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2024.09.13
9月2日~4日[大会は9月3日(10:30~17:30)]、第33回経営学合同ゼミナール研究発表大会が、岡山市中区西川原の就実大学を会場として同大学・大塚祐一、小柳智裕 両先生の運営で行われました。今回は直前週に台風が襲来し、激しい雨風のため鉄道や飛行機の運航が中止されるなどのトラブルに見舞われました。しかし、幸運にも台風が温帯低気圧にかわったことにより、開催前日には陸路空路とも再開となりました。同ゼミナールは昨年に続き合宿形式で行われました。
経営学合同ゼミナールは、1990年に開始され、学生が企画運営する合宿&研究発表の形式で行われ、教員&学生(学部生、大学院生)が大学の枠を超えて学び、相互に交流を図ることを目的としています。今年の参加校は以下の9大学で10の研究発表(1ゼミ1発表)、100名を超える参加者となりました。
関西大学 中尾悠利子ゼミ、京都女子大学 江 向華ゼミ、甲南大学 奥野 明子ゼミ、神戸大学 庭本 佳子ゼミ、就実大学 大塚 祐一ゼミ、就実大学 小柳 智裕ゼミ、成城大学 境 新一ゼミ、中央大学 砂川 和範ゼミ、法政大学 宇野 斉ゼミ、麗澤大学 寺本 佳苗ゼミ(※50 音順)
今年度の共通テーマは「持続可能な〇〇」です。SDGsが採択された2015年以降、持続可能な〇〇という言葉を至るところで耳にするようになりました。持続可能な経営、持続可能な観光、持続可能な農業、持続可能なまちづくり、持続可能なエネルギー政策、持続可能なファッション、持続可能な消費などがその一例です。2030年の達成期限の折り返しを過ぎた今、SDGsの達成と同時にポストSDGs(2030年以後の社会)についても考えなければならない時を迎えています。
各ゼミの研究発表を通じて現代社会や企業、地域等が抱える様々な問題に対する知識と問題意識の共有を図り、熱心な議論が展開されました。
合同ゼミの進行は発表15分、質疑応答5分で構成され、各発表に対して、学生による質疑・評価ならびに各先生からの講評がなされました。また、ゲストとして経営学合同ゼミの創始者、日置弘一郎先生(京都大学名誉教授)、 澤野雅彦先生(元北海学園大学教授)、廣山謙介先生(甲南大学名誉教授)、井上徹先生 (芦屋大学准教授)による講評も行われました。
境ゼミの研究テーマは「人口減少社会で持続可能な人づくりと地域プロデュース:東京・長野・和歌山における人材の育成&循環と新事業創造の事例検証と提案」です。
今回の研究にあたり、問題意識の発端になったのは、2023年12月、当時の境ゼミ3年生による「SDGs de 地方創生カードゲーム」の体験でした。毎年10%ずつ人口が減少していく地方を仮定し、厳しい条件のなかで経済、社会、環境のバランスをどのように維持しながら地方創生、地域の持続を図るかを学習しました。その結果、SDGsの考え方と地方創生との結びつきを知る機会となりました。
人口減少社会を踏まえ、万事に持続可能性を担保するためには、それを可能にする条件の維持/それを阻害する条件の除去が必要です。私たちは関心をもった8つの項目[商業・まちづくり、観光、祭り、医療・介護・福祉、環境、防犯・防災、エネルギー、人材育成] について、従来から行ってきた4地域[都市部では世田谷区下北沢、武蔵野市吉祥寺、地域部では長野県飯綱町、和歌山県田辺市]を対象に調査しました。その結果、人の発掘・育成、つながり、拠点(場)、持続、継承、自立、循環などの概念が共通に浮かび上がりました。
日本の人口減少問題は、特に地域部において深刻な影響を及ぼしており、地域の持続的発展のためには、新たな視点と取り組みが必要です。そのためには地域資源を用いて地域内外と人材の育成と循環を図り、新たな事業をつくりだして、地域の持続と自立、連携、循環・共生を築くことが求められます。
そこでこの研究発表では、東京、長野、和歌山における人材育成と地域活性化・地方創生の事例をフィールドワーク、インタビュー、データを用いて考察し、施策の提案を試みました。
