバル化が富の偏在や力の不均衡をもたらし、それらが世界のもっとも大きな不安定要素となっている現状を考えれば、非欧米先進諸国というローカル(「周縁」)を視野に入れたグローカルという発想はますます重要となる。そうした観点から、本学では、「グローバル」と「ローカル」の双方を視野に入れ、両者の相互作用の下で生成されるより望ましい社会を多様・多元・多層的な存在や価値観の併存を許容する相互包摂型社会と規定し、それを支える人と社会の実践原理を解明するための新たな研究を「グローカル研究」(glocal studies)として提起した。
 本学はグローカル研究を世界に先駆けて開始し、文部科学省「私立大学戦略的基盤形成支援事業」(研究拠点を形成する研究)の財政的補助を受け、これまでに2期、8年間にわたってグローカル研究プロジェクトを展開してきた。その結果、さまざまな領域におけるグローカル化の実態を実証的に明らかにするとともに、それらの理論的検討から、行き過ぎたグローバル化の是正と改善の糸口を提示することに貢
献してきた。しかしながら、これまでのところ、より望ましい未来社会、あるいはそうした未来社会を支える新たな人間像を提示するまでには至っていない。 以上のような経緯から、本事業は、グローバル化(グローカル化)がますます進行・浸透する未来社会において、6つの分野(「生活資源」と「文化資源」、「身体資源」、「人的資源」、「環境資源」、「金融資源」)を対象とするグローカル研究を通して、多様・多元・多層的な存在や価値観の併存を互いに許容する相互包摂型社会をより望ましい社会として構想し、提示する。同時に、そうした社会で柔軟に生きかつ活躍する新しい人間像を「しなやか人間」(「しなやか人材」)として提起する。最終的には、本事業の研究成果を教育実践へと活用する経路を明確化することで、研究と教育の両面から「グローカル研究」を世界的レベルで推進し、「しなやか人材」の育成を本学のブランディングとして確立することを目指す。

(2)期待される研究成果

 本事業で期待される研究成果は、直接的な成果(アウトプット)と間接的な成果(アウトカム)及び波及的な成果(インパクト)に分けられる。
 
 直接的な成果(アウトプット)としては、以下の3点が期待される。
 ①グローカル化現象とそれに伴う社会的、文化的格差拡大の動態の理解
 ②グローカル化時代における資源変動とその「中心-周辺」構造における権力勾配の理解
 ③「相互包摂型社会」の構想の提示とそれを支える人と社会の「しなやかさ」の理解
 本事業は、「生活資源」と「文化資源」、「身体資源」、「人的資源」、「環境資源」、「金融資源」の6分野において実施するが、それぞれの分野における、①グローカル化現象とそれに伴う社会的、文化的格差拡大の動態が明らかにされる。特に、②「中心-周縁」の間の資源(富)の偏在や力の不均衡の構造が実証的に解明される。そして、それを乗り越えるものとして、③「相互包摂型社会」が構想され、相互包摂型社会の実現のために必要とされる社会的、文化的な「しなやかさ」の実態と原理が理論的にも解明される。こうした研究成果を基盤とし、世界的レベルのグローカル研究拠点が本学に形成されるものと期待される。
間接的な成果(アウトカム)としては、以下の3点が期待される。
 ①グローカル社会において求められる「しなやか」な人間像のキーコンピテンシーの提示とカリキュラム開発
 ②人文・社会科学分野を統合した大学ならではのProject Based Learning(PBL)の開発
 ③「東京」という地域を活用した高度教養教育のあり方の提示とPBLを通じた地域貢献
 欧米では「責任ある研究・イノベーション」(Responsible Research and Innovation)の議論の一環として、幅広い視野を持った高度知識人材の育成が模索されている。社会的、文化的なしなやかさの理解と修得は高度知識人材の素地として必要不可欠であり、その意味で、本事業の成果は、①広く未来社会を支える人材育成の基礎となるキーコンピテンシー(主要能力)の提案と教育カリキュラム構築に活用できるものと期待される。また、本事業は、②人文・社会科学分野を統合した本学ならではのProject BasedLearning(PBL)の開発に貢献するとともに、③本学の地域貢献にも寄与するものと期待される。
 
