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  • 2023.11.15

    スポーツとジェンダー平等国際研究センター設立記者会見を開催しました

日本とアジアにおけるスポーツを通じたジェンダー平等の推進へ。成城大学が、スポーツとジェンダー平等国際研究センターの設立を発表!スポーツ庁の再委託事業として、日本とASEAN10ヵ国のジェンダー平等推進を目指す「ASEAN-JAPAN Actions on Sport: Gender Equality」を始動

10月26日、成城大学は、スポーツとジェンダー平等国際研究センター(International Research Center for Sport and Gender Equality:以下、SGE)の設立記者会見を実施しました。

同時に、当センターが2023年度より受託するスポーツ庁委託事業「ポストスポーツ・フォー・トゥモロー推進事業」再委託事業において実施する「日本とASEAN10ヵ国政府によるスポーツを通じたジェンダー平等(ASEAN-JAPAN Actions on Sport: Gender Equality)」の事業説明を行いました。

記者会見の様子はこちらから全編ご覧いただけます。

上段左から、阿部篤志氏(独立行政法人日本スポーツ振興センター総合企画部主幹)、佐藤貴弘氏(SGE特別客員研究員、筑波大学体育系教授)、清水諭氏(SGE特別客員研究員、筑波大学体育系教授・学長特別補佐)、古田映布氏(SGEポスドク研究員、筑波大学人間総合科学学術院 体育科学学位プログラム)、宮澤優士(SGEポスドク研究員、筑波大学人間総合科学学術院 体育科学学位プログラム)、山口理恵子氏(SGE特別客員研究員、城西大学経営学部教授) 下段左から、田中東子氏(SGE特別客員研究員、東京大学大学院情報学環教授)、野口亜弥氏(SGE副センター長、成城大学文芸学部専任講師)、杉本義行氏(成城大学学長)、平井康大氏(成城大学研究機構機構長)、山本敦久氏(SGEセンター長、成城大学社会イノベーション学部教授)、神山裕司氏(成城大学研究機構事務室室長)
上段左から、阿部篤志氏(独立行政法人日本スポーツ振興センター総合企画部主幹)、佐藤貴弘氏(SGE特別客員研究員、筑波大学体育系教授)、清水諭氏(SGE特別客員研究員、筑波大学体育系教授・学長特別補佐)、古田映布氏(SGEポスドク研究員、筑波大学人間総合科学学術院 体育科学学位プログラム)、宮澤優士(SGEポスドク研究員、筑波大学人間総合科学学術院 体育科学学位プログラム)、山口理恵子氏(SGE特別客員研究員、城西大学経営学部教授)
下段左から、田中東子氏(SGE特別客員研究員、東京大学大学院情報学環教授)、野口亜弥氏(SGE副センター長、成城大学文芸学部専任講師)、杉本義行氏(成城大学学長)、平井康大氏(成城大学研究機構機構長)、山本敦久氏(SGEセンター長、成城大学社会イノベーション学部教授)、神山裕司氏(成城大学研究機構事務室室長)

第1部 SGE設立の経緯と意義

冒頭、本学学長の杉本義行が、挨拶を行いました。個性の尊重に重きを置く、本学の建学の精神を強調した上で、当センターが持続可能な開発目標(SDGs)の一つであるジェンダー課題の解決に、スポーツを通じて貢献していくことへの期待を語りました。

次に、本学社会イノベーション学部教授であり、SGEセンター長の山本敦久より、センター設立の経緯と趣旨、活動内容について説明しました。


はじめに、ジェンダーやセクシュアリティを巡る課題の象徴であると同時に、それらの課題解決へのプラットフォームとなってきた「スポーツの二面性」について解説しました。その上で、社会課題の解決におけるスポーツの可能性に目を向け、多様なステークホルダーを巻き込みながら、アジアの文化的・社会的文脈を考慮した積極的な研究の蓄積とジェンダー平等の推進に取り組んでいきたいと語りました。

<SGEの活動内容>
(1)東アジア及び東南アジアの国や地域との連携による学術推進
(2)研究成果の刊行及び研究関連資料の収集と公開
(3)各種研究会、講演会、シンポジウムなどの開催
(4)研究者の育成
(5)専門的知見を用いた実践


