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  • 2026.01.09

    TOKYO AIDS WEEKS 2025参加報告: キャリアの多様性と社会正義:私とHIV/エイズ

 成城大学正課科目「キャリア・プラクティスⅥ〈多様性と社会正義〉」1)では、2025年11月28日(金)にマダムボンジュール・ジャンジ様(以下;ジャンジさん)をお迎えし、『キャリアの多様性と社会正義:私とHIV/エイズ』をテーマに、日本のHIV/エイズの状況と、コミュニティをベースとした取り組みや課題について講演いただきました。講演の後にはジャンジさんと学生との対話の機会を設けました。開催報告として学生の学びを紹介します。なお、本授業は「TOKYO AIDS WEEKS 2025」2)に参加する形で実施しました。


「TOKYO AIDS WEEKS 2025」とは

 12月1日の世界エイズデーの前後に、様々なNGOやグループと連携して、webやSNS上で流れるHIV/エイズに関連する情報をこのサイトでご紹介しています。HIV治療は大きく進歩し、「U=U」のメッセージが広がったことで、HIVとともに生きる人々の生活は確実に変わってきました。けれども、社会には依然としてネガティブな偏見が残り、誰もが安心して暮らせる状況には至っていません。
 国内では、コロナ禍で保健所の検査が減った影響もあり、エイズを発症して初めてHIV陽性を知る人が少しずつ増えています。国際的にも政治や社会情勢の変化により、HIV/エイズを取り巻く環境は厳しい局面を迎えています(TOKYO AIDS WEEKS 2025のページより引用)。

学生のレポート(一部抜粋)

 授業を通して、HIV/エイズに関する知識や理解を深めることは、予防や偏見をなくすためだけでなく、「より良く生きるための学び」であると気づきました。これはまさにwell-beingにつながる視点だと思います。性に関する知識や考え方は、日々の生活や人との関わりと深く結びついているため、決して切り離して考えることはできないものだと感じました。だからこそ、学校での適切な性教育が行われることは、一人ひとりが安心して自分らしく生きるための土台になるのではないかと思います。その点でも、性教育はまさに well-being と直結している学びなのだと改めて感じました。最後に行った「ハグ体操」では、自己肯定感や自己理解、自己啓発にもつながる考えだと思いました。自分を大切にすることを感覚で理解することが「ハグ体操」だと考えます。日々の中でも、よりよく、そして丁寧に自分を大切に生きていきたいと感じました。

 ジャンジさんのお話で特に印象に残ったのは、質問もさせていただいた通り、HIV/エイズの現状や基礎知識の周知に向けて、我々ができることについてです。私自身も考えていた通り、今はこういったことを学校ではなかなか教えてもらえず、私は中学高校と男子校に通っていたのですが、そこでも体についての基本的なお話があったくらいで、性のことや、病気のことに関する具体的な教育はあまりありませんでした。かといって、自分で調べようというのにはどうしても抵抗が生じてしまいますし、私含め正直どうやって調べたらいいか、そもそもどの情報が正しいのかもわかりません。教育が少ない以上、実際に教育の拡充を実現するためにも、私たちで話を少しでも共有したり、「世界エイズデー」の日に友達や家族に自然に話してみるなどして、自分も相手も意識するきっかけにしたり、知識を広めていきたいと感じました。

 過去に比べて治療も発達してきて、感染したからと言って絶対に命を落とすこともなくなってきた一方で、そうだからと言ってどんどん関心が薄れていって、ある意味都合のいい情報だけが残っているように感じます。だからこそ、学校教育の大切さがより一層強調されるべきだと思います。他国と比べて、性のことが強くタブー視される日本の社会の中でも、性行為は誰もが経験しうることであるし、感染してからでは遅く、年齢に関係なく知っておくべきことです。 また、差別的なイメージをなくすのにも学校教育は貢献すると思います。授業を受ける前までは、教科書での表面的なイメージを知っている程度で、この授業を受けない限り、知る機会はめったにないと思います。それにより、HIV/エイズに対する差別的な考えがなくならず、映画『ボヘミアン・ラプソディ』のような古い時代のイメージがついてしまいます。氾濫している様々な情報の中から正しい情報を見分け、一人ひとりがアンテナを張って自分の考えを持てるようになることが求められると思います。授業を通してそのような「知る」大切さについて改めて考えることができました。HIV/エイズに限った話ではありませんが、社会に生きる一人の当事者として知っておくべきことがたくさんあることが、授業を通して解りました。私たちにできることはまだ限られているけれど、少なくとも今回得た学びを友人や家族に伝えることはできます。小さな情報の受け渡しかもしれませんが、それが大きな変化につながること、自分自身が変わることで周りや社会を変えられることを信じています。少し大げさかもしれないけれど、そのように考えることができる、学びの多い授業でした。今回得たことを活かして、これからの将来に向けてより一層アンテナを広げて、学び続ける姿勢を大切にしたいです。

