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鋤本 豊博 教授「刑法Ⅰ(概論及び犯罪成立要件)」

Question(予習)と講義と課題(復習)がセットとなり、学生の理解度の定着を図る

鋤本 豊博 教授「刑法Ⅰ(概論及び犯罪成立要件)」

教員基本情報

氏 名 :鋤本 豊博(すきもと とよひろ)

所 属 :法学部

職 名 :教授

専門分野:人文・社会/刑事法学

授業概要

対象者  :法学部1~4年生

授業形態 :講義

単位数  :4単位

曜日・時限:月曜日・5時限

履修者数 :141 名

 

  • 【特に活用しているツール】
    ・Web Class
    ・YouTube

  • 【授業運営のキーワード】
    ①Question
    ②課題問題と解答送信
    ③専門知識のビジュアル的説明

【授業時間外の学習】
予習段階ではテキストを精読し、WebClass上に掲示するQuestionに取り組み、独力で理解できる部分とそうでない部分を意識した状態で講義に臨むこと。
復習段階では、理解できた限度でQuestionの解答例を作成するとともに課題問題に取り組み、解答を送信すること。

【成績評価の基準と方法】
前期課題問題 30%、後期課題問題 20%、後期定期試験 50%

授業内容


 講義では、刑法全体を理解する上で必要な体系的基礎知識を伝授することから始め、その後、分野を限定して本論的な講義が行われる。令和4年度は構成要件論・違法論を扱っている。
 刑法学の扱う問題は複雑かつ多岐にわたり、注目すべき判例の数も膨大であるため、初めて学ぶ者にとっては理解の困難さを感じるが、問題の核心を明確にしたうえで、メリハリのある説明と学理的な検討により、体系的基礎知識がダイナミックにつながっていく感覚を実感してもらいたい。

到達目標(シラバスより抜粋)

 刑法学における基本概念や判例・学説の基本的な考え方を用いて、犯罪現象に対し然るべき分析と評価を論理的に展開できる「体系的な思考回路」の形成を目的とする。

取材当日の授業の様子(10月17日)

 本日のテーマである「因果関係論」について講義が行われ、スクリーンに投影しているスライドに基づいて講義が進められていた。ここで印象的であったことは、投影しているスライドが、解説している先生の姿とともにオンラインツールのZoomに接続され、録画されている点であった。鋤本先生に伺ったところ、対面授業に出席できなかった学生向けに、また講義に出席していた学生の復習用にZoom録画を活用していることが分かった。


 もう一つ、授業の中で印象的であったことは、投影しているスライドの文字が、赤、青、緑など、カラフルに明記されている(※③)点であった。その理由については、スライドの説明文を、項目(青色)、みだし(茶色)、専門用語(紫色)、問題の所在(オレンジ色)、判例の論旨(緑色)、ポイント(赤色)、キーワード・キーセンテンス(ゴシック)に色別することで、情報の種別と視覚を利用した整理を心掛けた結果、このような形になったとのことであった。
 講義では、学生たちがテキストを精読して予習として取り組むQuestionについて、その解説を中心に行う(※①)流れとなっていた。暗記ではなく、刑法学的な思考を促さんがため、Question の解答例は掲載せずに、一つひとつの解答を丁寧に説明することで、学生各自で解答の作成をするように指導されていた。そのため、他の文献等を紹介したり、重要な点は繰り返し説明を行ったり、本日のテーマである「因果関係論」における論点に関する学説の違いを説明し、「この事例ではA説によると因果関係は認められるのか、B説ではどうか?」などの質問を投げかけたりするなど、学生が具体例をイメージし、しっかり自分で解答できるようになるため、時間をかけつつ説明を行っていた。片や、学生たちは、自分のスマホ等に映し出されたスライドを見ながら、熱心にノートをとっていた。

教員インタビュー(Q&A)

Q.授業のポイントを教えてください。

A. 「 学びの基本は自学自習にある」ので、次のような流れとなる。

①事前にWebClass上に掲載されるQuestionにつき、基本書を精読して解答を想定し、不明箇所を意識して授業に臨む。

②講義を聴きながら不明箇所の解明に努める。

③YouTubeの録画講義を視聴したり他の文献を調べてQuestionの解答を作成する。

WebClassを介して期限までに課題問題の解答を送信する。(※②)

⑤期限後開示される解答例を添削し理解の定着を図る。

なお、

⑥WebClassを介した質問はいつでも可能である。

Q. 授業準備の詳細を教えてください。

A. 講義用のスライド作りでは、どのようなQuestion を設定し、どのような情報を記載するかに工夫を重ねている。その記載内容は、
①各テーマにおける基本から最先端の情報を圧縮し、図表の活用と色分けで情報の整理とビジュアル化を図るほか、②実際の判例事案を具体例として挙げ、判例の結論に至る論理を示す一方、③学説は、判例との対比で重要なものだけに止めている。
 毎回講義後に取り組んでもらう課題問題は、司法試験・司法書士試験・公務員試験等の基本問題を題材にして出題している。自動採点をするため、チェック方式(選択肢から一つとは限らない正解にチェックを入れる)を採用し、解答期限後に解説を配信している。

Q. 学生への期待を教えてください。

A. 教員が学生に提供できるのは、自ら考えた末に整理された専門知識とその根底にある本質を、記憶に定着しやすく、かつ効果的に活用できるように伝授することだけであり、実際に学生がそれを受け止め、自己の思考を展開する基盤にできるかは、もっぱら学生自身の主体性に委ねられている。絶対的な正解はない問題にそれなりの解決を見出すため、専門知識を自らの知恵に昇華できるよう懸命に取り組んで戴きたい。
 もう一つ心得ておいてもらいたいのは、バイアスのない情報はあり得ないということである。客観的な事象は存在するとしても、これを人に伝えようとすると不可避的に伝達者の主観が入り込み、歪められてしまうので、教員の発する情報であっても必ず疑い、自ら検証しなければならないのである。

学生インタビュー(Q&A)

Q. 印象に残っている授業内容はありますか?

A. 「未遂」というテーマの授業が難しかったです。他の判例を自分自身で正しく判断できるかどうか自信がないので、いまでも印象に残っています。授業全体に言えることですが、判例の表記が少し違うと、答えが大きく違ってしまいます。Questionと課題問題は、授業を聞いた時の感覚のみで解答すると間違えるので、複数ある選択肢を自分で構成要件に当てはめて判断しています。授業中のレジュメと自分のメモが解答に役立っています。

Q. この授業のよいところはどんなところですか?

A. スライド資料の文字が色分けされていて、視覚的に理解できるのでありがたいです!文字の色の意味は、初回授業のガイダンスで説明してくれますよ。

A. 毎回の課題であるQuestionについて、次の授業で先生が解説してくれます。自己採点を行い、授業で解説を確認することで理解が深まっていると感じています。ほんの少しの言い回しで解答を間違えたりするので、しっかり講義を聞いています!

A. 授業全体が難しく、スピードが速いですが、対面授業では先生の話を聞きながらメモを取り、あらためてオンデマンド授業で勉強できるので、自分の理解度を深めることができるところです。

合計3名の学生さんに回答いただきました。