成城大学

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  • 2016.03.24

    平成27年度大学学位記授与式 学長式辞(式辞抜粋)

 ただ今、博士号を授与された方、また大学院博士課程前期を修了し、修士の学位を授与された皆さん、そして学士の学位を授与された皆さん、ご卒業おめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。

 さて、本年度は、大学院経済学研究科から黄 賀さんが、また、文学研究科から佐藤 仁さんが、博士課程後期において必要な単位を取得し、研究成果を博士論文にまとめられ、博士号を授与されました。

 博士論文「中国企業のグローバル事業展開に関する研究」を執筆された黄さんは、中国から成城大学大学院経済学研究科経営学専攻に留学され、中国企業のグローバル展開、グローバル戦略をテーマに研究されてきました。とくに、従来の国際経営学が、先進国企業のグロ-バル戦略、グローバル展開を分析対象としているのに対して、黄さんは、中国企業のグローバル事業戦略に焦点を当て分析を行いました。
そして、中国企業の海外展開の目的は、今後も発展・拡大が期待される中国国内での グローバルな企業間競争に必要な 競争力を構築・強化することであるという仮説を立て、中国企業の日本法人(在日子会社)を対象に実証的に検証されたものであります。これまでの研究では取り上げられて来なかった問題を分析し、立派な研究成果をあげられました。
 今後は、研究生活を継続しつつ、中国はじめ各国からの留学生を対象にビジネス関連の科目を教授する職につかれると聞いておりますが、日中両国の架け橋として活躍されることを大いに期待しております。

 また、博士論文「教皇ウルバヌス8世の治世におけるミツバチ表象関する研究」を執筆された佐藤さんの研究は、ローマ・バロック美術の分野で、もっとも重要な研究対象であり、多くの研究業績が蓄積されてきた教皇ウルバヌス8世の装飾事業について、重要でありながらも、本格的な研究がなされてこなかったテーマ、すなわち教皇の紋章であるミツバチの表象(姿・形)に着目して、様々な作品に現れた表象を数多く集め、その表現の変遷や意味を詳細に分析することによって、独創的な研究成果をあげられました。
 この間の努力に敬意を表すとともに、今後独り立ちした研究者として一層の研鑽 を積まれ、さらに立派な研究成果を発表されることを、心から願っています。

 また、大学院博士課程前期においては、経済学研究科2名、文学研究科19名、社会イノベーション研究科5名の方々が、所定の単位を修得し、研究成果を修士論文としてまとめ、めでたく修士号を授与されました。修了生のみなさん。おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。
 前期課程修了生の皆さんは、博士課程後期に進学して、引き続き学問研究に励む方、大学院で修得した高度な専門知識を活用して、明日から実社会で活躍することを目指す方、さまざまだと思います。それぞれ活動の場は異なりますが、どのような道に進むにせよ、皆さんが活躍される21世紀は、「知識基盤社会」とか、「知」の時代 といわれています。皆さんが、大学院で、学問に正面から向き合って得た学問的な方法論と、修得した高度な専門知識を基礎に、それぞれの分野の専門家として、大いに活躍されることを期待します。

 さて本日は、経済学部366名、文芸学部409名、法学部253名、社会イノベーション学部280名の若者が社会に巣立つ、旅立ちの日であります。皆さんの門出を、先生方、ご家族の方々とともに、お祝いしたいと思います。

 皆さんは学業に、部活に、あるいはアルバイトにと、日々、忙しく・また充実した学生生活を送られたことと思います。成城大学での様々な経験が、きっと明日からの社会人生活を支えてくれることでしょう。
 ときには、母校を訪ねて、恩師やお世話になった職員の方に会い、近況を報告し、あるいはさまざま愚痴を聞いてもらって下さい。遠慮無く、利害損得を考えることなく話ができるのも、母校、成城大学の良さです。

