成城大学

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  • 2024.03.21

    大学生が考える「キャリア自律」とは
    学生が研究の成果を大学教育研究フォーラムで発表

 2024年3月13日(水)、キャリアデザイン科目「キャリア・プランニング・プログラムⅡ1)」履修生の伊東佳蓮さんと村雲真凛さんが、授業での研究成果を「大学教育研究フォーラム」2)にて発表しました。
 本科目はキャリアデザイン科目群の高年次発展科目として開講し、副題は「ライフ・キャリアにおける学びのデザイン」、ライフ・キャリアと学びをベースに学生自らが活動テーマと発表形式を検討し実践していきます3)。2023年度は就職活動を終えた4年生・3年生が、自らの問題意識から、研究課題を『大学生のキャリア自律に向けた動機づけに関する研究』と設定し、先行研究を経て、人材開発に関わる学外有識者や在学生にインタビューを行い、その成果をまとめました。
 前述「大学教育研究フォーラム」は、主に大学教育改革に関わる大学教員を対象とした研究交流の場であり、今年でちょうど30年を迎えます。本学学生はポスター形式(オンライン)で発表を行い、多くのコメントを得ることができ、議論に発展させていきました。

発表テーマ:

大学生のキャリア自律を目指す「Innovation Café」
-成城大学在学生による在学生への調査をもとに-

 本研究は、キャリアに関心を持つ学生2名が、現代の大学生に求められるキャリア自律と実際の大学生の抱える悩みやニーズとのギャップについて考え、その解決策を論じたものである。

概要(発表論文要旨より抜粋、一部改編):

 近年、個人のキャリア自律の重要性が高まっている。このような環境下では、学生にもキャリアを自律的に歩む力が求められる。本研究の目的は、大学のキャリア支援の問題点を、学生当事者の目線から見つめ直し、解決へ導くための新たな施策を提案することである。
 本研究では、成城大学の在学生を対象に大学のキャリア自律支援の現状について調査を行った。また学生のキャリア自律のための大学側の支援について要望を持つ在学生にはヒアリング調査を実施した。解決施策の立案にあたっては「SHIMOKITA COLLEGE」4)への現地調査とヒアリングを行い、実践面の課題について検討を行った。
 調査の結果から、学生は、周囲との日常のコミュニケーションにおいて「キャリアに対する自らの積極的な姿勢」を控えめに示す傾向にあった。またヒアリング調査では「就活時期に抱える自身の悩みを打ち明けづらい」、「将来に対する実践的な相談ができる知人が少ない」ことが明らかとなった。加えて「将来について学生同士で考える空間」や、「新しいことに挑戦できる場(または、きっかけ)」、「学部の障壁をなくした学生同士の学び合いの場」を欲していることが推察された。また調査の結果から、成城大学の在学生の学内の課外活動は、主にサークル、部活動、サポーター活動に限定され、キャリア自律へ向けた自らの実践的活動を学外へ求めていることも推察された。「学内での学びや活動を自らの成長に活かす機会が限られている」という意見が複数みられたことから、学生がキャリア自律に必要な内省の機会が十分に得られていないという課題も明らかになった。この結果から、学生が自らのキャリアについて日常生活の中で内省し、具体的に行動に移す(トライ・アンド・エラーできる)場が、大学内に不足していると考える。これは「大学から一方的に与えられる」といった従来のキャリア支援のあり方を見直す必要があるともいえる。
 本調査を踏まえ我々は、学生のキャリア自律を「学生相互による主体的な学びと成長の機会創出」と捉え、学生の自発的な学びの機会を創造するとして、「Innovation Cafe」を立案する。

セッション参加者に頂戴したコメント ※五十音順

岡田 航平 様 京都大学 大学院教育学研究科 後期博士課程
 京都大学で大学教育学を研究している私は「大学生のキャリア自律を目指す「Innovation Cafe」」というタイトルに惹かれて,本ポスター発表に参加させていただきました。発表では,学部生とは思えない理路整然としながらも見やすいポスターのまとめ方や,論理的で分かりやすい研究の組み立て方・展開の仕方に感銘を受けました。また,研究上の着眼点(問い)は学部生ならではの非常にユニークなものであり,とても勉強になりました。しっかりと準備を積み重ねてこられたことが伺える発表だったと思います。この経験を糧に,これからも学問や研究で培ったことを忘れずに前進してください。改めて,ありがとうございました。
 お二人の発表を通して考えさせられたのは「(実は私も25歳ですので…)私たち若者の世代はこれまでの世代とは少し異なる考え方を持っているのではないか?」ということです。 近年,コロナ禍の影響もあり,社会のあり方や社会人の働き方は大きく変化しました。これだけ変化の大きな社会において,大学生として,自分自身の進む道(将来)を決めることは簡単ではありません。しかしながら,そのような状況だからこそ,現代の若者は,常に様々な変化を想定しており,例え変化が生じたとしてもそれに対応し,そしてその積み重ねから自分たちのキャリアを紡いでいく,というメンタリティを持ち合わせているのではないでしょうか。そしてそのようなメンタリティを持ち合わせているからこそ「自分の進路や職業,生き方を考える場所が欲しい!作りたい!」という思いが本研究にも現れていたのではないかと思います。
 私は「大学生になるってどのような経験だろう?」という問いを研究しています。自分自身の大学時代を振り返っても「あっという間」の4年間だったと記憶しています。大学とは,高校の延長ではなく,また,社会人になるための練習場所でもありません。そのような大学に所属する中で,時々でもよいので,自分自身が高校生でも社会人でもない「大学生」であることの意味を考えながら,今自分に何ができるのかを考えてもらえればと思います。大学に所属する「大学生」にしかできないことを考えながら,お二人のように,研究の世界に飛び込むなど,積極的にアクションを起こして,実りある大学生活を送ってもらえればと願っています。これからも応援しています!

