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  • 2025.09.01

    2025年度Seijo Career Program(SCP)レポート: 小田急電鉄との連携協定科目「キャリア・プラクティスⅣ〈サステナビリティ〉」

 成城大学キャリアセンターでは、2025年度に新カリキュラム「Seijo Career Program(SCP)」1)がスタートしました。他者と社会と関わりながら実践的に学ぶ「キャリア・プラクティス」(計6科目)の中で、今回は「キャリア・プラクティスⅣ〈サステナビリティ〉」(正課科目 全学部・全学年対象 前期開講)2)についてレポートします。

キャリア・プラクティスⅣ〈サステナビリティ〉:科目概要

 成城大学では、小田急電鉄株式会社様(以下;小田急、敬称略)との連携・協力協定によるキャリア教育科目を2018年度より開講しています。本科目「キャリア・プラクティスⅣ〈サステナビリティ〉」は、学生が、社会の問題や課題を調査し知ること、チームで意見を出しあいながら活動すること、大勢の前で発表すること、そして、社会人と関わりながら職業観・人生観を醸成することを授業のねらいとしました。
 2025年度は小田急の有識者を招聘し、学生はESG経営3)と「WOOMS」4)について学び、授業の前半・後半計2つのテーマをもとにそれぞれチームを編成し活動を行いました。前半のテーマは『小田急の事業を調査し新規事業を創造』(経営戦略部より提示)。後半のテーマは『成城学園/成城地域ごみを減らすには』(デジタル事業創造部より提示)。学生は、学内外のフィールドに足を運び、積極的にヒアリング、アンケート、文献調査、企画書提出・交渉等を行い、小田急や成城学園と協働してできることを考えました。
 後半のテーマの活動成果発表会は、7月11日(金)に学内グローバルラウンジにて開催しました。学生からの提案には、学園内売店のDX化アプリ開発、教科書のリユースシステム、成城学園のSDGsに山羊を飼おう、モノの循環(シェア)アプリ開発、マイボトル持参ポイントシステム、成城地域のスーパーの食品トレー削減が挙がりました。
 この成果発表会には、小田急電鉄の有識者と、学内教職員、合計7名が来場し、各発表ブースを巡回いただき、問題意識と課題解決について語りあいました。

活動成果発表会の様子 各チームの活動成果を小田急の皆様と成城学園職員に発表

発表を終えて記念撮影

授業での活動を通して:学生のコメント(一部改編)

 今まで中学・高校と発表する機会がたくさんあり、そのため自分の中では発表は慣れていたのですが、この授業で初めて、聞き手側(小田急のみなさん)が本気で聞いてくださいました。そういう意味では、高校までの教育は発表を行うことにしかフォーカスされていなくて、聞いている方は正直視野に入りにくい、そこの差を感じました。発表する側はなんとなくでは流せないため下調べが何倍も必要でした。もちろんこれまでも決して簡単な発表ではなかったですが、真剣に聞いてくれる、本気のリスナーがいるというだけで、嬉しいと初めて思えましたし、頑張りたいと改めて思えました。

 プレゼンテーションやグループワークは他の授業やゼミでもありましたが、この授業は課題の難易度やリアリティがまったく違い、求められる視点の広さにも圧倒されました。小田急の社員の方々に提案を直接聞いていただき、フィードバックまでいただけたことは、本当に貴重な経験でした。また、他学部・他学年の学生とチームを組むことも初めてで、同じ大学でも得意なことや考え方がこんなにも違うのかと驚きました。それぞれの視点が交わることで、多様な意見が生まれたのも面白かったです。課題自体も、実現の可能性がある分、本気で調査や検討を重ねる必要があり、難しさとやりがいを同時に感じました。正直、毎週の準備は大変でしたが、他チームからも刺激を受けながら全力で取り組めたことで、大きな達成感を得ることができました。

 社会にはさまざまな課題や工夫があることを知りました。調査を進める中で、実際に小田急OXに足を運んで、働いている方から直接お話を聞く機会がありました。現場で働く方からは、「こうしたほうがいいと思っても経営の観点やお客さんへの影響などいろいろな事情がありすぐには変えられないこともある」と教えていただき、企業活動の難しさを感じました。また、普段何気なく使っている鉄道やお店にも、たくさんの工夫や努力があることに気づきました。地域の人たちの暮らしを支えるために、目に見えないところで多くの人が働いているということを実感しました。社会人の方と直接関わることで、学校の外に出て学ぶことの大切さも感じました。今後も、自分の目で見て話を聞くことを大事にし、身の回りの社会をもっと広い目で見ていきたいです。