 波及的な成果(インパクト)としては、以下の2点が期待される。
 ①世界的レベルでのグローカル研究・教育拠点の確立
 ②成城大学独自の研究・教育プログラムによるブランディングの達成
 上述の直接的な成果(アウトプット)と間接的な成果(アウトカム)の相乗効果により、波及的な成果(インパクト)として、①成城大学が世界的レベルのグローカル研究・教育拠点となったことが日本内外で認められるとともに、②「グローカル研究」と「しなやか人材」に象徴される本学独自の研究・教育プログラムの推進を通して成城大学のブランドが確立・定着するものと期待される。

(3)ブランディングの取組

 本事業による本学のブランディングは、研究と教育、社会貢献の3つのチャンネルを通して複合的に行われる。
 
 研究を通したブランディングについては、世界に先駆けて「グローカル研究」(glocal studies)が本学で生まれたことを、日本内外で開催する国際シンポジウムや各種刊行物、ウェブサイト等により積極的かつ多角的に発信していく。各種講演やシンポジウム等は一般公開を原則とする。研究成果は、グローカル研究センター(Center for Glocal Studies:CGS)の学術雑誌『グローカル研究』(Journal of Glocal Studies )や研究叢書(Seijo Glocal Studies in Society and Culture )、リポーツ(Seijo CGS Reports )、ワーキングペーパー(Seijo CGS Working Paper Series )等として集中的かつ集約的に公刊する。また、研究成果を国際学会や世界的レベルの学術雑誌、論文集等を通して日本内外に発信する。
 本事業によるブランディングに関連し、本学は、研究協力協定を締結ないし予定しているタマサート大学(タイ)やグアダラハラ大学(メキシコ)、ミュンヘン大学(ドイツ)、モナシュ大学(オーストラリア)、ウィスコンシン大学(アメリカ)、ストラスブール大学(フランス)、シェフィールド大学(イギリス)、清華大学(中国)等とすでに連携ないし協力体制を構築しつつある。また、本事業の実施期間中
は毎年、本学ないし上述の海外研究協力提携大学等で国際シンポジウムを開催する計画である。平成28年度・29年度には、ユネスコ(国際連合科学教育機関)のセンターでもある国立文化財機構・アジア太平洋無形文化遺産文化センターとともにグローカル研究の観点を導入した無形文化遺産に関する国際シンポジウムを2回にわたって開催する。グローカル研究に関する世界レベルの研究ネットワークの構築や拡充、日本内外の国際シンポジウムにおけるグローカル研究の有効性と可能性の提示等を通して、成城大学のブランディングを世界レベルでより効果的に達成する。
 
 教育を通したブランディングについては、未来社会を柔軟に生き、グローバルとローカルの領域をつないで活躍する「グローカル人材」を「しなやか人材」として提案し、そうした人材の育成を本学の教育の柱として学内外に周知していく。「しなやか人材」は、本事業で提起する「相互包摂型社会」を担う新たな人間像として日本のみならず、欧米で展開されている人材育成のあり方にも一石を投じるものである。
本事業の研究成果を本学独自の教育プログラムへと反映させることで、成城大学のブランディングを確立する。
 
 社会貢献を通したブランディングについては、本学が展開する社会人教育や生涯教育(「成城・学びの森」)、JMOOC(ウェッブ講義)、及び、世界的規模で活動する大学や研究機関(アジア太平洋無形文化遺産研究センターやWorld Social Sciences and Humanities Network など)との国際シンポジウムの共催などを通して、グローカル研究の成果に基づいた新たな人間像、すなわち「しなやか人間」(「しなや
か人材」)を広く日本内外の一般社会に提起し、混迷する現代社会、そしてまた複雑化を増す未来社会を生きる意味や術を、人間存在の原点に立ち戻って再検討する機会を提供する。また、グローカル研究の理論と方法を、グローバルとローカルの「仲介」・「調整」(例えば、グローバルなユネスコの無形文化遺産政策のローカルな場での受容と変容の検討や2020年東京オリンピックにおける海外訪問客の「おもてな
し」への参加など)やグローバル都市における「街の再生」(例えば、フィリピン・マニラのスラム街の再生や成城の街おこしなど)に実践的に適用することも考えている。

(4)年次計画

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