三枝 大修 准教授「外国文化Ⅲa〈19世紀フランス文化の諸相— バルザックの小説「ゴプセック」を入り口に〉」
※2016 年度以前入学者対象「外国文化ⅢA」と合併
多種多様な画像資料とOneNote、Zoomを活用した講義形式のリアルタイム授業
氏 名 :三枝 大修(さいぐさ ひろのぶ)
所 属 :経済学部
職 名 :准教授
専門分野:フランス語、フランス文学
対象者 :経済学部1~4年生、文芸学部・法学部2~4年生
授業形態:講義
実施学期:2020年度前期
実施方法:Zoomを活用したリアルタイム授業(一部、オンデマンド授業を実施)
履修者数:26 名
※ページ内のpoint!は授業のポイントです
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授業内容・目的と授業の進め方
【授業の内容】
文豪オノレ・ド・バルザックの中編小説「ゴプセック」を糸口に、19世紀フランス文化の様々な側面を学ぶ授業である。 フランスの小説家。近代リアリズム小説の代表者。フランス社会のあらゆる階層の人物が登場する約90編の小説に「人間喜劇」の総題をつけている。[1799~1850]
人物説明
オノレ・ド・バルザック
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【授業の目的】
授業の目的は、近代フランス文化について豊富な知識を身につけ、それを自分の言葉で説明できるようになること、200年近く前に遠い異国で書かれた小説を充分に味わって読めるようになること、また、授業時に課されるコメント等の作成を通じて論理的な文章が書けるようになることである。
【授業の方法】
前期はすべて遠隔授業。全12回のうち、第4回が筆記試験(「教科書」として指定している小説を読破しているかの確認テスト)、第5回と第11回がオンデマンド、その他は全てZoomでのリアルタイムで行われ、オンデマンドでもリアルタイムでも、ほぼ同様に以下の流れで実施されている。また、扱われるテーマによって、適宜、Google Classroom経由で資料(絵画や写真、動画等)やハンドアウトを配付している。
2020年6月18日のリアルタイム授業は、以下の流れで進められた。
授業の冒頭、教員からの呼びかけに反応するよう促したり、画面共有がされているかを確認するなど、画面越しに受講生にこまめに話しかけていた。授業中には、絵画や写真など多くの画像資料を交えて説明が行われ、ポイントとなる箇所にはペンの色を使い分けてその場でOneNoteに書き込みがなされるなど、受講生を飽きさせない工夫が凝らされていた【資料①〜③】。
資料①
資料②
ガヴァルニの描いた代訴人と弁護士
資料③
また、7月16日のオンデマンド授業では2つの動画が公開され、前半の動画(25分程度)は、前回授業の振り返り、バルザックとファッションとのつながり【資料④】や、19世紀フランスの男性ファッション【資料⑤】についての内容で、後半の動画(55分程度)は、19世紀フランスの女性ファッション【資料⑥】について、19世紀を1800〜1810年代、1820〜1830年代、1840〜1860年代、1870〜1880年代の4つの時期に分けて授業が進められていた。いずれの動画も、絵画や版画、写真など多くの画像資料を用いて説明がなされ、教員のゆったりとした口調で丁寧に説明がなされていたことが印象的だった。
資料④
資料⑤
資料⑥
※資料は全て、授業スライドより抜粋
教員インタビュー(Q&A)
Q.授業のポイントを教えてください。
A. コロナ禍の特殊な状況に鑑み、今年度の授業では「履修者の負担を軽くすること」に注力しました。もちろんシラバス通りに試験は実施し、必要十分な量の課題も出していますが、その大半は授業時間内に終えられる規模のものとし、あとは基本的にはのんびりと、Zoom での講義を聴きながら、各自の興味・関心に合わせてフランス文化を楽しんでもらえればいい、と考えていました。とりわけ混乱必至の1年生にとって、大学での学修が「苦役」と化してしまってはいけない、と。遠隔授業での資料提示用ツールとしてはOneNote が使いやすく、重宝したのですが、これは同僚の先生からご教示いただいたやり方であり、感謝しています。また、私は2019 年度に研修でフランスに滞在しており、そのときに撮りためた写真や収集した資料をこの授業でさっそく活用できたのは幸いでした。なお、授業の出席については、リアルタイムの回にはチャットで出欠を確認し、オンデマンドの回には小さな課題の提出の有無で出席(=授業資料の視聴)を確認しました。
Q. 学生への期待を教えてください。
A. エピキュリアンたれ、と言いたい誘惑にかられます。その時々にアクセスできそうなものに手を伸ばし、思う存分、楽しんでください。恋に食事に旅行にファッション、漫画に美術にダンスにスポーツ、映画にゲームに読書に音楽…。まだまだあるでしょう。メジャーなものでもマイナーなものでもいい、古いものでも新しいものでもいい、人がこれまでに築き上げてきたものの総体、それが「文化」です。大学の授業では、幸か不幸か、わずかにその一端に触れるのが関の山ですから、単位を修得して、そこからがむしろ本番なのかもしれません。好きなだけ勉強してください。耽溺してください。エピキュリアンと勉強家とは、案外、同じ1枚のコインの裏表なのです。
学生インタビュー(Q&A)
