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教室の外に飛び出して、
自らの手で「文化」を解き明かす

民俗文化表現論ゼミナール
文芸学部 文化史学科 俵木 悟 教授

フィールドワークを通じて
人々の生活文化を調査する

教室の外に出て、普段は接することのない人々の話に耳を傾けること。私のゼミナールでは、身の回りのさまざまな文化をフィールドワークで調査することを大切にしています。
文化研究と聞くと、有名な作家や芸術家の作品の研究をイメージする人もいるかもしれませんが、民俗学の研究対象となるのは「生活文化」。普通の人々の普通の暮らしを文化として捉え、学生たちそれぞれが自分の興味・関心に基づいて研究テーマを決めています。

鹿児島県の民俗芸能を
10年以上にわたって現地調査

私自身も10年以上にわたって、国の重要民俗無形文化財である鹿児島県いちき串木野市の「七夕踊」に関するフィールドワークに取り組んできました。
「七夕踊」はもともと地元の青年たちが20代前半の時期に一生に一度の通過儀礼として踊っていたもの。しかし近年は少子化の影響もあって踊りの担い手が減少し、ついに休止が検討されるようになってきました。ひとつの伝統文化が継承できなくなるとはどのようなことか、現在はその経緯を最後まで追いかける調査をしています。

ネットに載っていない情報を
自分の足で探すことが重要

フィールドワークに取り組む学生たちには「どんなに小さなことでもいいから、インターネットには載っていない自分だけの情報を探してきなさい」と伝えています。例えば「演歌」について研究しているのなら、実際に地域でリサイタルを開催している歌手に会いに行く。「ボードゲーム」の研究であれば、ゲームを売っているお店や愛好会、サークルに参加している人の話を聞きに行く。多くの学生に、そうして自分の足でリサーチすることを求めています。
必ずしも伝統芸能を取り上げる必要はありません。文化史的な観点から、現代のカルチャーを掘り下げることができるのも民俗学の魅力です。

役に立たないことに
目を向けるのが民俗学

たまに「大学で民俗学を学んで何の役に立つのですか?」と質問されることがあります。正直に言うと、社会で直接なにかの役に立つということを目的にはしていません。むしろ、一般には「役に立たない」とか「取るに足らない」と思われていることに、おもしろさや大切さを見つけることが、この研究分野の特色だと思います。
また、フィールドワークを通じてさまざまな人と対話していけば、自分とまったく異なる境遇の中で生きる人たちとコミュニケーションを取る力が自然と身につきます。学生たちには、さまざまな価値観を認め合い、理解し合える人になってほしいと願っています。