美的現象であり、文化的現象でもある演劇(台詞劇)を理論的に研究する。ただし実証的アプローチとの連携は必須である。対象領域はドイツ語圏を中心とする近・現代演劇。1960年代以降は欧米と日本とで大きなパラダイムの違いがなくなり、結果的に身近な日本現代演劇にも目配りするようになった。具体的には、20世紀末以降の範囲で、文化的、社会的、歴史的、そして個人的な「記憶」という主題を扱いつつ、それを観客の観劇体験の水準で反芻させるような形式の演劇を幅広くリサーチしている(井上ひさし、野田秀樹、ジョージ・タボリ、タデウシ・カントルら)。さて研究のディシプリンは基本的には文学研究からの影響が大きい。すなわち作品内在解釈、間テクスト性リサーチ、精神分析、記号論、受容理論、カルチュラル・スタディーズなどを舞台上演の解釈に応用しつつ、分野の個性として観客反応という要素を有効に取りこむことに努めるのがオーソドックスと考えている。もちろん演劇史の体系的知識はいうまでもなく文脈としてあり、小説や詩とは違って上演されるテクストとしての戯曲の特性は前提である。
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