 サステナビリティ」とは特別な人だけが取り組むものではなく、私たち一人ひとりが日常の中で考え、行動するべきテーマだと気づきました。「サステナビリティ」は、自分の生活と社会をつなぐ行動であると思います。将来、どんな職業に就くとしても、環境や社会への配慮を忘れず、自分にできることを少しずつ実践していきたいと感じました。身のまわりの小さな選択が、大きな変化につながる可能性があることを実感しました。

 避けられがちなところにどれだけ真面目に取り組めるか。それがこの授業で一番大切だと思います。サステナビリティというのは、今の世の中があまりサステナビリティではないからこそ浸透した言葉だと考えています。そのため、サステナビリティな社会を目指すということは必然的に、今の社会のシステムを変える必要があるということです。どれだけサステナビリティが大事でも、既存のシステムを変えるというのは別問題で、簡単なようで膨大な時間と費用を伴います。例えば、レジ袋が環境にあまりよくないということは周知の事実であり、世界的に見ても日本はプラスチック大国でずっと批判を受けてきましたが、日本のコンビニなどで見られるレジ袋の浸透はすごいものでした。ですが、やっとの思いで最近レジ袋が有料化されました。ここまで至るには、既存の仕組みを変えたり、説得させたり、いろんな大人に迷惑をかける必要があります。これを見据えているから(サステナビリティが大事という以前に)取り組まない人が多いのだと思います。だから、いかに自分がパイオニアになれるか。周りがはじめにくいことを始められるかがこの授業の一番大切な部分だと思います。

ゲスト講師 正木弾様より(小田急電鉄株式会社 デジタル事業創造部課長 WOOMS統轄リーダー)

 「サステナビリティ」は、環境・社会・経済の持続性を意味するため、一個人や一企業は、アプローチしづらい印象をもたれるのではないでしょうか?小田急は、東京・神奈川の地域で事業展開する一事業者ですが、鉄道や街づくりで培ったインフラ運営のノウハウを活かし、最近では循環型社会に必要不可欠な資源・ごみ収集のDX化を目指すビジネスに挑戦しています。これまで培った経験や知見を一度棚卸し、身の丈に合った「できること」から真剣に考えた結果です。本事業では、学生の皆さんが、成城という身近な地域を舞台に、実際に「ごみ」がでる現場に足を運び、関わる人にヒアリングをし、学生ならではの新しいアプローチで「ごみ」をなくすための解決策やその解決に向けた具体的・現実的な進め方を発表していただきました。「サステナビリティ」の実現には多くの課題があり、解決方法が見出されていな事柄も多く残っています。本授業において、将来を担う学生の皆さんが、地球規模の課題を他人ごとにするのではなく、自らできることを考え、発表を聴く人の共感を得る過程で得た経験は、社会に出てからも役立つものだと思います。

 昨今、サステナブルな企業が、商品の購買先としても、就職先としても、投資先としても評価され、また、その担い手となるサステナブル人材が必要とされています(村上2021) 5)。企業ではSDGs6)を達成するためのESG経営7)が推進され、また、人々も単に利益のためだけでなく、自らの貢献が社会にどのようにインパクトを与えるか考えながら仕事をする時代となりました。本科目では小田急に協力をいただき、このようなグリーンガイダンス8)が実現しました9)

注)
1)成城大学のキャリア教育 Seijo Career Program(SCP)
https://www.seijo.ac.jp/career/news/cvt4qu000000h94b.html

2) 2025年度「キャリア・プラクティスⅣ〈サステナビリティ〉」シラバス
https://lc.seijo.ac.jp/lcu-web/SC_06001B00_22/referenceDirect?subjectID=202700695709&formatCD=1

3)小田急のサステナビリティ(経営ビジョンとESG) https://www.odakyu.jp/sustainability/
4)WOOMS(資源・廃棄物の収集・運搬・排出作業の効率化と資源循環を高めるサービス) https://www.wooms.jp/

5) 村上芽(2021)「サステナビリティ人材を育成する」JRIレビュー ,日本総合研究所10, 94, pp.114-126

6) SDGs(Sustainable Development Goals):持続可能な開発目標

7)ESG(Environment Social Governance):環境・社会・企業統治を考慮した投資活動や経営・事業活動

8)グリーンガイダンス:下村英雄・高野慎太郎(2022)「グリーンガイダンス -環境の時代における社会正義のキャリア教育論-」『キャリア教育研究』日本キャリア教育学会40,2 pp.45-55

9)勝又あずさ(2024)「小田急電鉄との連携によるプロジェクト型サステナビリティ教育の実践」『成城大学共通教育論集』(16), pp.37-66
https://seijo.repo.nii.ac.jp/records/2000209

文責・撮影・科目担当者 勝又あずさ(成城大学 キャリアセンター)