ジャンジさんより学生へメッセージ

 まず学生のみなさんが自分が知らないという事実を素直に受けとめて言語化し学ぼうとする姿勢と、勝又先生がそのような安心・安全な場を作っておられることに、私も安心しました。
 1980年代に出現したHIV/エイズは、治療が進んだ今なお性の健康と人権に関わる社会的課題の一つです。今回の授業が知識と情動の両面から自分に引きつけて捉える機会になればと考えましたが、自身の体験や気づきから生まれた意見や感想を沢山きく事ができてうれしかったです。伝えたかったことをしっかり受けとめてもらえたと実感しました。
 そして若い学生のみなさんが、自分ができることをみつけて行動していこうとする姿勢に希望を感じます。私もパワーや気づきをもらいました。日々いろいろなことが起こりますが、どんな自分でもOK!と自分をHUGして慈しみ、違っていてOK!とコミュニケーションをあきらめず、楽しい!と思える世界をともに作っていきましょう。


登壇者:マダム ボンジュール・ジャンジ
パフォーマンスアーティスト/ドラァグクイーン
ドラァグクイーン・ストーリー・アワー東京 運営メンバー
1990年代から舞台に立ち、東京を中心にフランス、ベルリン、ストックホルムなど幅広く活躍。交歓のMix Party「ジューシィー!」(1997-)主宰、HIV陽性者やその周囲の人が書いた手記の朗読や歌によりメッセージを伝える「Living Together のど自慢」(2006-2025)の企画・出演など、違いを超えて出会う時空間を創出している。多様性の絵本パフォーマンスや、自身が考案したひとりひとりの存在を肯定し合う身体ワークショップを2001年から展開し、2025年6月に書籍「HUGたいそう」(ゆまに書房)を出版。2005年から、新宿2丁目にあるHIV/エイズ・セクシャルヘルスの情報センターaktaのスタッフとして勤務。2012年にNPO法人化した際に初代理事長・センター長を務めたのち、2025年5月までakta理事を務める。長年にわたりLGBTQ+の人やHIV陽性者が安心できる場づくりや個別相談、講演など多数行なう。認定カウンセラー。
https://bonjourjohnj.tokyo/

注)
1) 正課科目「キャリア・プラクティスⅥ〈多様性と社会正義〉」概要:
本科目の目的は、学生が社会の様々な問題に向きあいながら、社会正義の視点から「ライフ・キャリア」について理解を深めることである。授業では次の3つのテーマ、「出産・不妊と特別養子縁組」、「LGBTQとHIV/エイズ」、「多文化共生」を設定し、生き方の多様性について学ぶ。それぞれ専門家・実践家を招聘する。学生は社会を構成する一員として、各テーマにたいして当事者意識をもち臨み、価値観・人生観の多様性について理解する。授業を通して、ライフ・キャリアの多様性を重視し、個人のエンパワメントを高める社会正義を志向し、長期的なライフ・キャリアに主体的に向きあっていく。
シラバス(2025年度)
https://lc.seijo.ac.jp/lcu-web/SC_06001B00_22/referenceDirect?subjectID=202700695711&formatCD=1
成城大学のキャリア教育 Seijo Career Program(SCP)
https://www.seijo.ac.jp/career/news/cvt4qu000000h94b.html

2)TOKYO AIDS WEEKS 2025
https://aidsweeks.tokyo/

事務局 特定非営利活動法人ぷれいす東京
https://ptokyo.org/
We are already LIVING TOGETHER with HIV、「自分らしく生きることを応援します」をモットーに、HIV/エイズや性感染症、セクシュアルヘルスをテーマに、市民一人一人が自分らしく生きられるような地域の環境づくりに取り組む団体

本科目の実践内容は、研究テーマ「社会正義を志向するライフ・キャリア教育の実践と意義の検討」(JP24K16717の一環)によるものです。

文責・科目担当者 勝又あずさ(成城大学 キャリアセンター)