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2017.06.12
成城大学では、罪を犯した人に対してその原因となった依存症などの問題への対処を支援して再犯を防ぐ「治療的司法」の在り方を研究する日本で初めての専門研究機関「治療的司法研究センター」を設立しました。
6月10日(土)には、その設立を記念して講演会を開催し、一般の方や専門家、報道関係者など100人を超える方が集まりました。
挨拶 | 戸部 順一 成城大学学長 指宿 信 治療的司法研究センター長(成城大学法学部教授) |
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祝辞 | 横田 尤孝氏(元最高裁判事、元法務省保護局長) |
第1部 基調講演 | 『罪を犯した人』のことを考える - 再犯防止は支援が鍵 - 村木 厚子氏 (元厚生労働省事務次官) |
第2部 研究報告 | クレプトマニアの弁護について 林 大悟氏(弁護士・当センター客員研究員) 薬物依存症者の回復支援と治療的司法- 弁護実践報告と、これからの研究課題について- 菅原 直美氏(弁護士・当センター客員研究員) |
元厚生労働省事務次官で、現在は法務省再犯防止推進計画等検討委員会の有識者構成員も務める村木氏の基調講演は、「『罪を犯した人』のことを考える - 再犯防止は支援が鍵 -」と題して行われました。入所受刑者は減少している中で再犯者率は上昇している点などの具体的なデータを多く提示し、さらにご自身の経験を例に、受刑者と生活困窮者や自殺者が抱えている問題に重なる点が多いと指摘。医療の世界では集中治療やリハビリで入院期間を短縮し社会の中で復帰させるように変化しているが、司法の世界はまだそこまで至っておらず、医療や福祉と連携して、社会の中で「居場所と出番」を得られるように支援する必要性を強く訴えられました。
第二部の客員研究員による研究報告では、弁護士である林氏、菅原氏それぞれが、万引きを繰り返す「クレプトマニア」や「薬物依存」といった依存症による犯罪者を弁護した自身の経験を発表。裁判で有利な結果をもたらすだけでなく、未来を生き直すための更生に向けた弁護も考えるべきだと主張しました。
特定の犯罪類型については刑罰よりも犯罪を生み出してしまう問題の解決が再犯防止につながることから、既に欧米諸国では「問題解決型裁判所」と呼ばれる刑事司法の動きがあります。センター長である指宿成城大学法学部教授は挨拶の中で、「更生支援する司法制度を研究し、日本の制度整備につながるきっかけとしたい」と抱負を語りました。
講演会には法務省矯正局長にご参列いただき、また、関係者による茶話会には法務省保護局長にもお越しいただき、まさに官民学一体となって治療的司法研究センターの第一歩を踏み出しました。