本学文芸学部専任講師であり、SGE副センター長の野口亜弥からは、多様なステークホルダーとの関わりを説明しました。幼稚園から大学院までの一貫教育を行う成城学園が中心となり、教育機関や行政、企業、非営利団体を巻き込みながら、スポーツとジェンダーに関する国内の取り組みをけん引し、国際的な連携や発信に広げていく構想について話しました。

センター長の山本教授は、ジェンダー平等が非常に大きな課題であることに言及しながら「メディアや行政、企業とタッグを組んで、大きなうねりとして社会を変えていきたい」と語りました。

その後、当センター特別客員研究員の5名の先生方を紹介し、以下のコメントをいただきました。

(コメント一部要約)

筑波大学体育系教授・学長特別補佐 清水諭氏

筑波大学は、2010年12月よりIOC公認で「Centre for Olympic Research and Education (CORE)」というセンターを持ち、2015年には鹿屋体育大学及び日本スポーツ振興センター(JSC)と連携して、スポーツ国際開発学共同専攻(修士課程)を立ち上げました。また、東京2020大会の開催に際して、日本政府事業の一環であるつくば国際スポーツアカデミー(TIAS)を同年にスタートしました。そうした中、教員及び学生が国際的なNGO組織でインターンシップや就職をしており、大学の研究者を招聘してシンポジウムや授業を行ってきました。このようなネットワークを活用して、成城大学の研究センターと共に取り組みを進めていけることを大変喜ばしく思っています。スポーツを通じた国際開発でも、男の子に焦点が当たりがちな中で、さまざまなスポーツにおいて女の子の居場所をつくるということを、特に東南アジアにおいて、ネットワークを通じながら広めていきたいと思います。

筑波大学体育系教授、スポーツ国際開発学共同専攻長・学長補佐 佐藤貴弘氏

世界的な動向として、ジェンダー平等が非常に重要な課題になっています。その中で、我々がこのセンターにどのような貢献ができるのか。まず一つは、国際的なインクルージョンの定義であると思っています。ジェンダーというものは、性に関することで身体的な問題でもあります。しかし、世界的な動向として多様な文化背景に配慮したインクルージョンには達しておりません。センターとして、スポーツを通じた開発だけではなく、一般生活の中でのインクルージョンの定義が重要だと考えています。二つ目に、研究者の育成及び研究成果の発行があります。スポーツ国際開発学共同専攻では、理論(セオリー)研究を重要視しています。日本と国際的な文脈で見ているジェンダー問題にはギャップがある中で、(理論研究を通じて)バイアスまたは偏見のない正確なデータを確保し、国際誌の中で発信していきたいと思います。また、どのような研究方法で成果を測るのかということも、今後問われてくるかと思います。このセンターと共に、今後国際発信をしていく際の一つの定義づくりをしていきたいと考えています。

城西大学経営学部教授 山口理恵子氏

ジェンダーフリーバッシングが吹き荒れ、「ジェンダー」という言葉を使うことさえも憚られた二十数年前を振り返ると、ジェンダーを直球で扱う研究センターができたことは、非常に感慨深いものがあります。女性とスポーツに関するセンターはこれまでにもありましたが、「ジェンダー平等」という言葉を使うこのセンターの設立には、女性だけではなく、男性やセクシュアルマイノリティに関する課題へと研究の視点を広げていける可能性を感じています。また、欧米や西洋諸国を中心に研究が進められてきたこの分野で、アジアからのジェンダー問題を、スポーツを通じて発信していけることに非常にワクワクしています。

東京大学大学院情報学環教授 田中東子氏

私は、今回の特別客員研究員の中で唯一、スポーツではなく、メディアやフェミニズム、ジェンダーを専門にしています。しかし、メディアとスポーツは切っても切れない関係にあります。それは、メディアがエンターテイメントの側面からスポーツを有効なコンテンツとして扱ってきたこと、そして、SNSの発達に伴いアスリートが発信したり、直接的な誹謗中傷を受ける環境にあることが関係しています。SNSやメディアを通じて、女性アスリートの活躍が差別的観点から発信されてしまうこともある中で、私の専門的知見がお役に立てるところがあればと思っています。また、2023年の日本のジェンダーギャップ指数は125位(146か国中)と、世界的に見て下から数えた方が早い立ち位置にあります。そうした中で、一方的にこちらから東南アジアの現状を調査するというよりは、共に学び、共に社会を変えていく気持ちで、ジェンダー平等をここから推進していければと思います。

