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川 淳一 教授 「現代社会と法」

— 適切なガイダンス・時間配分・フィードバックと成績評価手法 —

川 淳一 教授 「現代社会と法」

教員基本情報

氏 名:川 淳一 教授(かわ じゅんいち)

所 属:法学部

職 名:教授

専門分野:家族法、所有権法、信託法

授業概要

対象者:2 〜 4 年次(法学部)

授業形態:講義

実施学期:2016 年度後期

履修者数:298 名

1.法学部カリキュラム全体の中での授業の位置づけ

 21 世紀初頭に吹き荒れた法科大学院の「嵐」の中で、当時の成城大学法学部教授会(以下、法学部と略記する)が学部教育の充実によってその「嵐」を潜り抜けるという選択をしたことは、学界においても公知の事実であり、今やその先見性は、羨望の対象となっているといっても決して言いすぎではない(ちなみにこの選択は小職の着任前になされたものであり、したがってこの評価は自画自賛の類ではない)。そして、このように羨望を集めるという状況の決め手になっていることは、いうまでもなく学部教育の充実ということの中身である。そこでまず、その点についてやや具体的に説明し、その中で本科目の位置づけを明らかにする。それは以下のようである。
 第一に、法学部は、従来型の法学部カリキュラムにあっては3・4 年次に配当されることが多い科目も含めて、法学の基幹科目である憲法・民法・刑法に属する普通講義科目を1・2 年次に集中的、かつ、通年制を維持して配当し、しかも、そのほとんどを必修とすることによって、学生全員にリーガルマインドという思考形式の基礎を提供することに成功している(なお、憲法・民法・刑法に即して法学の学び方に特化した必修演習科目を1 年次に配当できたこともこの成功に大きく寄与しているが、この点に関する詳述は本稿の守備範囲を超えるので、そのことは単純なことのように見えて実は奇跡に近いということのみを述べて、これ以上の論述を控える)。
 第二に、法学部は、第一に述べた施策の反面として、憲法・民法・刑法以外に属する科目群を3・4 年次に配当し、かつ、コース制によるガイドラインを設定しつつも、基本的にはそれらの科目を選択科目とすることによって、リーガルマインドを基礎とした上での将来の自由な職業選択ないしは自己実現を可能にしている。
 問題は、1・2 年次には必修科目のシバリによってぎりぎり締め上げられてきた学生が、3 年次に進級したとたん、「諸君らは自由である!」と言われて、対応できるか?ということである。小職の考えるところ、普通の学生にはそれは無理な話である。これだけでは、彼らは、自由を享受するための情報を十分には提供されていないからである。
 「現代社会と法」という科目は、2 年次後期に配当されている科目であるが、その配当期からも明らかなように、第一義的には、そのような情報提供という役割を担う科目である。具体的には、法学部卒業生が多く働いている領域で仕事をなさっておられる方、または、ご本人が法学部卒業生である方を毎週お一人お招きして、自分の仕事について、法学部での学びとの関連にもふれながらお話をしていただき、それを拝聴する、ということを通じて、なにを学ぶことがどのような仕事ないしは自己表現につながるかを個々の学生に考えてもらう、ということを内容としている。お招きしている方々は、巨大多国籍企業の日本法人のトップ、弁護士、司法書士、行政書士、地方公務員、JICA 専門職員、経営コンサルタント、街づくりにかかわるNPO 法人役員、東京下町の商店街事務局長、報道番組編集長など(順不同)本当に多彩な方々である。


2.授業展開上のポイント

川 淳一 教授 「現代社会と法」

 さて、以上の記述から、「現代社会と法」という科目は、法学部カリキュラムにとってまさにキーストーンであるということは容易に理解できると考えるが、それと同時に、そのような科目が専任教員どころか教員ですらない方々によるオムニバス形式の連続講話という形式で安定して実施され、しかも、一貫して高い授業評価を維持しているということを知るとき、一体どういう仕掛けでその講義が維持されているのか、という点について疑問が生じるのももっともであるように思われる。そこで残りの紙幅でもって、その疑問への回答にあたるいくつかの点を明らかにすることにする。

(1)適切なガイダンス・時間配分

 授業崩壊を回避しつつ、教員ではない方々の御講話を必修科目として学生に受講させるためには、適切なガイダンスと個々の講義における時間配分が不可欠である。そこで、この講義では、まず、1 回目と2 回目の時間を専任教員によるガイダンスに充て、学生諸君に講義の意義を理解してもらうようにしている。また、時間配分という点では、御講話をいただく時間を最長でも60 分として、残りの時間を要約票の作成に充てることとし、そのことによって講義室の静謐と成績評価資料の確保という二つの目標を達成している。

(2)御講話をいただく方への適切なフィードバック

 このような講義を維持するためには、御講話をいただく方を確保することが重要な課題となる。本講義では、丁寧なガイダンスと適切な時間配分によって教室の静謐を確保することだけではなく、学生が作成した要約票(200 字以上300 字以内)から個人情報を除去した本文部分をPDF 化したものを後日送付することによって、御講話をいただいた方へのフィードバックを確保している。このことが次年度のご登壇への大きな理由になっていることが御講話をいただいた方々からの聞き取りからも明らかになっている。

(3)学生への適時適切なフィードバック

 学生に翌週の講義への参加への意欲を持たせるためには、学生への適切なフィードバックも必須である。本講義では、小職手製の記述用紙(学番はマークシート式で記入し、マークを特製ソフトで読み取る)とWebClass を用いて、このフィードバックを実現している。具体的には、①マークで読み取ったデータをもとに毎回の出欠情報を学生に即日伝達する、②授業日から数日中にWebClass を通じて、個々の学生に、それぞれが提出した要約票をPDF の形で個別に電送するというルーチンを確立している(ちなみに、このうち①は他のLMS でも実現可能であるが、現実的な工数で②を実現可能なのは、小職の知るかぎり、数あるLMS の中でもWebClass のみであり、本学にWebClass があったのはまことに僥倖であった)。

川 淳一 教授 「現代社会と法」
実務家の方々が講義を行うオムニバス形式

(4)短期的な効果測定とは無縁の成績評価

 これまでの記述から明らかなとおり、この講義は、それ自体としては学生に対して達成すべき目標というものを具体的には提示していない。小職の理解によれば、これは本学の基本理念たる全人教育の一つの特徴であるが、そうである以上、成績評価も今流行のルーブリック等による短期的な効果測定とは無縁のものであるべきであるというのが小職の確信するところである。この講義では、適切な記述のある要約票が必要枚数提出されているかどうかによって成績評価をするという仕方を採ることにより、この講義にふさわしい成績評価を実現している。 以上(川 淳一)