Q. この授業を履修したきっかけは何ですか?
A. 以前から、フランスが「芸術の街」「ファッションの都」と呼ばれるに至るまでの、その歴史を知りたいと思っていたところ、それにぴったりな授業内容だったからです。
A. フランス文化、特に、フランスのファッションに興味があったからです。
A. 「フランス人は洋服を10着しか持たない」ということを聞いたことがあり、フランスに興味を持っていました。また、今まで海外の歴史について学んだことがなかったので、この授業で学んでみたいと思ったからです。
Q. 印象に残っている授業内容はありますか?
A. 履修の決め手でもあった、「19世紀フランスのファッション」です。当時、今のファッション雑誌の役割を担っていた「ファッション・プレート」というものがあったことを初めて知り、19世紀にも「トレンドを作るもの・発信するもの・追うもの」があったことに感動しました。
A. 実際に読んだ小説(教科書)に関する確認テストの解説です。現在とは異なる、200年近く前のフランス文化について、小説の内容だけではなく、関連する様々な知識も得ることができました。
A. フランスの洋服についての授業です。お洒落で可愛い洋服のデザインよりもフランス人の美意識の高さに驚かされました(例えば、コルセットというと今では腰に負担を抱えている人が装着するというイメージですが、昔のフランス人はいかに腰を細く見せるかを考えてコルセットをしていたそうです)。私も見習って美意識を高めようと思わされました。
Q. この授業のよいところはどんなところですか?
A. 先生が実際にフランスで撮影した写真や、絵画、地図など、たくさんの資料を利用して視覚的に分かりやすく解説してくださるところです。視覚による理解が記憶に残りやすいということも実感しました。
Q.先生へのメッセージをお願いします!
A. 小説の、ほんの少しの情景・状況・心理の描写から、当時のトレンドやライフスタイル、考え方など、これほど多くの情報が得られるのか、と毎回驚いています。読書は苦手でしたが、先生から読書の新たな楽しみ方を教えていただいたように思います!
A. 毎回、解説のトピックが興味深く、また、たくさんの資料を準備してくださり、ありがとうございます!
A. 授業中のOneNote がとても端的に書かれているので、難しいところもよく理解できました。また、普段、自分では手に取らないような本を紹介してくださることで幅広い知識が身につきました。この授業で得たフランスの知識を生かして、今後様々なことを学んでいきたいと思います!
※インタビューは3名の学生にご協力いただきました。
授業の流れ
①Zoom のチャット機能で出席をとる。
②前回授業の振り返りを行う。
③バルザックの小説「ゴプセック」(履修者は全員既読)の内容とリンクさせながら、19 世紀フランス文化について、OneNoteを見せながら講義する。
④区切りのよいところで、1回、5分程度の休憩をとる。
⑤授業終了時刻まで、講義の続き(休憩の前後で話題を変える)を行う。
用語解説
OneNote
OneNote とは、米マイクロソフト(Microsoft)社のメモ作成・編集ソフトウェア。紙のノートを模した文書ファイル上に、文字や図表、写真、動画などを自由なレイアウトや書式で取り込んで記録しておくことができる。書き込まれた情報は検索することができ、複数人で共有して共同でノートを作成することもできる。