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  • 2025.09.01

    2025年度Seijo Career Program(SCP)レポート: 他者と関わり自らの強みと人間力を磨く「キャリア・ベーシックⅠ〈自己探究〉」

成城大学キャリアセンターでは、2025年度に新カリキュラム「Seijo Career Program(SCP)」1)がスタートしました。自己を探究し、自己を表現し、他者との関係を構築していく「キャリア・ベーシック」(3科目)は、他者と関わり自らの強みと人間力を磨くことをテーマに開講しました。今回は「キャリア・ベーシックⅠ〈自己探究〉」2)の様子をレポートします。

キャリア・ベーシックⅠ〈自己探究〉

他者との対話を通して自己を探究し、将来の可能性を拡げる

 この科目は学生同士の対話を通した自他理解と、大学生活と卒業後も視野に入れた自律的なキャリア構成を行うことを目的としています。授業の前半は、働くこと・生きることをテーマに、21世紀のキャリア論「キャリア構成理論」(Savickas3))のインタビュー手法を用いて自己を探究します。後半はキャリアビジョン描く手法として、価値観ワーク、キャリアデッサン、未来年表、目標設定、行動計画を経て、最終回にはコミットメント(自分への宣言)を行いました。
 授業中盤には、即興劇団TILT4)を招いて学生参加型の即興劇セッションを実施しました。「シナリオがない、先が見えない、予期せぬ状況でも失敗を恐れずにまずやってみる」、「自らを表現し、共感し、助けあい、場をつなぎながら一つの物語をつくる」といったライフ・キャリアにおいて大切な考え方を、即興劇を通して学びました。

  • 学生全員がそれぞれ言葉を紙片に自由に書き、それを役者が拾い読みあげながら劇を展開する
    学生全員がそれぞれ言葉を紙片に自由に書き、それを役者が拾い読みあげながら劇を展開する

  • 1名の学生が自身のライフストーリーを語り、その語りを手がかりに役者はその学生の過去・現在・未来を即興で演じる
    1名の学生が自身のライフストーリーを語り、その語りを手がかりに役者はその学生の過去・現在・未来を即興で演じる

授業すべての回を通して:学生のコメント(一部改編)

 授業を通して「キャリアとは何か」という問いに私なりの答えを見つけることができた。初回には「キャリアは特別なものではなく、日々の出来事や経験の積み重ね」という考えに触れ、自らの過去の体験にも価値があることに気づけた。性格理解や価値観の確認、他者の話から学ぶことなど、あらゆる視点から「自分らしさ」や「将来の可能性」に向き合う機会があった。中でも印象に残ったのは第3回「ライフラインチャート」である。自分の過去を深く振り返ることはこれまでなく、嬉しかったことや辛かったことを言語化する作業は新鮮で、自らの価値観や行動の傾向を見つめ直した。小学生の頃に大きな失敗をして周囲に迷惑をかけた経験を思い出し、それを乗り越えたときに「信頼される人でありたい」という自分の軸ができていた。これが進路選択や人間関係に影響を与えていて、それを自覚できたことは今後のキャリアに役に立つと思う。将来の目標を考えることだけでなく、このように自分の過去や今の思考を深く探究しながら、自らの人生をどう歩みたいかを主体的に考えることができた。

 印象に残った授業は第6回「キャリア構成インタビュー:人生台本」。自分の好きなストーリー(映画や小説)が自分の人生における「この場面ではこうしたい」につながるものだ。好きなストーリーや登場人物は実際に私の憧れであり目標だと気づいた。Savickas博士によるとライフストーリーにはキャラクターアークという変化の局面があり、アークはポジティブ・フラット・ネガティブな変化の3種に分かれ、また人物の心の変化をWANTとNEEDに分けている。私は主人公の真っ直ぐなところやそれにより良い方へ変化していく物語が好きなことから、フラットな変化のアークを好む傾向があった。どんな未来にするか、WANTとNEEDをもとに具体的に考えていきたい。

 一番学びになった回は第9回の即興劇だ。人生を俯瞰して観た気がするからだ。学生の人生を役者さんたちがで即興で演じる劇では、お互いの意思がうまく伝わらなくて「うまくいくのかな」や「どうやって繋がるんだろう」と私のほうが不安になる部分がたくさんあり、観ながらハラハラしていたが、最終的にいい感じに話がまとまり閉幕したとき、私は鳥肌がたった。バラバラだったピースが最後にすべてまとまって、はまって完成した。「まるで人生みたい。」と感じた。その時はうまく繋がらなかったものでも、最後のパズルを完成させるためには不可欠だったと解る。これは人生にも当てはまることで、どんなに失敗して、その時は何にも繋がらなくても、いつか絶対にその経験が役に立つ時がくる。私たちは最後のパズルを完成させるために、小さなピースを毎日集め続けているのだから、うまくいくピースも全然うまくいかないピースがあるのも当然だ。それでもすべてのピースには意味がある。しかし、そもそも自分からアクションを起こさないとそのピースは集まらない。そのため、失敗を恐れずアクションを起こし続けていくことが大切だ。その先に成功は待っている。

 一番学びになったのは第12回。この回ではまず個々に「ドリームリスト」を作成し自分の夢や将来のビジョンについて具体的に考えた。これまで漠然としていた目標や願望を、実際に紙に書き出すことで、曖昧だった部分が少しずつ明確になっていった。頭の中で思っているだけでは気づけなかったことが、文字にして気づけたことは大きな収穫だった。次はペアワーク「キャリアデッサン」。「将来どのように働いているか」をペアに語りペアがそれを絵に描いて贈りあうというもの。自分の未来を誰かに描いてもらうという経験も新鮮だったし、逆に相手の未来を真剣に想像しながら描くことも貴重な時間となった。相手の話に耳を傾け、その人の価値観や夢を共有することで、自分自身の価値観や視点も広がった。「将来について、一人で考えるだけでなく、人との関わりの中でも深めていける」ことを学んだ。授業では自分の将来について考え、その夢に向かうための道筋を自分自身で考えるきっかけも得た。ただ漠然と夢を語るのではなく、「どうすればそこにたどり着けるのか」という視点を持つことが大切だ。将来に対する不安もあるが、それ以上に希望や可能性を感じられるようになった。

注)
1)成城大学のキャリア教育 Seijo Career Program(SCP)
https://www.seijo.ac.jp/career/news/cvt4qu000000h94b.html

2) 2025年度キャリア・ベーシックⅠ〈自己探究〉シラバス 
https://lc.seijo.ac.jp/lcu-web/SC_06001B00_22/referenceDirect?subjectID=202700695700&formatCD=1
参考:2024年度の授業の様子
https://www.seijo.ac.jp/career/news/cvt4qu000000fti2.html

3) サビカス,M.L. (2015)『サビカス ライフデザイン・カウンセリング理論—自己構成によるライフデザインアプローチ』,日本キャリア・カウンセリングセンター監訳, 福村出版
https://www.fukumura.co.jp/book/b201473.html

4)即興劇団TILT
https://www.impro-tilt.com/

文責・撮影・科目担当者 勝又あずさ(成城大学 キャリアセンター)