参考にした先行研究や政策ビジョンは4つあります。民間と行政が関わる人口戦略会議、内閣府のまち・ひと・しごと創生総合戦略、環境省の地域循環共生圏、さらに三菱総合研究所の提案です。持続可能な地域社会を実現するために人材育成と地域プロデュースが必要であると考えました。そのなかに登場する重要な概念、思考の枠組みとしては、
(1)人口戦略会議では、日本全体の4割にあたる744の自治体で、最終的には消滅する可能性がある/「消滅可能性自治体」の発生が公表されました。
(2)まち・ひと・しごと創生総合戦略:活力ある地域社会の実現における日本政府の将来的な取り組み内容は以下の通りです。
〇地方創生テレワークの推進
〇魅力ある地方大学の実現と地域産業の創出・振興
〇企業版ふるさと納税(人材派遣型)
〇自立・分散型エネルギーシステムの構築 など
現状の都市集中型のままでは限界に至るため、「分散型社会」への移行、そして都市部と地域部の両方に改革が必要であり、「産学公民連携」がカギとなります。
(3)地域循環共生圏では地域資源の可能性を再検討し、資源を有効活用しながら環境・経済・社会を改善し、資源を融通し合うネットワークをつくることを目指します。「自立分散」、「相互連携」、「循環・共生」の3つの要件がカギとなります。
(4)都市と地方の人材循環/「逆参勤交代制」は三菱総研のプラチナ社会研究センターが提唱しているもので、江戸時代の参勤交代が江戸への大名の往復を強制したのとは逆に、都市住民の短期間の地方移住を制度的に後押しします。現代版の参勤交代制の必要性については、東京大学名誉教授・養老孟司氏も述べています。
既に述べた8項目について4地域を、都市部のまちの比較、地域部のまちの比較、都市部と地域部の比較を経て、共通点、相違点がみえてきます。今回の発表では、下北沢、吉祥寺、飯綱町、田辺市のうち、特に吉祥寺を除く3地域について適した人材の発掘・育成・循環の仕方、提案を試みました。また企業事例では、下北沢:ミカン下北、SYCL、飯綱町:カンマッセいいづな、みみずや、トッパン、田辺市:たなべ未来創造塾 それぞれでの人材育成、新事業創造の方法を取材しました。
以上をふまえて、人材育成・循環と新事業創造に関する分析結果と私たちの提案を総括すると以下の通りです。
○教育改革。
○地域活性化を実現できる人材育成、地域プロデューサーの育成。
○若年起業の奨励、若手の発掘と育成。
○逆参勤交代制度による人材の交流、循環と人材不足の解消。都市から地方への短期間移動。
この提案により「人材の発掘、育成、循環」がすすみ、地域に特化した人材の育成が期待でき、多くの地方自治体に応用できるものと思われます。また、各提案については、個々でも、あるいは複数で組み合わせても、新たな提案を創出することができるものと考えられます。最後に、提案と実行を繰り返し、人の育成・循環と地域プロデュースによって持続可能な地域が拡大することを期待したいところです。
最後に審査結果が発表され、SNSによる投票の結果、成城大学・境ゼミは優秀賞に輝きました。17回目の参加となり、11年連続で受賞しています。なお最優秀賞は地元の就実大学・大塚ゼミ、入賞は京都女子大学・江ゼミ、教員特別賞は就実大学 大塚ゼミと中央大学・砂川ゼミ(同率)でした。
先輩(上級生および卒業生)からの成果を継承しつつ、6月から準備を開始しました。ただし、例年と異なり、次年度から変更となる新ゼミ制度(基礎ゼミ[2年]と専門ゼミ[3~4年]の分離)にあわせて、3年生コアメンバーだけでなく2年生有志も加え、初めて2・3年をブリッジした混成チームで臨みました。しかし、異なる学年のコミュニケーション、3地域へのフィールドワークと検証が思うように進まず、8月のお盆明けから毎日が超多忙な日々となりました。最後には、4年生のアドバイスをふまえて、2・3年混成チームが一丸となって、チームワークと集中力を発揮し、研究の総括・提案に至りました。
ただ、異なる学年間の連携・スケジュール調整の点では次回へ課題を残しました。今後の教育、研究、就活に大いに役立つものと思われます。
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