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  • 2017.05.25

    【開催報告】成城大学グローカル研究センターシンポジウム「グローバルに跳躍する身体」—川口能活とサッカー技芸の越境—

山本 敦久(社会イノベーション学部)

 本シンポジウムの目的は、グローバル化が進行する世界における「身体資源」という観点から、国境を越えて活躍するアスリートの経験を読み解こうとするものであった。これまでサッカー日本代表として数々の国際舞台に立ち、またアジア人GKとして初めて主要ヨーロッパリーグに移籍した川口能活氏を討論者に迎え、スポーツ社会学者有元健氏(国際基督教大学准教授)と越境するアスリートの身体について討論を行った。
 イングランドやデンマークでGKとしてプレーした川口氏によれば、各国・各リーグによってサッカーのプレースタイルは異なり、そのため各ポジションの選手に要求されるプレーおよび身体的特徴も異なるということであった。一般にサッカー選手の身体的資質を表現するときに「身体能力(フィジカル)」という言葉が流通しており、「日本人選手はフィジカルが弱い」などと語られることが多いが、ここには単純化が含まれているという。川口氏によれば、身体能力といわれるものは、大きさや高さなどの「形」に関するもの(フィジカルA)と、素早さや細やかさなど「動き」に関するもの(フィジカルB)に分類でき、それぞれの資質に応じて総合的に発達させていけるものであるという。
 また有元氏からは、国際結婚や移民の流入など国境を越えた身体の混交が加速化している現在、「日本人の身体」という概念そのものが必ずしも固定的なものではなくなっているという話題がふられた。越境するアスリートにとって、異なるプレースタイルに適応することは身体の再構築をともなう異文化経験であるということが明らかになったといえるだろう。
 シンポジウムは終始和やかな雰囲気で、会場の皆さんとの対話的な語りによって進行した。シンポジウム後に川口氏は来場された方々からサインや写真撮影をお願いされていたが、その一人ひとりに丁寧に対応されていたことが印象的であった。

成城大学グローカル研究センターシンポジウム 「グローバルに跳躍する身体」—川口能活とサッカー技芸の越境—