※成蹊大学文学部准教授の稲葉佳奈子氏は、業務の都合のため欠席。

そして、スポーツとジェンダー平等の推進に取り組む国際的研究機関、Global Observatory for Gender Equality and Sport(※1)のリサーチディレクター、Dr. Lombe Mwambwa氏より、ビデオメッセージをいただきました。SGE設立の重要性として、アジアにおける地域に根付いた研究機関が生まれること、そして政策立案者やプログラム実施者の専門知識へのアクセスを可能にすることを挙げました。

第1部の最後には、今年6月よりジェンダー間における運動格差に関する調査を実施する株式会社アシックスのマーケティングコミュニケーション部の小峯祥子氏より、以下のコメントをいただきました。
「アシックスは”Sound Mind, Sound Body、心も体も健康に”というメッセージを体現するブランドとして、2019年から運動と精神状態の関係性について継続的に調査を行っている(※2)。世界中の誰もが自由に、平等に運動する機会を与えられるようにサポートし、心も身体も健康な生活を実現できるように、今後も取り組みを行っていく。SGEのセンターの皆さまとも情報交換などを通して協力していきたい」

SGEは、このようなスポーツとジェンダーの調査・研究を行う、国内外のさまざまな関係団体と連携し、アジアの地域的文脈に配慮した国際的な研究拠点となることを目指していきます。

※1 Global Observatory for Gender Equality and Sport (Go)
ジェンダー平等とスポーツに関する研究と専門知識を多様な関係者をコーディネーションし、蓄積していくための団体。2003年、第4回ユネスコ主催のスポーツ担当大臣会合 (MINEPS IV) の議論の成果としてユネスコに支持され、2017年には195か国から歓迎されたカザン行動計画(KAP)の枠組みである「MINEPS VI」で設立が承認され、2023年の「MINEPS VII」で、UNESCO関連のジェンダー平等事業を推進する国際的な団体として発信した。
※2 ASICS Move Every Mind:https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/move-every-mind

第2部 ポストスポーツ・フォー・トゥモロー推進事業再委託事業「ASEAN-JAPAN Actions on Sport: Gender Equality」

SGEは、2023年度より、スポーツ庁委託事業「令和5年度 ポストスポーツ・フォー・トゥモロー推進事業(※2)」再委託事業に選定され、日本とASEAN10ヵ国のジェンダー平等推進を目指す「ASEAN-JAPAN Actions on Sport:Gender Equality」に取り組んでいます。

今回の記者会見では、日本スポーツ振興センター総合企画部主幹の阿部篤志氏にもご登壇いただき、事業概要と意義について説明しました。

冒頭、副センター長の野口より、事業の概要を解説。今年度は、ASEAN10ヵ国における政策立案者向けのワークショップ(ベトナム)と、女性及び女児のスポーツ参加における課題とニーズに関する調査(フィリピン、ベトナム、インドネシア)を行うことを発表しました。また「今年度の実施国以外にも、日ASEAN各国にこの調査を広げていきたい」と話しました。

次に、日本スポーツ振興センターの阿部氏より、本事業の意義についてコメントをいただきました。


「今回の事業は、日ASEANスポーツ大臣会合での優先協力分野の一つである“女性スポーツ実施率の向上”に対して、ASEAN諸国の女性・女児がスポーツにアクセスでき、スポーツから得られるあらゆるメリットを享受できるようになることを、最終ゴールとしている。そのために、ASEAN各国の政府機関関係者の皆さまが、自国でのスポーツにおけるジェンダー平等の達成のために、さまざまな事業の具現化ができることを目指した取り組みである。これまでの各国政府関係者向けのワークショップや昨年度のフォローアップ事業での成果と課題を分析して、今回成城大学より新たな戦略に基づく中長期計画を立案した上で、事業の企画提案いただいた」

阿部氏は、今回の事業計画が、先日のタイ、チェンマイで開催された日ASEANスポーツ大臣会合でも注目が寄せられたことに言及し「委託者であるJSCとしても、この採択事業を通じて取り組みが推進されることを非常に嬉しく思うとともに、その成果が生まれることを期待している」と、締めくくりました。

※2 ポストスポーツ・フォー・トゥモロー推進事業
2022年度から2026年までの5年間で、国内外の700万人以上を対象に日本国政府が推進するスポーツを通じた国際貢献事業。