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2026.07.15
当センターでは、治療的司法の学びの一環として、折に触れて映画上映会を実施している。今回鑑賞したのは、『塀の中の中学校』(2010)である。本作品のモデルとなったのは、長野県松本少年刑務所内にある旭町中学校桐分校。同校は、当時の少年受刑者の多く(約8割)が新制度義務教育を修了していなかったこと等を背景に、法改正を経て、1955年に誕生した(松本市, n.d.)。当センターも2026年3月に同校を訪問している。
本作品で生徒5名と教員それぞれの葛藤が描かれる中で、「幸せ」と「普通」の在り方というテーマが浮かび上がる。振り返る幸せがないがゆえ、架空の生い立ちを語り詐欺を繰り返し、自ら幸せを創出しようとした者。過去の幸せな思い出の存在に苦しみ、生きることから逃れようした者。裕福な家に生まれるも病気に伴う小学校留年が引き金となり、人生の道を踏み外した者。幼い頃から芸の道に進むことを余儀なくされ、学校に通えなかった者。
教員が何気なく発した「普通の中学生は・・・」という言葉に対し、生徒は立ち上がり、「我々を普通の中学生と一緒にしないでください」と怒りを滲ませる。日本において義務教育とされている中学校を修了する機会が得られなかったからこそ、生徒たちは桐分校に入学した。彼らが学校生活を通してこれまで経験することのなかった場面に出会うとき、さまざまな感情が表出する。字が読めることの喜び。握手の温もりを噛みしめる姿。自身を受け止めてくれようとする人の姿を見て溢れる涙。新たな経験や出逢いには、喜びや幸せを育む力があるのかもしれない。
本作品は、罪だけでなく、その背景にある人生・環境に目を向けることの大切さを教えてくれる。さまざまな生き方に光を当てその背景について理解を深めることは、「治療的司法」アプローチの社会的意義を知る第一歩となる。
参考文献・資料
『塀の中の中学校』製作委員会. (2010). 塀の中の中学校[テレビドラマ]. TBS.
松本市 (n.d.)「桐分校」https://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/185/2207.html