相澤正彦ゼミナール
研究室から
日本美術の大学院生は現在、修士、博士会わせて8人ほどが在籍します。芸術学科の大学院は日本美術、東洋美術という区分けがありますが、教師の専門性もあり、日本美術は絵画中心、東洋美術は彫刻や仏教美術中心という色分けができています。したがって私のゼミ生は全員が絵画専攻、それも殆どが中世美術という(故意にそうしたわけではないのですが)、近世や近代が花盛りのこの世界では珍しいゼミになっています。

美術史の研究・・・・といえば、まずは対象作品を実際に観る、ということが立前の一つでありますから、院生にもなるべく実作品に接せられるよう心がけてはいます。私が大学院生だった20数年前はあまりこのような機会はありませんでした。今は美術館、博物館もたくさん出来、学芸スタッフの厚意もあって、実作品の熟覧という特別な調査についても比較的容易になったことは有り難いことです。そういう私も教鞭を執る前は神奈川県立歴史博物館で学芸員をしていました。熟覧させる側としては、結構、時間と気を遣うものであることは承知していますから、院生にもそのことを繰り返し説いています。とまれこれまで私がまがりなりにも美術史をやってこれたのも、学芸員時代の折々、実作品から受けた強い印象をバネにしてきたこともあり、作品の持つ力をやはり学生には知ってもらいたいと思います。

私の院生時代のことに話しを戻しますが、なにしろ実作品が熟覧できないという理由で、普段は史料ばかり手探りで読んでいました。中世の日記などめくっていても、美術関連の記事など出てくる確率は極めて少ないのですが、実はその経験こそが、今の自分の糧になっていると言える面があります。もはや学生時代のような時間はありませんが、仕事に行き詰まった時など、史料をぱらぱらめくっていると、その時代が彷彿としてきて妙に心が落ち着く気分になります。院生にも、史料など目を通せるのはこの時期しかない、と発破をかけています。

とまれ学生と共に作品を前にして語り合っていると、自分も教えられることが実は少なくなく、楽しいことに変わり有りません。近々、皆でまた関西方面を廻ってこようと思っています。


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