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  • 2024.02.15

    千葉刑務所を参観した学生のレポートを紹介します

2024年2月1日(木)の千葉刑務所参観に参加した指宿信教授(センター長)のゼミ生7名から、参観レポートが届きました。

どのレポートも非常によく書けているのでそのまま掲載したいのですがそれは叶わないため、

  • 所内見学と、その後の質疑応答に関係する「所内見学に関する感想」
  • 職員からご説明いただいた、被害者の視点を取り入れた教育(R4)や、被害者等の心情等の聴取・伝達制度など、「受刑者に対する矯正処遇等に関する感想」
  • 刑事政策や犯罪者の更生など、参観全体を通じて得た「全体的な感想」

の3つに分けて、抜粋して紹介します。
抜粋の関係で若干文章を修正していますが、内容には変更を加えないようにしています。

1. 所内見学に関する感想

  • 刑務所は高い塀に囲まれており一番上には電線のようなものが張ってあった。何かあるとすぐに警報がなり、近くの刑務官が走ってその場に向かうということで、かなりの緊張感があった。このような体制により、脱獄を防いでいるのかなと思った。対して、刑務所内で受刑者の方を見た時、工場内の作業は近くで刑務官が監視していたが、移動時や何かの荷物?を運んでいるときは刑務官が付きっきりというわけではなさそうで意外だった。そして何より驚いたことは受刑者の生活にも関わるような洗濯や食事の給仕等も受刑者自身で行っているということだ。もっと行動は制限されていると思っていたが、独居房のみならず雑居房でも、かなり自由な本の持ち込みが認められていて、制限は私が想像しているよりも緩やかだと分かった。(3年女子 WS)
  • 刑務所内を回っているときに、受刑者の方が通ると、こちらは止まり、刑務官の方が受刑者たちに早くいくように促しているのを当たり前のように見ていました。しかし、その後の質問の中で「更生プログラムがこれだけなされていても、受刑者の自由は少ない」というご指摘があり、確かにその点はあまり変わらないのだと思いました。それは、長期の受刑者が多いからなのか、受刑者を自由にすることは日本では受け入れづらいことなのか、職員の人手不足のため余裕がないからなのか、など考えました。(4年女子 HE)
  • 所内見学をする際、私語の規制や女性を真ん中にした列の配置など今まで経験したことのない種類の緊張感を味わいました。そしてこれから体験する出来事がいかに非日常であるかを実感するほどその感情を恐怖として捉えていたように思います。しかし、実際に見学を始めて遠くから受刑者の様子を見ていると重い罪を犯していたとしても同じ人間であるという現実味が湧きました。(3年女子 NI)
  • 独居房を見学した際、大勢の受刑者が我々といれ違うように移動してきた際には実際の刑務所として、矯正の場として動いているのを強く感じ、今でも大変心に残っています。(4年男子 KI)
  • 最も印象残っているのは、受刑者が収監されている独房の中を見学できたことです。3畳の畳のすぐ後ろにトイレが設置されている光景には強い衝撃を受けました。部屋には、本、ペン、紙などが机の上に置かれており、受刑者に内省を促す場であるということを感じ取ることが出来ました。見学最中に受刑者の近くを歩いたときは、(悪い意味ではなく)少し緊張したと同時に、日常とは違う異質な空間であるということを感じました。(4年男子 HK)
  • 就業態度の良い受刑者約7〜8割は独房に入ることができる。初めは集団部屋からスタートするうえに、もし素行が良くなければ一度独房に入った者でも集団部屋からリスタートすることもあるようだ。私は素行の悪い者は何をするかわからないから、独房に入れられて差別化されるものだと思っていたから意外だった。また、受刑者は運動場で1日に1回30分間の運動時間を確保されている。実際に運動場を見学したら、「昼休みに校庭を走り回っている」様な様子だった。(3年女子 MK)
  • この時期は冷え込むため廊下にストーブがあるものの各居室にその温かさが届くことは恐らくないと刑務官の方がおっしゃっていたのが印象に残っています。(3年男子 KI)

