成城大学

成城大学

Twitter FaceBook instagram YouTube LINE note
CONTACT EN

中野 智世 教授「ヨーロッパの歴史特殊講義Ⅰb(独)」

歴史理解のための工夫満載の手作りレジュメと
丁寧なフィードバックが学生の学習意欲を高める!

中野 智世 教授「ヨーロッパの歴史特殊講義Ⅰb(独)」

教員基本情報

氏 名 :中野 智世(なかの ともよ)

所 属 :文芸学部

職 名 :教授

専門分野:ドイツ史

授業概要

対象者  :文芸学部・経済学部2~4年生

授業形態 :講義

単位数  :2単位

曜日・時限:月曜日・3時限

履修者数 :61名

  • 【特に活用しているツール】
    ・紙媒体の資料(ホッチキス止め)
    ・プロジェクター
    ・リアクションペーパー

  • 【授業運営のキーワード】
    ①講義レジュメ
    ②リアクションペーパー
    ③フィードバック

【授業時間外の学習】(シラバスより抜粋)
講義前には、ガイダンスで紹介する入門文献の該当箇所に目を通して概要を掴んでおくこと。講義終了後には、レジュメとノート、資料を見直して内容を復習すると同時に、講義内で紹介した参考文献にできる限り目を通し、復習に役立てること。
想定学修時間:1回の授業につき、予習・復習それぞれ2時間程度。

【成績評価の基準と方法】(シラバスより抜粋)
平常点(授業への参加度等)50%
定期試験に代わるレポート50%

授業内容(シラバスより抜粋)

 第二次世界大戦の終結(1945)から現代までのドイツの歴史を学びます。東西冷戦とその終焉、ヨーロッパ統合から脱原発まで、20 世紀後半の時代を特徴づける大きな出来事には、いずれもドイツが大きくかかわっていました。本講義では、ドイツの歴史を切り口として20 世紀という時代を理解し、21 世紀の現在、私たちが今どのような時代を生きているのか、現代社会の立ち位置を確認するとともに、ドイツを参照軸として現代日本における課題も考えていきたいと思います。

到達目標(シラバスより抜粋)

 20世紀後半以降のドイツ史についての基礎的知識を修得するとともに、ドイツを中心とする現代ヨーロッパ世界の成り立ちを歴史的に理解し、説明できるようになること。

取材当日の授業の様子(12月4日)


 まずは、レジュメとリアクションペーパーが配布され授業開始。この日のテーマは【揺らぐ東ドイツ~ 1970/80 年代】。
 配布されるレジュメは、その日の授業のあらすじと毎回のテーマに沿った資料からなる。最後のページには前回授業で提出されたリアクションペーパーのうち20件ほどがセレクトされて掲載されている。
 授業は大きく3つのブロックに分けられていて、まずは前回授業のリアクションペーパーへのフィードバックからスタート!毎回、先生が興味深い意見をコメント付きで紹介したり、質問に回答したりする。
 学生の手書きのコメントからも授業内容に対するリアクションが垣間見えるので、あえて打ちかえずそのまま載せているのだそう。
 フィードバックが終わると、次は本日のテーマを様々な写真や動画、歴史的な資料を交えて解説していくメインパートだ。この日は1970/80年代の東ドイツを「1. 東ドイツのジレンマ」「2. 体制のほころび」「3. 反対派運動の活発化」の3 つのブロックに分けて説明。
 冒頭に「今日の3枚」として、解説する時代を象徴する写真を3枚提示し、本日の授業で扱う時代の大きな流れを確認してから、具体的な事例を交えた解説がおこなわれる。それぞれのブロックに写真や画像資料を配置し、文字だけでなく視覚情報と合わせて、対象となっている時代背景の解像度を上げていく仕掛けとなっている。もちろん、より高度な歴史理解へと導くために、写真だけではなく当時の人々の声を伝える史料や専門書からの情報も適宜加えていく。
 学生の集中力が途切れそうな時間帯になると短めの動画を再生することで学生の気分をリセットするなどの工夫も。この授業回では、ベルリンのDDR(東ドイツ)博物館がYouTube で公開している博物館紹介動画「東ドイツの日常生活-Alltag in del DDR」の一部を鑑賞した。解説パートの最後には必ず、「今日のおすすめ」としていくつかの書籍が紹介される。エッセーからかなり難解な専門書まで幅広く授業で解説をした時代背景に触れることができる書籍を選び、授業後も何らかの形で学生がその時代について触れるきっかけを作るようにしているのだそう。
 最後に先生がこの授業の最も重要な取組であると考えているリアクションペーパー記入のパートに突入。毎回、しっかりと時間を取って、学生たちに授業で得た知識や情報について考えさせる時間を取るようにしている。毎回の「お題」は、知識や理解の程度を問うのではなく、各自の解釈や評価を問うように工夫している。学生たちは与えられた「お題」を切り口にして、じっくりとその日の授業内容を思い返しながら、各自の視点で熱心にコメントを書き込んでいる、その姿が印象的な授業であった。

