イベントの記録

  • 2017.08.29

    【開催報告】公開シンポジウム 「ユネスコの無形文化遺産保護をめぐる 『当事者』と『文化仲介者』としての実務担当者の役割」

 本学の文部科学省・私立大学研究ブランディング事業(「持続可能な相互包摂型社会の実現に向けた世界的グローカル研究拠点の確立と推進」)の一環として、2017年5月13日(土)の午前10時30分から午後5時過ぎまで、成城大学3号館3階大会議室において、グローカル研究センター主催による公開シンポジウム、「ユネスコの無形文化遺産保護をめぐる 『当事者』と『文化仲介者』としての実務担当者の役割」が開催された。シンポジウム当日のスケジュールと発表者・発表題目、コメンテーターは以下の通りである(シンポジウム当日のスケジュール等の詳細については、http://www.seijo.ac.jp/events/jtmo42000000gxus.html参照)。

<プログラム>

◆ 開会の辞・趣旨説明
10:30-10:50 上杉富之(成城大学グローカル研究センター長)

◆〈第1部〉発表 司会:加藤秀雄(成城大学民俗学研究所)
10:50 - 11:20 発表1
佐藤央隆(三島村教育委員会)
「『薩摩硫黄島のメンドン』重文指定とユネスコ申請までの経緯について」

11:20 - 11:50 発表2
清水博之(元・日立市郷土博物館、茨城キリスト教大学)
「日立風流物(ふうりゅうもの)の継承と文化財保護行政—文化財担当者・学芸員の役割とは—」

11:50 - 12:20 発表3
中島誠一(元・長浜市曳山博物館、成安造形大学)
「博物館と長浜曳山祭—博物館は地域の無形文化遺産継承の牽引役か—」

(12:20 - 13:30 お昼休憩)

13:30 - 14:00 発表4
沼田 愛(仙台市教育委員会)
「『秋保の田植踊』の保護と継承に向けた実務担当者の役割」

14:00 - 14:30 発表5
松井今日子(元・北広島町芸北民俗芸能保存伝承館、岐阜市歴史博物館)
「無形文化遺産をどこから捉えるか?—壬生の花田植の場合—」

14:30 - 15:00 発表6
村上忠喜(京都市歴史資料館)
「『京都祇園祭の山鉾行事』と『山・鉾・屋台行事』の二つの登録をめぐる10年」

(15:00 - 15:15 休憩)

◆〈第2部〉コメント・総合討論 司会:俵木 悟
15:15 - 15:30 コメント1 小林 稔(文化庁・主任文化財調査官)
15:30 - 15:45 コメント2 福岡正太(国立民族学博物館)
15:45 - 16:50 総合討論

