NEWS

  • 2019.12.20

    「連続講座 罪を犯した人の立ち直りを考える~問題解決とその方策」最終回を開催しました。(申込終了)

 11月28日、「コミュニティー・カレッジ:罪を犯した人の立ち直りを考える~問題解決とその方策」の5回目が開催されました。いよいよ最終回となる今回の講座の担当は本センターの客員研究員でもあり、千葉大学社会精神保険教育センターの特任助教でもある東本愛香先生です。寒い中、東本先生の講座を受講しようと多くの方が集まってくださいました。今回東本先生は、「塀の中での取り組み~刑務所における再犯防止プログラムについて~」と題して、加害者に焦点を当てた認知行動療法を用い、再犯をいかに少なくすることができるかという取り組みについてお話してくださいました。
 東本先生は、はじめに、現在日本において犯罪や非行の繰り返しを防ぐ再犯防止が大きな課題となっていることを次のように説明してくださいました。再犯防止推進法等により、社会の理解と協力を得つつ罪を犯してしまった方の社会復帰を促進することこそが、安心して安全に暮らせる社会の実現に繋がります。これは実刑での再犯防止だけでなく、治療的司法とまではいかないが、教育のプログラムによる再犯防止も含まれます。その教育の大切さに視点が置かれたのは2006年に監獄法が改正され、処遇の個別化が掲げられてからです。個別処遇では、対象者それぞれの問題に合わせた教育や改善指導を行い、社会復帰を目指していきます。その教育には、大きく分けて一般改善指導と特別改善指導の2つがあります。一般改善指導とは、講話や体育、行事、面接などにより被害者感情を理解させ罪障感を養うとともに、規則正しい生活習慣や健全な考え方を付与し心身の健康の増進を図ります。さらに、社会復帰への心構えを持たせる施設ごとの特徴に合わせたプログラムがあり、例えば、コミュニケーションの方法や、怒りをコントロールする方法等、多種多様のトレーニングを行い、社会に必要なスキルを身につけさせる事を目的としたものがあります。特別改善指導とは、薬物依存や暴力団加入などの事情により、改善更生及び社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し、その事情の改善に資するよう特に配慮して個々のカリキュラムを行うものです。以上の一般改善と特別改善の2つの指導を通して再犯防止を図っていきます。
 次に、東本先生が受刑者に対する認知療法において取り入れている基本的な考えが紹介されました。それは、再犯を防止するためには、不適切な行動や選択を減らす為のリスク予測と、適切な行動や選択を増やす自分自身の強みの発見という2つを両立させる事が重要だということです。自分自身の行動選択に責任を持ち、再犯のリスクを管理し、健全な生活を送るというより望ましい目標を獲得することによって、自分自身も社会も安全に生活していくことに繋げる事が出来ます。受刑者にはそのことを意識してもらうことによって、自分自身も社会を明るくする運動員の一員であると感じて欲しいという想いがあるそうです。
 認知療法の一技法として、「リラプス・プリベンション」という考え方があります。それは、加害行動が生起する直前の状況を中心に再発防止計画を作成するという考え方です。具体的には,「実行(再犯)」が生起する「直前の状況」において「実行を避ける対処」を検討し,その後,「実行」に至ることのない「安全な状況」と「安全な状況を維持する対処」を検討するとともに,「直前の状況」へと至りやすい「危険な状況」と「安全な状況に戻るための対処」を検討するということです。人間誰しも、安心しているときは他人に対して危害を与えることはありません。生活の質を安堵や安心に置くことで、人生には意義があり、他者に損害を与えないことを大事にすべきであるという考えを身に付けることを目指しています。リスクを考えることは、必ずしも負やマイナスのイメージだけではなく、よりリスクの低い選択ができるための対処方法、自分をリスクから保護してくれる要因を検討し、選択し、それを維持できるようになることが大切です。東本先生は、リスクと保護の関係を雨と傘に例えて次のように説明されました。「リスクである雨は少ない方が良い、しかしその雨が多い人は保護である傘を大きくさせるよう努力します。雨は決して0にはなりません。その雨に濡れないためには、プログラムを通して傘やその骨組みを丈夫にすることが重要です。」
 さらに、再犯防止プログラムの具体例として、東本先生が刑務所において実施されている性犯罪再犯防止プログラムを挙げ、どんな些細なことでも多くの解決方法を創造的に考えるブレインストーミングや、今、この瞬間の体験へ意図的に意識を向け、観察し距離をとる方法であるマインドフルネスの重要性について受講生全員でのチョコレートを使用した体験を行い、実際のプログラムの実践イメージについて話してくださいました。
 最後に、東本先生は、加害者の社会内処遇も重要であることには違いないが、被害者や社会の人々の目線を無視することはせず、施設内、社会内のそれぞれの活用を考え、何よりそれらが両輪であることを忘れずに両立させていくことこそが、本当の再犯防止につながると改めて仰いました。
 私は、今回の講座に参加し、東本先生は終始明るく力強く私達に分かりやすく説明してくださっているという印象を受けました。その姿勢は今回の講座だけでなく、実際に指導を行う場でも同じだそうです。授業というものはどうしても受講者が受け身になってしまうイメージがあります。しかし、東本先生の様に受刑者の自主性を尊重し寄り添うことこそが再犯防止に役立つ教育なのだなと感じました。
 10月から始まった全5回の講座も最終回を迎えました。お越しくださった皆様ありがとうございました。

治療的司法研究センター 学生サポーター H.N

page top