

今から半世紀以上前の1954(昭和29)年、文芸学部創設のとき、当時の学長、山崎匡輔先生が述べた抱負が、当時の入学案内に掲載されています。世間一般の通り名の「文学部」でなく、あえて「文芸学部」と称したのは、<文学・芸術を中心とする教養教育を、この学部の主眼としよう>という、学部設立の並々ならぬ抱負があったためです。文学と芸術すなわち「ことば」と「美」の尊重、そして教養教育の重視は、徹底した少数教育とともに、旧制成城高校時代からの伝統であり、まさしく成城らしさを示すものと言えるでしょう。文芸学部における教養教育は、内外の学問の交流、視野の広大、知識と実践の一致を図るため、当時としては類例の少ない新鮮な構想でもあったのです。
時代は流れ、現在の文芸学部は国文、英文、芸術、文化史、マスコミュニケーション、ヨーロッパ文化の6学科からなり、国文学、英文学、芸術学だけでなく、人類学、民俗学、歴史学、社会心理学、哲学、言語学など、多様な学問を道具に、人間や社会の幅広い分野をカバーするようになりました。他の大学では、学科の壁が厚く、専門化が進み、縦割りの教育がなされているところもあります。しかし、私たちは、自分の専門だけを学ぶというスタイルはとりません。幅広い視野をもった学生を育てるため、幅広い教養教育を重視する――。私たちは、その志を、いまも受け継ぎ、そして、次代に伝えたい。そう考えています。
そのため、学科の壁を越えて学び、知の世界を広げられるような制度を整えています。国文学科の学生が出版学の授業をとり、英文学科の学生が、イギリスの芸術を学び、ヨーロッパ文化学科の学生が人類学の演習を履修するといったことが十分可能なのです。さらに、2006(平成18)年度からは主専攻・副専攻制度を設けました。この制度を利用して卒業すれば、正規の学科以外に、「第2の専攻」を履修したことが、文芸学部から認定され、認定書が授与されるとともに成績証明書にも記載されます。学際的な研究に意欲的に取り組もうという学生には、最適な制度です。
もう一つの私たちの誇りは、私学では非常に珍しい少人数教育です。卒業論文作成のためのゼミナールで見てみましょう。各学科あわせ毎年、合計およそ75のゼミが開設されています。履修者は約650にですから、ゼミ当たりの平均受講生は8.5人程度。マスプロ教室の授業とはまったく異なります。先生と学生が、一つの小さな教室で、積極的に討論し、考える。一人ひとりの学生の個性を尊重し、興味、関心を伸びるように育てる。少人数教育のメリットはそこにあります。成城学園の創設者、沢柳政太郎先生は、記憶、注入、画一、形式という上からの押し付け教育を否定し、少人数での自発性を尊ぶ教育を唱えました。文芸学部はその精神をいまに伝えています。