上田 晋一 教授 「財務会計論」
— 講義+確認クイズで学修意欲を高める授業 —
氏 名:上田 晋一(うえだ しんいち)
所 属:経済学部 経営学科
職 名:教授
専門分野:財務会計論
対象者:2〜4年次(経済学部)
授業形態:講義
実施学期:2016年度通年
履修者数:187名
※ページ内のpoint!は授業のポイントです
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授業内容と取材当日の授業状況について
本授業は、学生が会計ルールの意義を理解し、財務諸表を読み解けるようになることを目的としており、到達目標としては、第一に財務諸表に記載されている科目、数値、注記の意味を理解できるようになること、第二に規則だけではなくセオリーを学ぶことを通して企業会計の様々な問題を自力で「考察」できるようになること、である。
授業の主な進め方は、90 分間のうち50 分程度はパワーポイントを使った講義形式、残りの約40 分は確認クイズを解く演習形式で進められていた。
教室に入ると、学生は配付プリントを取って席に着き、すぐに携帯電話を取り出して操作していた。この携帯電話によるメール送信によって授業の出欠管理が行われている。
講義の始まりには、前回授業の内容に触れ、学生の理解度を確認しながら進行していた。今回取り上げるテーマに関わる基本的な考え方や会計処理等、学生たちが真剣に聞き入る姿が印象的であった。
授業後半の確認クイズの際は、上田先生が机間巡視を行って学生の質問に対応していた。その間、教室内の画面には問題の解答経過や正答率が明示されていた。明示方法は、画面に座席表が色分けで明示されており、各座席の色によって未解答者や正答者の順位が瞬時に分かる形式であった。
1 つの設問が終わるごとに上田先生から数分の解説が行われていた。解答中は学生同士で相談してもいいとのことで、黙々と計算する学生、相談し合って解答を作成する学生、先生に質問する学生等、さまざまな光景が見られた。
教員インタビュー(Q&A)
Q. 授業の準備について教えてください。
A. スライドと確認クイズの作成が中心です。会計基準の変更や最近の企業事例を反映するため、クイズの内容は毎年変更しています。特に計算を扱う問題はミスがあってはいけませんから、作問には神経を使います。その他、「メル勉システム」からの出席状況・クイズ解答状況の確認も行っています。 本学経済学部の塘誠教授が開発したシステム。経済学部のいくつかの授業で利用されている。出席確認、クイズ機能などを有し、メール送信によってやり取りできる。クイズの正答率も即座に明示できる。
用語説明①
メル勉システム
×
Q. 学生授業評価アンケートはどのように活用していますか?
A. 毎回結果を確認しています。「この授業のレベルはあなたにとって適切であったか?」に対する回答には注目しています。というのも、「やや難しかった」という回答が多数派になるように、授業のレベルをあえてやや高めに設定し、教育効果を測りたいと考えるからです。未知で「難しいな」と感じた事柄について「理解できた!」と実感できる水準に引き上げること。また、毎回の授業でそうした経験を積み重ねてもらうこと。これらを心がけています。
Q. 授業のポイントを教えてください
A. 財務会計論は「大学で教えるべき内容」が標準化されている分野で、分量も膨大です。しかし、90 分間、初学者に対してその内容を細大漏らさず一方的に講義するだけでは「砂漠に水を撒く」状態になりかねません。教えるべき内容の網羅と、学生の理解度を重視する丁寧な授業進行の両立が求められます。
第一に、講義のベースとなるレジュメ(スライド)は、正確性を損なわない範囲で可能な限りビジュアル化をしています。専門用語だらけのウンザリ感を減らすため、ユルいイラスト等も意識的にかなり差し込んでいます(笑)。
第二に、クイズ形式の問題演習です。ごく少人数なら別ですが、受講者が100 名超になると、全体の理解度を即時に把握しつつ、彼らの学修意欲を高める仕掛けが必要で、そのために「メル勉システム」を活用しています。授業レベルをやや高めに設定している、と先に述べましたが、クイズをすると「即答」する層も一定数は存在し、その状況がリアルタイムで全員に開示されます。このことは、「彼らができるなら自分もできるはず」と思ってもらう効果があります。あるいは学生相互で「教え合う」ように促す効果もあります。
第三に、めりはりです。集中力の持続を考慮して、説明は長くても25 分程度にとどめ、すぐに確認クイズを配付します。これにより、毎回3 回程度の問題演習が実施できます。ときには、説明をしていない状態で、応用を利かせれば解ける問題を配付します。これらを自力で解決できるようになれば、この講義の目標は相当程度達成できたことになります。
なお、学生の着席している座席には番号が割り振られ、出欠状況もスクリーンで確認できます。代返などの不正は困難です。積み上げ式の理解を要する分野なので、継続的な出席が重要になりますが、年間を通じて概ね出席率80%程度は維持できています。
Q. 学生への期待があればコメントをお願いします
A. 財務会計論は、多数の専門用語とともに、独自の計算ルールもセットになっているため、未知の外国語の単語や文法を一から習うのにも似ています。学生はこうした体系的学修を要する分野が不得手かもしれないと思っていましたが、幸い、多数の受講者が意欲的に取り組んでくれています。この授業を履修後、会計が関わる様々なテーマに興味を抱くか、またはそれらに関係する仕事で活躍することがあればとても嬉しいです。
ところで、学生授業評価アンケートは、自由記述欄に記載する学生が少なくなっている印象があります。必ず目を通すので、もっとコメントをもらえれば、と思っています。
学生インタビュー(Q&A)
Q. この授業のよいところは?
Q. 他の学生へのメッセージがあれば教えてください。
取材当日(2016年11月16日)の授業は、下記の流れで進められた。
①出席確認:学生が携帯電話で自分の着席している席番号をメール送信することで出席となる。配付プリント(11/16 は6 枚)が教室前方に設置されているため、学生が個々に取りに行く。
②スライドで講義(50分):
③確認クイズ(40分):配付プリントに問題が記載されており、学生が解答をメール送信し、解答状況は即時にスクリーンに投影される形式。