2. 受刑者に対する矯正処遇等に関する感想

  • さまざまなプログラムがあり再犯防止につながるのではないかと思いました。千葉刑務所は長期受刑者が多いためこのようなプログラムができるというのは納得がいきました。(3年男子 KI)
  • 受刑者の矯正課程としてR4の被害者感情を知るというプログラムについて、時間はかかりそうだが、相手を思いやる気持ちを育てるのは再犯を防ぐのに役立ちそうだと思った。(3年女子 WS)
  • 質疑応答の時間に最も印象に残ったのが「被害者伝達制度により強い憎悪感情を持った被害者遺族から、「どうしても許すことはできない、そのまま刑務所の中で死んでくれ」と言われた場合に受刑者にその言葉のまま伝えるのか」という質問です。この質問に対し職員の方は時期を見て分割して伝えたりする方法で受刑者の状態を鑑みて判断すると答えていました。私はこの一連の流れによって更生の難しさを再確認しました。誰かから一生許されずに生きることがどんなに苦しいかは想像するだけでも厳しく、刑務所に入所する目的の一つが更生のためなのであればその心を折ることが得策とはいえないのでどの立場にいるかによってその正しさが異なることもあるのかもしれないと考えました。(3年女子 NI)
  • 刑務官として採用された後も、受刑者の教育のために研修、実務を積んで教育専門官になった後、少年院で法務教官としてご指導されているという内容を知ることができた。(4年男子 HK)
  • 仮釈放をされる際は、外の世界と似ている作りの部屋に移動をして慣らすことができる。これは受刑者への更生機会の尊重だと思った。刑務所とは犯罪者の最後の砦であることを再認識できた。(3年女子 MK)

3. 全体的な感想

  • 職員の方が、この受刑者は今出所したらもう再犯しないだろうなと思う方であっても、出所させることはできないとおっしゃっていたのが印象的でした。更生という点から考えると、受刑者が社会復帰をできそう、となった時点で社会に出す、というのか理想だと思います。社会復帰できそうなほど更生できているのに、その後も長く刑務所で過ごすことに意味はあるのか、と思いました。受刑者のモチベーションにも関わるし、年齢的にも歳を取ればとるほど社会に戻るのが難しくなると思います。被害者の方からすれば、早く出所することに良い感情を持たないかもしれませんが、罪を犯した人を刑務所に入れる、ということの意味を考えたときに現場の職員の意見も取り入れて、受刑者の出所時期を見直すことも必要だと思いました。(4年女子 HE)
  • 千葉刑務所見学の日から数日間、受刑者の姿や刑務所の様子がとても印象深く、なかなか眠りにつけませんでした。というのも、当日伺ったお話の中で「ある受刑者は若い頃に罪を犯し、いまでも時が止まったまま大人になっている。そしてR4(被害者の視点を取り入れた教育)の指導を受けた今なら絶対に同じような過ちを犯すことがないと断言している。無期懲役でいつ社会に出られるかわからない上に、仮に出られた際には歳をとっていて昔よりもさらに迷惑をかけてしまう。」といった内容が強烈だったからです。犯罪者=悪者というイメージが一般的にあるなかでそういった考えに触れることは今までありませんでした。(4年男子 KI)
  • これまで受刑者に会ったことがなく、授業資料やニュースでの間接的な存在でした。そのため、理論上では受刑者の人権保護や出所者支援が必要なことは理解していましたがどこか実態が掴めず他人事として遠くから見ていましたが、この機会に直接自分の目で見ることで自分と同じ人間がこれからを生きていくために必要なのだと考えるともっと真剣になりました。今回の訪問は自分の認識の帰結が甘かったことを認識する貴重な機会になりました。これからは実態の知れないことを過度に恐れて離れるよりもわからないのだと認識して知る努力をすることにより自分の中にある偏見を壊していきたいです。(3年女子 NI)

学生たちにとって、様々なことを考えるいい機会になったようです。
改めて、千葉刑務所の皆さま、コーディネーターを務めてくださった東本愛香研究員(千葉大学特任講師)に感謝申し上げます。
ありがとうございました。