◆ 閉会の辞
16:50 - 17:00 上杉富之
 *懇親会 18:00 - 20:00 成城大学3号館3階小会議室

 シンポジウムでは、冒頭、上杉富之グローカル研究センター長がシンポジウム開催の趣旨説明を行った。その後、ユネスコの無形文化遺産(「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」[以下、「代表一覧表」と略述])にすでに記載された、ないしこれから登録が予定されている6件の無形文化遺産について、登録の実務を担当した、ないし今まさに担当している方々による発表が行われた。
 第一部(発表)ではまず、鹿児島県三島村教育委員会で文化財行政を担当する佐藤央隆氏は、薩摩硫黄島の仮面神メンドンをともなう八朔太鼓踊りについてその概要を紹介したうえでメンドンが国指定の重要無形民俗文化財に指定され、さらに「来訪神:仮面・仮装の神々」を構成する要素の一つとしてユネスコの無形文化遺産に登録(「代表一覧表」に記載)提案されるに至った経緯等について報告した。元茨城県日立市郷土博物館学芸員の清水博之氏(現茨城キリスト教大学講師)は、茨城県日立市の日立(ひたち)風流物(ふうりゅうもの)(2016年、「山・鉾・屋台行事」の構成要素、「日立(ひたち)風流物(ふりゅうもの)」として「代表一覧表」に記載)の保護・継承の実態と文化財保護行政における博物館学芸員の役割について報告した。また、元長浜市曳山博物館館長の中島誠一氏(現成安造形大学講師)は、長浜の曳山祭(2016年、「山・鉾・屋台行事」の構成要素、「長浜曳山祭の曳山行事」として「代表一覧表」に記載)を保護、継承するに当たって博物館が果たす役割や意義について述べるとともに、そこに見られる困難等についても報告した。
 第一部(発表)の午後の部では、仙台市教育委員会文化財担当の沼田愛氏は、秋保の田植踊(2009年、「秋保の田植踊」として「代表一覧表」に記載)について、ユネスコ無形文化遺産への登録が田植踊そのものやその継承に与える影響を報告し、また、文化財行政の実務担当者が果たすべき役割について論じた。元北広島町芸北民俗芸能保存伝承館の松井今日子氏(現岐阜市歴史博物館)は、氏が関わった北広島町の壬生の花田植(2011年、「壬生の花田植」として「代表一覧表」に記載)の保護、継承について、立場や状況によって保護、伝承すべき当該無形文化遺産そのもののあり方や保護・伝承を担う「当事者」の範囲や見解が必ずしも同じではないことなどを報告し、そうした差異や齟齬を媒介、調整することも「文化媒介者」としての実務担当者に求められていることを報告した。京都市歴史資料館の村上忠喜氏は、京都市の文化財行政担当者として、京都祇園祭を2度にわたってユネスコの無形文化遺産に登録した経緯、経験を報告し(2009年、「京都祇園祭の山鉾行事」として「代表一覧表」に記載。その後、2016年、「山・鉾・屋台行事」の構成要素、「京都祇園祭の山鉾行事」として再記載)、その間に、ユネスコの無形文化遺産の保護、継承をめぐって日本の文化政策、行政が微妙に変化してきたことを指摘した。
 以上6つの報告に対し、第二部(コメント)では、文化庁の小林稔氏が主に日本(政府)の文化財行政の観点から、国立民族学博物館の福岡正太氏がユネスコを中心とする世界各国の無形文化遺産の保護、継承の観点から補足的な説明を加えるとともに、コメントを加えた。
 その後の総合討論では、発表者やコメンテーター、無形文化遺産の保護、継承に関心を持つ研究機関や大学、一般の参加者を交えて、無形文化遺産の保護、継承における地方自治体や教育委員会、博物館の実務担当者の役割や意義、さらには彼らが直面する問題点等をめぐって活発な議論が交わされた。そうした議論の中で、無形文化遺産保護・継承において「実務担当者」が果たす積極的な役割や意義が再確認された。そして、そのことをより明確化するためには「実務担当者」を単に中立的なニュアンスを与える「文化媒介者」(cultural mediator)や「文化調整者」cultural coordinator)と呼ぶのは不適切であり、むしろより主体的、積極的な側面を強調する意味でcultural facilitator(「文化促進者?」)と呼ぶべきではないかとの提案が成された(鹿児島県三島村教育委員会の佐藤央隆氏)。また、実際に無形文化遺産を保護・継承するに当たっては、当該無形文化遺産の保護・継承を担う「当事者」(ユネスコの無形文化遺産保護条約におけるCommunities, Groups and Individuals: CGIs)の意味内容(概念)や範囲が、TPOに応じて適宜再解釈(操作)されていることなども明らかにされた(京都府京都市歴史資料館の村上忠喜氏)。
 本シンポジウムは、無形文化遺産を保護・継承における地方自治体や教育委員会、博物館の「実務担当者」(往々にして「当事者」でもある)の役割や存在意義に初めて焦点を当てたという意味で画期的なものであった。

  • 【開催報告】公開シンポジウム 「ユネスコの無形文化遺産保護をめぐる 『当事者』と『文化仲介者』としての実務担当者の役割」

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シンポジウム発表者らの集合写真
シンポジウム発表者らの集合写真

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