


| 木村ゼミ | 貧困と福祉の思想と歴史 |
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| 担当教員名:木村 周市朗 教授 担当科目:社会思想史、経済と社会I | |
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| われわれは市場経済の社会の中で生きていますが、各人が本当に人間的に自立し自己決定できるためには、諸個人を支えるさまざまな基礎的な公共サービスが不可欠です。これは国民的規模での相互扶助の制度(助け合いのシステム)であり、試行錯誤をくりかえしながら人類が手に入れた知恵なのだといってよいでしょう。
しかし、今の日本では、仕事が不安定で低賃金、しかも社会保険の適用も十分でない非正規労働者が、若年層を中心にさまざまな形態で激増しており、雇用労働者の3人に1人、女性雇用者では半数以上にまで拡大しています。一方、正社員は、長時間のサービス残業を強いられ、「名ばかり正社員」も増えています。また、高齢者の年金・医療・介護をめぐる課題も山積していますし、子育て支援や若年層の職業教育訓練も立ちおくれています。 このような多様な生活困難現象や諸格差は、たんに金銭的次元にとどまるものではなく、さまざまな「社会的排除」――家族や企業などの諸組織の成員であることで得られる有形無形の多様な便益から排除されること――という問題も生みだしています。「貧困」現象は、昔も今もその姿を変えながら、国の内外にひろがっているのです。はたして「貧困は自己責任だ」といいきれるのでしょうか。普通の「市民」としての生活というあたりまえのことを確保するためには、何が必要なのでしょうか。社会保障は、相互扶助の現代的制度の一つですが、それを支える社会的連帯は、こんにち、どこに根拠を置き、どのような形態で可能になると考えればよいのでしょうか。 このゼミでは、こうした問題関心から、さまざまな「貧困」現象と、その克服のための制度・政策のあり方や思想の姿を、歴史的・国際比較的な視野で研究します。究極の課題は現代日本の問題ですが、それをより深く冷静に理解するためには歴史研究と外国研究とが欠かせません。「貧困」を発見し、その克服と「豊かさ」の拡充(最も広い意味での「福祉」)をめざす、各国の人々の努力の積み重ねが、歴史を刻んできました。貧困と福祉の歴史には、各国の制度の歴史もあれば、制度を生みだす思想の歴史もあります。もともと社会思想の歴史は、「豊かさ」や「幸福」の本当のあり方をめざして旧思想を乗り越えようとする、実践的な新しい社会ヴィジョンの興亡と発展のパノラマなのですから、われわれはそこから現在を考えるうえで無限の素材と視点を学びとることができます。 いま、何が問題なのか。――それを、日本だけでなくヨーロッパの思想と歴史の経験から考える、そうした遠回りの方法の固有の意義と楽しさを、3年間のうちに少しでも感じとってもらえればと願っています。したがって、卒業後にすぐ役にたつことを期待している人には向いていません。現在の諸問題への関心にしっかりもとづきながら、たとえば「正義」とは何か、などをじっくり考えてみたいというような人の参加を期待しています。 | |