教員インタビュー(Q&A)

Q.授業準備の詳細について教えてください。


A. 1. 資料の準備(投影用、配布用)、資料は一日前にWebClassにアップ
2. 前回のリアクションペーパーをまとめたフィードバックの準備
3. 講義の脳内シミュレーション

Q. 授業のポイントを教えてください。

A. 各授業のポイントは、知識の伝達よりも受講生がそこから何かを考えることにある。つまり、一番重要なのは受講生によるリアクションペーパーへの取り組み。

Q. 学生への期待を教えてください。

A. じっくり考える力、多角的に物事を見る力、自分の意見を整理し言葉にする力、自分にとって面白そうなものを見逃さない力、軌道修正する・考え直す・やり直す力、簡単に答えを出さない力、等々・・の力をつけるきっかけになればと思っています。加えて、歴史的に物事を見る力、空を飛ぶ鳥と地面を這う蟻(虫)、両方の視点から物事を見る力などを養えるといいですね。

講義構成・内容における留意点
・ その⽇のテーマをしぼり、情報を盛り込み過ぎない。
・ 細かな事実より、全体を理解する解釈枠組みを提⽰する。
・ 問いの投げかけを重視し、型にはまった答えは出さない。
・ 事象の理解を促す⾝近なテーマ選び、切り⼝を⼯夫する(資料、映像)。
・ なるべく⾃由に考えを書けるよう、リアクションペーパーの課題を⼯夫する。
・ リアクションペーパーのフィードバックを丁寧に行う。

学生インタビュー(Q&A)

Q. 印象に残っている授業内容はありますか?

A. 東ドイツの民衆についての授業は印象に残りました。これらの授業で東ドイツのイメージがぐるりと変わった。

A. 1960年代の西ドイツでの学生運動について、社会問題についてデモなどで死者が出るほどのプラカードを持った学生たちが「ベトナム戦争反対、農薬使うな」と訴える写真が多く資料に用いられ印象的だった。何事も主体的に、自らの手で国を変えるドイツ流のスタイルはこの時代が始まりだということがわかった。

Q. この授業のよいところはどんなところですか?

A. ドイツの近現代史を蟻の目から、つまり、その時代を生きた人々の目線から見ることができるところ。

A. ドイツの現代史について様々な角度から分かりやすく、かつ詳しく説明してくれる所。レジュメ末の前回のコメントは学生の様々な意見が集まり興味深いです。

A. 歴史を学ぶ上で必要となる当時の写真や資料を用い、まるでその時代にタイムスリップしたかのような講義である。ちゃんと質問に解答してくれる。なかなか学生のコメントペーパーに対し、しっかりと時間をとってフィードバックをしてくれる先生はいない。

インタビューは3名の学生さんに回答いただきました。