塩沢 一平 非常勤講師 「WRD4 (猿を鬼退治から救おう!テレビショッピングを超えよう!—新たな企画を書く技術・プレゼンする技術—)」
「Write書く、Read読む、Debate議論する」の頭文字をとったものであり、どの学問においても土台となるこれらの行為を実践的に訓練する授業科目である。用語解説
WRD(ワードと読む)
理論と実践で学ぶ新たな企画を書く技術・プレゼンする技術
氏 名:塩沢 一平(しおざわ いっぺい)
職 名:非常勤講師(二松學舍大学 文学部国文学科 教授)
専門分野:古代和歌・歌謡論、歌謡曲・J-POP論
対象者:経済学部・法学部・社会イノベーション学部 1~4年生
授業形態:演習
実施学期:2017年度通年
履修者数:25名
※ページ内のpoint!は授業のポイントです
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授業内容と取材当日の授業状況について
本授業は、全学共通教育科目として、経済学部・法学部・社会イノベーション学部の1~4年生を対象に開講されている。本年度の履修者はすべて1年生である。この授業での到達目標は、大学の中で、また現代を生きる市民として最も重要な、自ら学び・情報を集め・新たな発想力で考えることができるようになること、また、それを説得力ある企画・レポート・小論文で表現し、プレゼンする基礎的な能力を持つことができるようになることである。 全学共通教育科目「WRD」における成果発表の場。2009年度から開催され、今年度で9回を数える。決められたお題から自由に発想してテーマを設定し、10~15分程度のプレゼンテーションで競う。今回のお題は、(創立100周年という節目の年にちなんで)「立つ」とされた。
前期の授業では、まず情報を集めて考えることからはじめ、それをもとにしながら、論理的で説得力ある企画書を書く技術をしっかりと身につける。後期は、その企画をプレゼンして、説得し成功に導く話す技術を身につけるとともに、12月に行われる「 WRDプレゼンテーションコンテスト 」(以下、「コンテスト」という。)における発表に向けた準備を行う。
用語解説
WRDプレゼンテーションコンテスト
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10月17日の授業
この日の授業は、宿題の確認から始まった。今年のコンテストのお題は「立つ」ということで、「立つ」で思い浮かぶ発表テーマを考えてくるというのが宿題だった。学生たちは、4人のグループになり、各人で考えた「顔が立つ」「一本立ち」・・・などのテーマ案を述べ合い、活発に意見を交わしていた。
つづいて、企業のプレゼンテーション事例として、D社掃除機の広告動画を視聴し、その後、広告の「良い点」「悪い点」「気づいた点」についてグループ毎にディスカッションを行った。その間、先生はタイミングを見て、「皆さんが社会に出てプレゼンをするときは、企画を通すことが目的になるので、そういう観点から考えてみてください。」「自分が気づかなかった他人の意見はメモを取るように。」などと指示を出し、各グループを回りながら、質問を受けたり、議論を促したりしていた。
ディスカッションの後は、まず、「企画提案型プレゼンテーションの作成を通じて、論理的に思考する力と、それを発表するコミュニケーション能力を養う」という本日の講義の目的が述べられ、その後、企画提案のポイント等について、具体的な例を交えながら、講義が行われた。
11月14日の授業
本授業は、過去の履修者とのつながりが強いことも特徴である。この日は、2年前にこの授業を履修した上級生が訪ねて来てくれ、コンテストに向けた準備の進め方やパワーポイントのスライドを効果的に見せるコツなどについてアドバイスをしてくれた。学生たちは、先輩の助言に熱心に耳を傾け、多くの質問をぶつけていた。
12月12日の授業
この日は、クラス内プレゼンテーションだった。3つのチームが、15分の発表、質疑応答10分をそれぞれ行い、最後には、先生とTA(ティーチング・アシスタント)の審査により代表チームが選出された。
12月16日プレゼンテーションコンテスト当日
コンテストには6クラス6チームが出場し、この授業の代表チーム「STANDING EATERS」は「立ち食いサービス」をテーマとして3番目に発表を行った。本チームのプレゼンテーションのスライドはポイントよくまとめられており、時折、会場へ質問を投げかけたりするなど発表のしかたにも工夫がみられた。審査の結果、見事優勝を勝ち取った(優勝は2チームとなった)。
1月9日の授業
この日は、コンテストおよび一年間の授業のリフレクション(振り返り)が行われた。授業終了後には、引き続き昼食会が開催され、一年間の授業で活躍した学生には、先生手作りの賞状が授与された。
教員インタビュー(Q&A)
Q. 授業のポイントを教えてください。
A. この授業のポイントは、2つあります。1つは、ジェネリックスキルを学生に身につけさせることです。大学の教員は、専門的な知識を教えたがりますが、社会はそれほど専門性を求めていません。どんな職業に就いても活躍できるような汎用的な資質・能力を育成したいと考えています。もう1つは、成城大学は広範な教養を持った人材を育てる伝統がありますので、本授業もそれに寄与できるような内容にするよう努めています。
Q. 授業で工夫されていることはありますか?
A. 授業では、3つのことを心掛けています。
①できるだけ話し合いの時間を持つ
履修者が1年生なので、仲間づくりのために、話し合いの時間を多く持っています。前期に学生同士の関係が緊密になると、後期のプレゼンテーションについてのグループの議論がうまく行きます。
②宿題を2回に1回の頻度で出す
授業時間以外に勉強をする習慣を身につけてもらうためです。
③TAに深く関与してもらう
学生は少し上の年齢の人には、話しかけやすいようです。お兄さん・お姉さん的な存在であるTAには、学習面や学生生活に関するいろいろな相談に乗ってもらっているようです。
学生インタビュー(Q&A)
Q. この授業のよいところは?
A. ディスカッションは、毎回楽しかったです。面白いテーマを先生が提供してくれて、皆で考えたり、話し合ったりすることが、とてもためになりました。先生は、「その意見は面白いなぁ」などとコメントしてくれ、話をしやすい雰囲気も作り出してくれました。
A. 異なる学部の人たちと議論をすることで、いろいろな考えがあるのを知ることができました。
Q. 印象に残った回はありますか?
A. 「外に繰り出して聞いてみよう」の回が楽しかったです。桃太郎の2番の歌詞がどうだったか、グループに分かれて、学内に居る学生にアンケートを行いました。アンケート結果から正しい歌詞を導き出そうとしてみましたが、実際の歌詞は全然違っていました。講義では、情報収集や統計データを読む際の注意点を学びましたが、実際の体験として学習できました。
Q. 履修前後で何か変化はありましたか?
A. レポートの書き方をきちんと学ぶことができました。レポートは、先生とTAの方が添削をして返却してくれました。
A. 先生は、「情報の質」にこだわり、繰り返し、その重要性について教えてくれました。前期の授業では、インターネットでの情報の調べ方や図書館での文献の検索方法などについての実習もありました。このおかげで、プレゼンテーションコンテストでは、他のチームがインターネットの情報を主に利用していましたが、私たちは書籍も多く調べて、説得力のある発表ができたと思います。また、先生は「実際にやってみる」ことの大切さも幾度となく教えてくれましたので、コンテストの発表にあたり、立ち食いのお店に出かけてスタッフの方の話を直接聞いてみたり、原価率を求めるために、実際にかき氷を作ってみたりしました(コンテストの発表では、最後に立ち食いのかき氷屋というアイデアを提案した)。
演習の流れ
①宿題の確認とディスカッション〈30分〉
②企業のプレゼンテーション事例の視聴とディスカッション〈25分〉
③講義(企画提案の手法を学ぶ)〈35分〉