 さて、明日から、皆さんは社会人になります。
 企業に就職される方がほとんどだと思いますが、世界経済のグローバル化が急速に進む中、近年、日本においてグローバル化が新たな局面を迎え、企業を取り巻く環境も大きく変わっています。グローバル化とはヒト、モノ、カネが国境を超えて大量に、かつ速いスピードで移動するようになることを意味します。従来の日本のグローバル化は、輸出型の産業が海外に工場や子会社を設立して、現地で製品を生産、販売するという形が典型でした。1980年代なかばに円高が急速に進んだ頃から、日本企業の海外展開がいちだんと活発になり、わが国の海外への投資、対外直接投資が急増しました。その後、日本企業による外国企業のM&A(合併や買収)は、リーマン・ショックによって、いっとき停滞したものの、再び活発になり、2015年には過去最高を記録しました。最近は、少子高齢化による国内市場の縮小に対応して、流通産業、食品産業などの内需型産業も、積極的にM&Aを行い、海外に展開しています。
 他方、外国の企業が日本国内へ子会社などを設立して事業を行う活動すなわち対内直接投資は、対外直接投資に比べると、とても僅かなものでした。また、日本に設立された子会社は外資系企業と呼ばれ、いろいろな面で日本の企業とは異なった存在と考えられてきました。逆に欧米から見れば、日本は異質な社会と見られていました。
 しかし近年、外国から日本へのヒトとカネの動きが変わってきました。1999年には経営不振に陥った日産自動車を救済するため、フランスのルノーが日産自動車と資本提携して日産自動車を傘下に納めました。そして、2000年代に入ると、中国企業が経営不振に陥った三洋電機や家電販売のLAOXなどの日本企業を買収するケースが出始めました。
 最近では、不適切な会計処理により経営再建中の東芝が、冷蔵庫や洗濯機などのいわゆる白物家電部門の子会社を、中国の家電大手企業「ミデア・グループ」に売却する交渉が行われています。東芝は、日本で初めて電気洗濯機を生産した白物家電の伝統ある会社であり、その売却は、日本の電機産業の現状を象徴しています。薄型液晶テレビの亀山モデルで一世を風靡したシャープも、台湾のホンハイ精密工業に売却する話が進行中です。また、円安とアジアの経済成長を背景に、訪日外国人は2015年には1970万人と10年前の3倍以上になり、中国人を中心とするアジアの人々の爆買いも話題になっています。
 実は、30年前、円高を背景に海外旅行に行く日本人が急増し、パリや、ロンドン、ニューヨークでブランド品を買い漁る日本人が話題になりました。ニューヨーク・マンハッタンの中心部にあるロックフェラーセンタービルを日本企業が購入し、アメリカ人の反発を招いたこともありました。歴史は繰り返しているのです。日本への投資は対外投資に比べ依然として低い水準にとどまっていますが、日本政府は、東京オリンピックを控えて、訪日外国人のいっそうの拡大や、日本経済活性化のため、外国企業の日本への誘致策を積極化しています。

 さて前置きが長くなりましたが、日本経済のグローバル化も、従来の外に向かうアウトバウンド型のグローバル化に加え、インバウンド型のグローバル化が拡大しています。一言で言えば、内なるグローバル化がますます進んでいるということです。
 日本の会社と思い、仕事の範囲も国内に限定されると考えて就職した企業が、ある日突然、外国企業に買収され、経営者が外国人に代わり、外国人の上司の下で働くことになる。仕事の相手も海外の取引先になる。社内の会議も英語で行われるようになる。そういうことが、さほど珍しいことではなくなる時代が近づいています。皆さんがこれから船出する社会は、そうした社会に変わりつつあります。

 では、そのような社会で生きていく皆さんには、何が必要なのでしょう。
2つのことをお話したいと思います。

 まず第1に、語学力は必須でしょう。欧米人にかぎらず、アジアの人々とコミュニケーションするにも、語学力とくに英語力は必須です。勉強は大学卒業とともに終わるのではありません。卒業、就職を機に、もう一度英語を、外国語を勉強するのはどうでしょうか?
 もちろん、ネイティブ・スピーカーと同じように外国語を話せる必要はありません。諸君の先輩、卒業生で、世界的に活躍されている方からお話を伺うと、もともと英語は得意ではなかった、ほとんど話せなかったという方がたくさんおられます。ただ、必要に迫られて必死に勉強したとも言われます。
 皆さんは一通りの英文法の知識は持っています。それをベースに必死に学べば、英語を母国語としない人々と意思を疎通し、交渉するだけの英語力を身につけることは可能です。すくなくとも、必要となったときには、必死で勉強する覚悟だけは、持っていて下さい。
 ただ、重要な事は、語学力だけがグローバル人材としての必要条件ではありません。むしろ、文化的背景も異なリ、考え方も異なるヒトとどのようにコミュニケーションを図ることができるのか。異文化に対する理解をもちつつ、日本人としての確固たるアイデンティティをもつことが必要です。
 また、企業では、様々な領域の人材がチームを作って、課題に対応することが重要となっています。そのためには、主体性や積極性、チャレンジ精神、あるいは協調性・柔軟性、そして信頼されるメンバーとなるためには責任感・使命感が不可欠です。
 実は、これらの能力は、グローバル企業であろうとなかろうと、会社に入って仕事をするには必要なものです。成城大学の学生は、コミュニケーション能力、チームをまとめていく能力については定評があります。自信を持って、大学時代に身につけた力をさらに鍛え、育てて下さい。

 もうひとつは、苦境から脱出したアメリカの経験からの教訓です。
 かつてアメリカでは、日本企業の進出によって製造業が空洞化し、雇用が失われるとして、激しい日本叩きが行われました。確かにアメリカの自動車産業や老舗電機メーカーなど、製造業が打撃を蒙りました。
 しかし、アメリカの産業は消滅しませんでした。 マイクロソフトやアップル、シリコンバレーを拠点とする沢山のベンチャー・ビジネスが生まれ、アメリカ経済を牽引しています。
 次の日本を牽引していく産業をどう産み、育てるか、これはわが国の直面する最大の課題です。わが国の内なるグローバル化を促進し、外国から人材、資金などを受け入れて新たな産業を起こしていくことが必要です。そのためには、既得権益を守る規制を断ち切ることが必要ですが、その担い手は、過去からのしがらみとは無縁な皆さんのような青年です。

 成城学園創設者の澤柳政太郎先生は、時代の転換期にあっては、青年は独立独行、自分の進むべき道は自ら決め、たとえ先がイバラの道であろうとも、突き進むべしと述べています。
 今こそ、青年の奮起が求められているのです。皆さんの奮起を大いに期待しています。