海老島 均 教授 「現代社会とスポーツ ~グローバルなスポーツ文化に関して理解を深めよう!」
— 映像とコメントシートを活用し、スポーツを通して現代社会を学ぶ授業 —
氏 名:海老島 均(えびしま ひとし)
所 属:経済学部
職 名:教授
専門分野:スポーツ社会学、スポーツ文化論
対象者:経済学部1~4年生、文芸・法学部2~4年生
授業形態:講義
実施学期:2017 年度前期
履修者数:225 名
※ページ内のpoint!は授業のポイントです
※黄色にハイライトされた用語はクリックで用語説明が表示されます
授業内容と取材当日の授業状況について
現代はスポーツの時代とも言われるが、政治的、また経済的にスポーツがこれだけ重要性を有した時代はかつてなく、グローバル化という現代社会の特徴を検証するうえでも、スポーツは数々の具体例を提示している。こうした現代社会とスポーツの関係性に関して、政治、経済、サブカルチャー等、様々な観点から考えるのが、本授業である。授業は、文献資料およびDVDやスライド映像資料を用いて講義形式を中心に進められ、グループワーク等を用いたインタラクティブな内容も取り入れられている。
取材当日(2017年7月5日)の授業は、以下の流れで進められた。
授業のはじめに、人種差別に関する新聞記事、「人種と階級、スポーツを通しての分断と融合」と題するパワーポイント資料、コメントシートが配付された。
導入講義では、パワーポイントのスライドをスクリーンに映しながら、スポーツでも人種差別が根深いこと、また、スポーツによる人種のステレオタイプ化という内容について解説が行われた。
つづいて、先生から学生に対し、「メディアを通じたスポーツのステレオタイプ化」というテーマで、自分の意見や疑問に思うことなどをコメントシートに記入するように、また、考えがうまくまとまらない場合などは、周りの人と意見交換を行うよう指示が出された。その間、先生は、教室を回りながら、学生からの質問を受けたり、グループでの話し合いを促したりしていた。
つぎに、本日の授業のメインである「人種と階級、スポーツを通しての分断と融合」というテーマに移り、1つのスポーツが1つの国を変えた事例として、『インビクタス/負けざる者たち』(Invictus)のビデオを視聴する。先生は、時折ビデオを止め、当時の時代背景やセリフの意味するところなど、解説を行っていた。
ビデオを見た後は、まとめとして、「階級とは何か」「スポーツと階級」「日本には階級はないのか?」「階級文化の再生産の場としての教育」などについての講義が行われた。
教員インタビュー(Q&A)
Q.授業のポイントを教えてください。
A. 現代社会ではグローバル化が進んでいますが、国内で感じているグローバル化と海外でのそれとは随分違いますので、その温度差や差異を学生に伝えるようにしています。例えば、ドーピングは、日本では絶対悪とされていますが、海外においては、特にスポーツビジネスの観点からは、必要悪として捉えられていることもあります。
研究で海外に行く機会もあるので、学会等で手に入れた貴重な映像資料を授業で活用しています。日本語の字幕はついていませんが、その内容に私が翻訳や解説を加えるものの、学生ができるだけ自分でメッセージを読み取ってくれることを願っています。
Q. コメントシートをどのように活用しているか教えてください。
A. コメントシートには、例えば「スポーツと暴力」「スポーツとグローバル化」「ドーピング」などの特定のテーマについて記入してもらいます。また、授業内容に関しての疑問点や意見も受け付けています。学生は授業内容に触発されていろいろな質問を出してくれ、次の回の授業で補足説明を行います。学生からの質問やコメントは、私が気づかなかったような、とても面白い観点を教えてくれることもあります。
Q. 成績評価はどのようにおこないますか?
A. リアクションペーパーや発言等、授業への参加度を60%、提出課題(レポート)および実践課題を40%として成績を評価しています。
Q. 学生への期待を教えてください。
A. スポーツは身近な話題でありながら、学術的により深く学ぶこともできるものです。この授業をきっかけにして、主体的に多くのことを学んでください。
学生インタビュー(Q&A)
Q. この授業を履修したきっかけは何ですか?
A. 1~3年生の時は体育実技を履修していましたが、4年生になってスポーツについて学問的に深く学んでみようと思って履修しました。
A. 友人の勧めです。スポーツに関する貴重な映像をたくさん見ることができ、とても楽しく為になる授業だと聞きました。実際に授業を受けてみて、スポーツ選手のインタビューなど、自分ではなかなか見ることができない映像を視聴することができました。
Q. コメントシートにはどのようなことを書くのですか?
A. 授業で取り上げた事例について、自分の経験や考えを述べたり、分からなかった点などを書いたりします。他の授業では、絞られたテーマについて書かせるものが多いのですが、この授業では自分の興味に沿っていろいろなことを書いてよいというのが特徴です。コメントシートは、授業の途中で何回か書くよう指示が出されます。翌週の授業では、先生からフィードバックがあります。
A. 「以前、自分がやってたスポーツで、このような経験はありませんでしたか?」というテーマでコメントシートを書くことがあります。振り返って見ると、確かにそのような経験をしたということが結構あります。ジェンダーという視点から、小さいころにやっていたスポーツについて考えたこともありました。
Q. 印象に残った回はありますか?
A. ドーピングについての授業は、とても印象に残っています。ドーピング検査の厳しさや、そのことで悩んでいる選手が多くいるということを知りました。選手ががん治療のために薬を使わないといけないが、そうするとドーピング検査にひっかかってしまうというケースもあったようで、確かに公平性を保つ意味では正しいのかもしれませんが、人道的な観点からはどうなのだろうか、と深く考えさせられました。ドーピングについては、自分でもっと調べたいと思い、日本アンチ・ドーピング機構の取組みや未成年者への啓蒙活動などを調査しています。
A. 今日の『インビクタス/負けざる者たち』を見た授業です。映画が感動的でしたが、先生からの解説で、当時の南アフリカの人種差別の状況や歴史的背景、また、スポーツが人種を分断することもあるし、逆に融合することもあるということなど、深く学ぶことができました。
Q. 他の学生へのメッセージがあれば教えてください。
A. 体育会に所属していたり、スポーツをやっていた人が受けると、とても楽しく、さらに視野が広がると思いますので、ぜひ履修してみてください。
講義の流れ
①導入講義〈20分〉
②グループディスカッションとコメントシートの記入〈5分〉
③ビデオ〈30分〉 ※時折ビデオを止め、教員からの解説
④講義(まとめ)〈30分〉
⑤コメントシートの記入と提出〈5分〉