治療的司法研究センター

ご挨拶

センター長挨拶


治療的司法研究センター長 指宿 信

 この度、成城大学に新しく「治療的司法(犯罪の原因となる問題解決に焦点を当てた刑事司法のあり方を希求する考え方)」を研究するセンターが設立されることとなり、そのセンター長を務めることとなりました。
 伝統的に洋の東西を問わず、いわゆる法治国家であれば、法律で定められた犯罪行為に対して刑罰を予告することでこれを抑止し、抑止できなかった犯罪行為には制裁として刑罰を科す、という仕組みを長い間持ち続けてきました。
 ところが20世紀の終わり頃から、徐々に刑罰による抑止の意味や効果に疑問が示されるようになり、特定の犯罪類型については刑罰よりも犯罪を生み出してしまう問題の解決こそが不可欠であることがわかってきたため、欧米諸国では「問題解決型裁判所」と呼ばれる刑罰志向ではない犯罪者の抱える多様な問題を除去・解決するプロセスとして刑事司法を営む動きが生まれてきました。
 そして、そうした実務の動きを支えているのが、デイビッド・ヴェクスラー教授とブルース・ウィニック教授によって1970年代に提唱された「治療的司法」と呼ばれる新しい司法観であり、訴訟理論です。この理論は、刑事罰を求めるプロセスとしての旧来の刑事司法のあり方を改めて、依存や嗜癖からの離脱・回復や福祉的対応によって犯罪の原因となる問題を除去する新たな刑事司法のパラダイムを切り開こうとしました。
 本センターは、このような海外の先端的な実務動向を我が国に紹介するとともに、そうした動きを支える海外の理論的な研究にも学びつつ、日本の法制度にどのような改革や修正が必要なのかを考究し、その基礎となる調査を行うための研究機関として我が国で初めて設立されたものです。
 本センターは治療的司法の理論研究に関わって日本と世界を結びつける働きを目指すとともに、治療的司法観に基づいた刑事司法制度のあり方や官民(公私)協力モデルに関して開発研究を進めていく所存です。

顧問からの祝辞


  顧問 岩井 宜子

 治療的司法研究センターが立ち上がりますことを本当に喜んでおります。現在の刑事司法システムは応報刑の理念で成り立っており、それは犯罪の一般予防の目的はある程度達成できても、いろいろな適応障害のもとで行われる犯罪の防止には適合していない部分が多いと思われます。それぞれの犯罪者の真の更生を目指す治療的司法の考え方が刑事司法の各段階で導入されることによって効果的な再犯防止がなされうるといえ、その研究を進める本研究センターの躍進を期待しております。

page top