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  • 2021.10.13

    【開催報告】Global Matters講演会 「SDGsと食の未来~フードテックの可能性~」開催(2021年10月9日)

 SDGs(持続可能な開発目標)と、その主体的な取り組みについての理解を地域住民の方に深めていただくため、世田谷プラットフォーム共催と(公財)中島記念国際交流財団による助成を受けて行う「留学生地域交流事業/Global Matters」シリーズ第3弾「SDGsと食の未来~フードテックの可能性~」を開催しました。フードテックの第一人者である株式会社シグマクシスの田中宏隆さんをお迎えして、国内外のフードテックの進化とその背景についてお話を伺いました。

 本講演に先立ち、15歳でヴィ—ガンという生き方を選択した東京大学の留学生、Karen Isaacsさんにミニインタビューを行いました。
イギリスのロンドン郊外の出身のKarenさんは、もともと動物が大好きで13歳の時にベジタリアンとなり、さらに環境問題などの原因が「工業型畜産」であることに問題意識をもち、15歳で「ヴィ—ガン」(動物由来の食品を食べないだけではなく、衣類や動物実験をした化粧品を使わないなど、できる限り動物から搾取しないライフスタイルで暮らしている人たち)になりました。
 イギリスでは、人口の約12%がベジタリアンやヴィ—ガンで、レストランや学校の給食でもヴィ—ガンメニューが普及しており、スーパーにはヴィ—ガン用バターや代替肉など植物由来の食品コーナーが充実しているなど、ヴィ—ガンとして生活がしやすい環境があると話しました。

 昨年から日本で暮らし始めてからは、ヴィ—ガンの食材を売っている店も少なく、レストランでも野菜だけに見えても「魚の出汁」を使って味付けをしている料理が多いなど、ヴィ—ガンとして生活をするのが難しいと気づきました。しかし、自炊をしているKarenさんは、様々な和食をヴィ—ガンで再現する事に挑戦するプロジェクトを通して、工夫をして楽しみながらヴィ—ガンとしての生活が出来るようになったそうです。
 「いきなりヴィ—ガンになるのは難しいが、地球の環境によいこと、自身の健康によいことを考えて、自分の好きな料理のヴィ—ガンバージョンを作ったりしながら、少しずつ食事を楽しんで試してみて欲しい」と話しました。

 本講演では、講演者の田中さんから、「食の進化はどんどん進んでいて、一個人としてこれから生きていくうえでも、ビジネス面で考えても、フードテックという領域は広がってきているので、自分から主体的にワクワクしながら取り組むきっかけとなれば」と話しをはじめられました。

 食の分野は、科学・技術だけではなく、歴史・文化・哲学・人間理解等の観点からあらためて捉えなおすと、まだまだ研究や追求できる可能性があり、多面的に「食」を見直す動きが出てきていると話されました。そのような背景を基に、世界中でフードテック分野への投資は近年大きく増え、2020年は「フードテック元年」と呼ばれているそうです。
 そして、今なぜ食の進化が求められているのか、そこでフードテックがどのような役割をしているのかを話されました。アメリカのNGOが発表した試算によると、食品産業の利益が上がったとしても、その裏で隠れたコスト(健康被害に伴う社会的保障コスト、CO²排出に伴う対策コスト、フードロスに対するコスト等)があり、累計すると利益よりも巨額の損になっているという数値が企業に大きなインパクトを与えています。利益を得る人とコストを負担する人がばらばらで、SDGsの観点からも大きな問題があり、企業・産業界だけではなく、国家を超えて解決する大きな課題となっています。フードテックは単なるバズ・ワードではなくこれから我々の生き方や働き方を変えてゆく一つの重要な考え方であり、武器であると話されました。

食がもたらす社会課題が様々あり、それを知るためにドキュメンタリー映画や書籍などを紹介されました。
食がもたらす社会課題が様々あり、それを知るためにドキュメンタリー映画や書籍などを紹介されました。

 ただし、田中さんは「食は悪者というわけではない」と前置きし、食に対する価値も多様化しており、従来のGDPではとらえられない幸福度を入れた国民の感じる指標GDW(国内総充実)に目を向けるべきだという声が産業界からも出ているそうです。
 そして、「Sustainability(持続可能性)への貢献としての食」に関しては、まだまだ日本人の意識は低く、欧米や中国・東南アジアよりも遅れているが、持続可能性がより一層求められる社会になるであろうと話されました。また、コロナ渦を経験する事により、業界構造や人の価値観に変化が訪れ、食の進化が加速する社会になったと話しました。

 そのような世の中の流れを受けて、現在の食のトレンドについて紹介がありました。(食品ロスに立ち上がる企業や新技術、代替プロテインの開発、医食同源を最新テクノロジーで可視化して実現、レシピのデータ化と家電の進化、フードロボットによる体験価値創造、大手企業によるベンチャー事業投資について等)

 現在は戦後に作られた大量生産・大量消費の仕組みにより、日本の飢餓が減り、事業が生まれるなどの産業型の生態系(エコシステム)を作ってきたが、そのシステムにより、2000年代に入ってからは少子化などでビジネスが先細りとなったり様々な社会問題が生まれた。そして現在の課題として、生活者を中心として食をめぐる「地域型のエコシステム」を作る必要があると話されました。

 最後に、食の領域は生活のかなりの部分に影響を及ぼしていて、今までは人が求めるものを企業は努力して応えようとした結果、世の中に飢餓や社会問題が生まれた。世の中に対して知識を高め、社会問題を解決するために我々生活者一人一人が強い思いを以って主張すれば、企業は変わらざるを得ない。自分が理想とする社会を考えた時に、「食」は非常に身近で、世界を変えるきっかけとなること覚えていて欲しいと締めくくられました。

アンケートには、以下のような感想が寄せられました。

  • 実際にヴィ—ガンの方の話を聞いて、日本は欧米や他のアジア諸国に比べると、不便を感じる点が多いということがよく分かりました。また、最新の国内外のフードテックについて詳しくお話いただき、ここ数年で日本国内においてもSDGsの認知度の高まりとともに、食の進化が少しずつ進んでいることを学ぶことができました。今回、学んだことをきっかけに、これから一食一食の幸福度や世界の環境・食料事情について、しっかり考えていきたいと思います。(学生)
  • ヴィーガンの背景だけでなく、食糧問題、フードテックにまで深めていただき、大変学びの多い講演会でした。実際にヴィーガンである東大生のカレンさんの生の声や、フードテックに取り組む企業側の主張を聞かせていただき、今の学生たちに広く参加して欲しい内容でした。意義深い講演会を開いていただきありがとうございました。(教員)
  • フードテックが社会課題の解決につながると信じております。自身の仕事の中でも組み入れて、日本から世界へ発信出来る商品、技術を作り上げたいと思います。(一般参加者)