成城大学

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  • 2019.12.03

    「連続講座 罪を犯した人の立ち直りを考える~問題解決とその方策」第4回を開催しました。(申込終了)

 11月21日、「コミュニティ・カレッジ:罪を犯した人の立ち直りを考える~問題解決とその方策」の第4回目が開催されました。今回の担当は、本センターの客員研究員でもある弁護士の山田恵太先生でした。
 山田先生は「罪を犯した障害者と向き合って〜司法と福祉の連携の可能性」と題して、事例や実際に担当した方の話などを交えながら、司法と福祉のあり方について話されました。
 まず、ご自身の経歴について話してくださいました。山田先生は、もともと大学で心理学を専攻していました。弁護士になる前に特別支援学校で2か月ほど勤務していた際に起こった出来事をきっかけに、障害のある方が加害者になった場面にこそ力になれるのではと考え、弁護士になることを決意したとおっしゃいました。そして、心理学で得た知識を活用し、これまで多くの障害のある方の弁護を続けてこられました。
 次に、実際に先生が担当された方について事例として話してくださいました。先生が最初に挙げた窃盗をしてしまったAさんの事例では、どうしてAさんがそのような行為をしたのかということを考えるところから始まりました。原因の一つに、勤めていた会社の上司の態度から受けるストレスがあることを知った先生は、関係機関と会議を行いました。更生支援コーディネーターと連携し、ジョブコーチや支援学校のAさんの元担任、会社の担当者などと話し合い、本人の様子が今の上司に変わったことで変化したこと、ジョブコーチがその上司と話そうとしたが取り合ってもらえなかったということを知りました。それらを踏まえ、先生は弁護士として、取り調べの可視化と共に障害のあるAさんへの一定の配慮を訴え、被害店舗には謝罪文の送付をし、Aさんが送致後裁判所に審判を不開始にすべきであるという旨の意見書を提出するなどしました。これを受け、裁判所は審判を不開始とする決定を下しました。その後、上司が障害者に理解がある人に変更し、Aさんは引き続き職務に従事することができました。
 障害のある人の事例が紹介された後に、法律上での障害の定義、障害概念の変化、知的障害、発達障害、精神障害等について説明がされました。障害は法律上でも定義が抽象的で曖昧だということや、障害のあるなしは100か0かなどではなく、グラデーションがある中で線を引いている状態で、実際に障害者であると認められていなくても実は診断されていないだけで、軽微の知的障害者やその他の障害者であったというケースも多々あるそうです。
 先生が担当した加害者の半分以上は、何かしらの障害がある方だったそうです。障害のある方は取調べにおいて自白を取られやすく、実際にやっていないことも訊かれれば、オウム返しの様に「それをやった。」と言ってしまう面が少なくとも関係し、冤罪や実際にやったことと違う結論(悪い方に持っていかれやすい)になるケースがあるのではないかと話されていました。
 また、犯罪を犯してしまう障害者が存在する理由として、今まで先生が担当された事件から分析すると、生物的要因・心理的要因・社会的要因の三つが複雑に絡み合っているのではないかと説かれました。障害を持つ加害者の方には、自尊心が低下し、不全感を抱え、社会から孤立してしまい、金銭的に厳しい状況に置かれた方が多く、さらには被虐体験のある方も多いのだと説明されました。その上、裁判過程を通して、裁判官、検察官、弁護士の誰もその人の障害に気が付けなかったケースが非常に多く、本来福祉的な支援が必要であるにも関わらずその支援を受けることができなかった方が多数存在すること、そのような人たちが実刑を受けたとしても受刑するだけでは問題は解決しないのだと話されました。また、センセーショナルで不適切な報道、司法や社会の誤解・偏見、厳罰化や暮らしにくい地域、再犯・エスカレートという負のスパイラルによって、より一層彼らの更生が難しくなってしまうため、特に司法の誤解や地域の理解を得られるようにどうにかしないといけないとおっしゃっていました。
 人によっては、「犯罪をしてしまう人は他の障害者人とは別でしょ?」「自分の周りに居るような障害のある方はそんなことをしないでしょ?」「被害者はともかく、障害があるとしても加害者を支援するのは別でしょ?」と考える人もいますが、障害があって加害者になる人も被害者になる人も、背景にある原因は共通で、孤立、貧困、不安、自尊心の低下などが大きくなって、それがどう表にでてくるかによってどちらかに転んだのだと考えられるのだと説かれました。最後に、釈放後の支援に繋がるような司法と福祉の連携や更生計画の実施を支える出口支援と同時に、矯正施設に入る前に必要となる司法と福祉による支援のネットワークが入口支援として大切さなのだと説明されました。
 今回山田先生の講座を聞かせて頂いた中で特に印象に残ったBさんの事例があります。Bさんはコミュニケーションを取るのが難しい方で、供述が二転三転したり、幼い話し方をしたり最初は本当のことを話さなかったりしました。先生は接見でそのような点に気がつき、Bさんには障害があることを見抜きました。そこからはこの事件において公判の進行とともに福祉的な支援に取り組み、それが更生後に良い影響を与えました。しかし、もっと早い段階(何年も前に窃盗で執行猶予になったのでその際など)で障害があることが判明していれば、福祉的な支援により事件が起きなかったかもしれないと悔しそうに話されていました。私はそれを聞いて、ただ刑務所で刑務作業をするだけでは限界があり、本当に必要な取り組みを行わない事で結果的には再犯やもっとひどい結果になってしまうのは怖いと思いました。私も、多様な犯罪がある中で、それらに対する本当に必要な対応とは何かを考えながら勉強に励みたいと思います。
 次回の講座の担当は、東本愛香客員研究員(千葉大学)です。「塀の中での取り組み~刑務所における再犯防止プログラムについて」というテーマで、11月28日に開催予定になっています。

治療的司法研究センター 学生サポーター H・F