NEWS
2024.10.25
2024年10月12日(土)に、成城大学紀伊國屋書店アカデミア連続講座「英語教育×イノベーション×辞書」(全3回)の第3回が開催されました。この講座は、社会イノベーション学部20周年記念の一環として行われており、英語教育とイノベーション、辞書との関係について講義を行う企画です。
第3回目の今回は、株式会社三省堂学参・出版部部長の寺本衛氏に、「英語教育の変容と辞書出版イノベーション」というタイトルで講義をしていただきました。寺本氏は三省堂で30年近く辞書出版に携わり、『コンサイス英和辞典』『グランドセンチュリー英和辞典』『エースクラウン英和辞典』といったよく知られている辞書にも関わってこられた方です。
講義内容は英語の特質、英語教育、辞書の変化など多岐にわたりました。英語教育は変容しており、具体的には、オーラル(aural/oral)コミュニケーションから4領域(Listening/Reading/Speaking/Writing)へと、よりバランスの良い音声重視の英語教育へと変わってきました。一方で、辞書との関連では、中学や高校の教科書の巻末に単語と日本語訳が載せられ、辞書引きが教育の中で行われなくなったりするようになるなどの変化も生じています。英語教育の変容とともに辞書の置かれた状況も変容しているのです。
こうした状況の中で、「これからも辞書を”続けていく”」という思いのもと、前置詞のイメージ図を掲載したり、コロケーションの情報を取り入れたりするなど(第2回の紹介記事参照)、辞書に関わる人たちがイノベーションを積極的に起こしていることを語ってくださいました。
寺本氏の先輩編集者が1980年代にイギリスの出版社に行った際、日本の主要な英和辞典が並んでいたのに驚いたそうです。イギリスの出版社が日本の辞書を研究していたのは確実で、主要な学習辞書にその影響がみられるということです。また、今はインターネット上にある無料サービスとの戦いを強いられているといったお話もありました。このように、辞書作成の現場におられた寺本氏からしか伺うことのできないエピソードも多数飛び出し、参加者は時間を忘れた様子で講義に聞き入っていました。講義後の質疑応答も白熱した様子で行われ、盛況のうちに催しが終了しました。