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  • 2024.02.26

    ジェンダー平等とスポーツに関する国際会議がUNESCO(パリ フランス)が開催されアジア唯一の団体としてSGEが「High-level Meeting of the Global Observatory for Gender Equality」に参加しました

スポーツとジェンダー平等の推進に取り組む国際的研究機関、Global Observatory for Gender Equality and Sport(※1)及びThe United Nations Education, Science, and Culture Organisation(UNESCO)が共同開催するパリのUNESCO本部で開催された「High-level Meeting of the Global Observatory for Gender Equality」に、スポーツとジェンダー平等国際研究センター(International Research Center for Sport and Gender Equality:以下、SGE)がアジア唯一の団体として招待を受け出席しました。11月27日、28日の2日間にかけて実施された本会議に、SGE特別客員研究員の山口理恵子教授(城西大学経営学部)が参加しました。

この会議はスポーツにおけるジェンダー平等と、スポーツを通じたジェンダー平等をモニタリングするための指標について議論する会議で、国際的なジェンダー平等とスポーツに取り組む団体や、各大陸の主要な統括団体が参加しました。SGEは、2023年度スポーツ庁委託事業「ポストスポーツ・フォー・トゥモロー推進事業」再委託事業「日本とASEAN10か国政府によるスポーツを通じたジェンダー平等(ASEAN - JAPAN Actions on Sports : Gender Equality)」を受託しています。GOの主要なパートナーとして東南アジアや東アジアのスポーツにみられるジェンダー課題や課題解決のための取り組みを、議論にもたらすことを期待されてお招きいただきました。国際的な議論の中でSGEが実施してきた事業や日本の現状を発信する機会となりました。

下段左から2番目、山口理恵子教授(SGE特別客員研究員(城西大学経営学部))
下段左から2番目、山口理恵子教授(SGE特別客員研究員(城西大学経営学部))

※1 Global Observatory for Gender Equality and Sport (GO)
ジェンダー平等とスポーツに関する研究と専門知識を多様な関係者をコーディネートし、蓄積していくための団体。2003年、第4回ユネスコ主催のスポーツ担当大臣会合 (MINEPS IV) の議論の成果としてユネスコに支持され、2017年には195か国から歓迎されたカザン行動計画(KAP)の枠組みである「MINEPS VI」で設立が承認され、2023年の「MINEPS VII」では、UNESCOのFit for Lifeのジェンダー領域のアドバイザーとして、UNESCOと連携してスポーツにおけるジェンダー平等を推進しています。

第1部 統計データのプラットフォームを構築することの意義

GOのリサーチディレクター、Lombe Mwambwa氏から、GOの今後の取り組みについて説明がありました。GOは、2024年から世界中の人々がアクセスできる統計データのプラットフォームを作っていくことや、スポーツにおけるジェンダー平等の推進をモニタリングするための世界初の国際機関として、政策と現場のギャップを埋め、国際競技団体や国連機関と協力し、政策的行動に働きかけ、連携を促すことができる理想的な立場にあるGOの優位性が説明されました。

また、現時点で28か国(アフリカ、アジア、オセアニア、北米、西アメリカ、ヨーロッパ)を代表する60人を超える研究者、40の大学、20の研究センターとリサーチネットワークが構築されており、さらなる拡大を目指しています。

この会議では①GOの主要なモニタリング領域、②データプロジェクトにおける指標作成の原則、③デジタルプラットフォームの内容、④関係団体との連携におけるGOの役割と次のステップという4つの議題について話し合われました。

初めに、今後GOが主体となって取り組む施策として世界的な統計調査を実施する「データプロジェクト」について説明がありました。SDGsのスローガンでもある「No one is left behind(誰一人取り残さない)」をキーワードに以下の5つの原則に従ってデータを収集していく方針が示されました。データプロジェクトは、各地域の社会及び経済の現状を把握し、データを踏まえた効果的で具体的な施策を探ることを目的としています。

原則① 全ての人口を包括的に集計する
原則② データを分類し、分析しやすくする(年齢、性別、民族など)
原則③ データは、あらゆる情報源から入手する
原則④ 説明責任を果たす
原則⑤ 適切で効果的なデータの活用を行う