久保 槙祐野 様 関西学院大学 ライティングセンター 助手
 キャリアに関する悩みは、就活当事者である学生だけでなく、支援する大学側も共通で抱えているものであり、さまざまな実践や研究がされてきていると思います。その中で、学部生が、「社会イノベーション学部」という特色ある学部での学びや経験を礎とし、大学という自分たちにとって身近で重要な環境を批判的に見つめ直して、新しい活動の提案をされている、という点で、非常に貴重な取り組みだと感じました。お二人が強調されていた、学部の垣根を越えた学び合いの場というものが、実際にどういう機能を果たし、どんな成果を生むのか、結果がとても気になるところでございますので、今後の展開を楽しみにしております。

鈴木 聡 様 大阪経済法科大学 経営学部 准教授
大学のキャリア支援は、学生と大学キャリア支援部署などとの「タテ」の関係や、学生同士によるピアサポートなどの「ヨコ」の関係からキャリアを考えることがこれまで多かったのではないかという印象でした。今回紹介されていたInnovation Cafeはこれらの関係にとどまらず、学外の人々との「ナナメ」の関係まで巻き込んでいる点が特筆されます。これらの関係の中で、各学生の日常的な視点からは想像しにくい社会との共通点・相違点から視野を広げる機会などにもつながる可能性があり、興味深い試みであると考えております。将来的に、多様なキャリア自律の捉え方をする学生を巻き込みながら、それぞれの学生が社会の中で生きてゆく方針を見つけ出す場づくりに発展することを期待しています。

発表者のコメント ※五十音順

伊東佳蓮 社会イノベーション学部 政策イノベーション学科 4年
キャリアデザイン科目を後期に思いつきで履修してみたことがきっかけで、この大学最後の半年間が、私にとって、予期せずとても充実したものとなりました。これまで4年間で感じてきた様々な想いを、「大学研究フォーラム」という正式な研究発表の場で形にすることができたことに達成感を感じています。今回の発表を通じて得た気づきや自分の成長を、今後の将来やキャリアに活かしていきます。

村雲真凛 社会イノベーション学部 政策イノベーション学科 3年
「大学教育研究フォーラム」で発表するという挑戦は、私にとって3年間履修を続けていた就業力育成・認定プログラムの集大成でした。各キャリア科目で獲得した能力を用いて学びを形にし、最後に自らの大学を取り上げた研究に還元できたこと、大変嬉しく思います。これまで見過ごしてしまっていた大学生活における小さな違和感を、興味関心の赴くままに探求したこの半年間は非常に贅沢な時間でした。時には作業が思うように進まず、立ち止まる瞬間もありましたが、取り組んだこの時間そのものが私自身を大きく成長させてくれました。この挑戦で得たことを残りの大学生活や将来に繋げていきます。

正課科目「キャリア・プランニング・プログラムⅡ」について

 本科目の目的は,学生が生涯にわたる「学びのライフデザイン」を描き,体現していくことである。人生100年時代,変化する社会において,多くの人々は数回にわたりキャリアを転換していく。キャリアの転換には,知識やスキルのアップデートのために,自ら学び続ける"リスキリング"が必要になってくる。つまり,キャリア形成には,"働く"だけでなく,"学ぶ"、さらには"生きる"、"貢献する"といった、トータルのライフデザインが重要になる。
一方で,現代の社会はIT化が進み,学びの手段も進化し,大学で学ぶ意味が問い直されている。オンライン授業が普及し,所属大学の教室で教員の話を聴くだけでない新たな授業形式も定着した。”MOOC”等を利用しながら世界中のトップレベルの大学の授業が受講でき,修了証はキャリアパスとして活かすこともできる。生涯学び続けることが必要な時代,学びの手段は進化し,何を学ぶかだけでなくどのように学ぶか、学んだことをどう活かし貢献するかも重要になる。本科目では,大学時代と卒業後の学びもライフ・キャリア形成の一部ととらえて、大学での学びに加え,社会との接続を意識している。産業・組織で求められる「生涯学び続ける力」を,学生時代の間に醸成させ,自律的なキャリア形成に繋げていく。
 

参考:
1)成城大学キャリアデザイン科目「キャリア・プランニング・プログラムⅡ」シラバス

2)大学教育研究フォーラム(主催:大学教育研究フォーラム実行委員会)
https://sites.google.com/view/highedu-forum/

3)2022年度の履修生の取組みは、「学生が大学で学ぶ意義を見いだし、大学での学びを卒業後のライフ・キャリアに生かすための授業」(正課科目2科目)を設計し、シラバスと共に学長へ提案に学長室へ参りました。

4)「SHIMOKITA COLLEGE」を視察するなど、講義、演習、学外実習を組みあわせたブレンデッド・ラーニングを実践しています。
https://shimokita.college/ 

成城大学キャリア教育プログラム「就業力育成・認定プログラム」(2011年度より継続)

※発表論文要旨とポスターの掲載については発表者2名と「大学教育研究フォーラム」主催側の許可を得て掲載しています。

文責・科目担当者 勝又あずさ(成城大学 キャリアセンター)