共通教育研究センター開設10周年記念事業
表現と教養
—スキル重視ではない初年次教育の探求—
共通教育研究センター主催の公開FDワークショップ「表現教育の可能性」と、同センター開設10周年記念シンポジウム「初年次教育における論文の書き方指導を考えるー日本語学の有効活用は可能かー」をもとにした書籍として、『表現と教養—スキル重視ではない初年次教育の探求—』が、ナカニシヤ出版から発刊されました。
本書は、「いかにスキルを重視した教育を脱して、教養を意識した初年次教育を実践できるのか。ライティング教育を中心にしつつ、さまざまな角度から表現教育の可能性を論じる」(ナカニシヤ出版ホームページより)ことを目的に、本センター主催で開催してきた公開FDワークショップと、開設10周年記念シンポジウムに登壇した講演者の方々が執筆されています。
多くの大学で、初年次教育に関する科目が開講され、初年次教育の指導方法やカリキュラムの構築方法などが、FDのトピックとして取りあげられています。しかし、本センターの公開FDワークショップでは、そのようなFDとは一線を画し、指導方法のようなFDを通した教育のスキルのみに耽溺することなく、教養教育のあり方と絡めて初年次教育について考えてきました。その成果である本書は、大学の学修において身につけるべき力とは何か、それを実現するための初年次教育とはどのようなものか、といった問題を提示するとともに、スキル重視ではない初年次教育をどう考えるかを探究するための指針を提示していると言えます。
(以下、「序」より)
本書は、アクティブラーニングや反転授業に代表される初年次教育が学生の主体的学習を前面に押し出す潮流にありながら、実質的にはスキル重視の教育になっていることや内容よりも教授方法の見栄えのよさに偏重していることに疑念を抱き、いかに教養を意識した初年次教育を実践できるかについて、「表現教育の可能性」を手がかりにいくつかの論考を提示することで、読者にクリティカルな議論を展開できる機会を提供すると同時に、広く世に問おうとするものである。
目次
序 スキル重視の初年次教育からの脱出:教養を意識した表現教育を手がかりとして(東谷 護)
第I部 初年次教育におけるライティング教育