原則について説明がなされた後、この原則に基づいてデータを集めることが適切か、そして現実的かの観点から意見交換を行いました。関係団体からは、「5つの原則には優先順位をつけるべきだ」「性自認の多様性が認められる社会に変化している中で、性別で分類したデータを収集することは難しい」などの意見が出ました。また、「収集したデータや情報を政策立案者だけではなくより多くの人に届けるべき」などの提案もなされました。データを揃えることは非常に難しいですが、統計調査の意義が確認され、力強い後押しの声と、今後のさらなる具体化に向けた議論の継続が合意されました。

第2部 国際的なスポーツにおけるジェンダー平等の進捗をはかるためのマトリックスの共有

GOはUNESCOのFit for Life<sup>(※2)</sip>アライアンスの主要なメンバーとして、Fit for Lifeのグローバル共有指標と活動に貢献するためにUNESCOと協力しています。そのため各国のスポーツにおけるジェンダー平等の進捗をはかる指標の具体的項目について、GOの草案を基に議論を交わしました。身体的運動・体育授業、健康・ウェルビーイング、リーダーシップ・エンパワーメント、政策、規約、モニタリング評価、ガバナンスなどの観点から指標を検討しました。


少人数でのグループディスカッションでは、山口教授から、日本やアジアの女性のスポーツの現状について共有がなされました。また、フィジカルリテラシーの教育がされているかとの評価項目に関して、「リテラシー」という言葉の日本と欧米の使用方法の差異についても指摘がなされました。

また、全体でのオープンディスカッションでは、オンラインデータベースへのアクセスが難しい国や地域、データ収集及びデータを届ける両側面において取り残される地域が一定数存在するという懸念の声があがりました。さらに、WHO(世界保健機関)が行っている統計調査との差別化や、女性という言葉(Women, Girl, Female)の適切な使用方法など、様々な観点から意見が出されました。データの活用方法の曖昧さや、調査やデータベース運営の予算措置ならびに運用といった、現実的な課題も多数挙げられました。

最後に、実際に行われているプロジェクトにおける戦略及び課題の共有が行われました。まず、欧州評議会より「All In Plus Project」における学びと経験の紹介がありました。また、コモンウェルス事務局からジェンダー平等を含むスポーツとSDGsに関する指標と実施しているデータプロジェクトを通した学びが共有されました。

本会議で議論した内容を踏まえ、データプラットフォームの提案をブラシュアップしていく方針が伝えられ、会議は終了しました。

今回、SGEはアジア唯一の団体として参加し、新しい国際的な取り組みの中でアジアの視点を議論にもたらすことができました。国際的な潮流を踏まえながらも、アジアの現状に即して、ジェンダー課題に対して個別最適なアプローチを行う重要性を再認識する機会となりました。

※2 Fit for Life
Fit for Lifeは、UNESCOの主要なスポーツプログラムで、COVID-19の回復を促進し、包括的な政策形成を支援し、世界中の若者の幸福を向上させることを目指しています。このプログラムは、世界中のパートナーと協力して、データに基づいたスポーツの活動を通じて、運動不足、メンタルヘルス、不平等などの問題に取り組んでいます。

<会議参加者のコメント>

山口理恵子教授(SGE特別客員研究員/城西大学経済学部教授)

様々な関係者からのヒアリングを目的とする会議だったが、データ収集のためのデジタルツールに関する内容や、収集するデータ・コンテンツの話、データ収集する際のアプローチの仕方など、議論する内容が多岐にわたり、人員や予算の確保、タイムラインに関して懸念する声もあがりました。グループディスカッションの中では、実際の経験談も共有され、追跡調査の難しさを実感しました。
ただ、ビジョンは素晴らしく、GOのリーダーシップや推進力は計り知れないと感じました。今回提供していただいたそれぞれの資料を参考にしながら、日本におけるスポーツとジェンダー平等に関するデータや情報、研究などを概観し、何が蓄積され、どのような分野が不足しているのか、整理できると思われます。

中戸川紗理(SGE若手研究員)

ジェンダー平等推進に向けた世界的な取り組みの潮流を知ることができたこと、アジアからの唯一の参加者として、アジアにおけるジェンダーの状況を発信できたことはとても大きな意義がありました。それと同時に、世界的に統一された指標を用いてデータを分析することには、各国それぞれの事情を把握したうえで行う必要があるという難しさを感じました。また、出席者の90%が女性であったことを鑑み、ジェンダー平等を推進していく関係者においてもジェンダー平等が必要であることを再認識しました。
今回の経験を生かし、アジアそしてひいては世界的なジェンダー平等を推進できるように尽力して参ります。