文芸学部

ことば・ふしぎ発見!

英文学科准教授 井上 徹

英語を勉強していると不思議だなあと思うことがたくさんあります。そのいくつかを以下に紹介します。

■アルファベットの大文字と小文字
アルファベットのなかでも C と c , O と o , V と v のように大文字と小文字の大きさが違うけれど全く同じ形のものがある一方で、I と i , J と j , Y と y のように大文字と小文字の形がほんのちょっと変わっているものがあります。なかでも驚いたのは、A と a , B と b , D と d のように大文字と小文字がかなり変わっているものがあること。D と d なんて曲っているところが左右逆になっている。D から d ができるまでに700年もかかったっていうから感動もの。

■テムズ川(The Thames)のth
Thames は th で始まるのに発音は [t]。いろいろな外国語を勉強してみると、th の綴り字をもっている言語はたくさんあるけれど th を英語の thing や this のように発音する言語が珍しいことを知ってびっくり。いちいち舌先を歯の裏につけたり、歯と歯の間に挟むなんて面倒くさい。フランス語ではお茶のことを thé と書いて、[te] って発音するのを知って妙に納得。僕の小学生時代のヒーロー、ミスタージャイアンツは英語の授業で定冠詞の the のことを「テヘ」と読んだとか読まなかったとか。やっぱり彼はスゴイ!

■went
go と過去分詞 gone は g で始まっているのに過去形の went だけは似ても似つかぬ形。英語の兄弟であるドイツ語を勉強したら、go にあたることば gehn の変化が gehn-ging-gegangen となっていて全部 g がついている。やっぱり英語はヘン。で、went の正体は? 実は昔、go の過去形として ēode, gaid, gaed などがあったけれど、どれも使われなくなってしまった。そこで「ゆっくり行く、進む」という、似ている意味の単語 wend の過去形を借りてきたってわけ。そしたら本家本元の wend が規則活用 (wend – wended – wended) になってしまったっているからおもしろい。
(wend は今でも使われる単語だから、みなさんも辞書で確認してください。)

■複数形の不規則変化
現代英語の名詞の複数形のほとんどが語尾に –s をつけるけど、なかには child – children とか foot-feet のような変り種があって覚えるのが面倒。foot – feet, mouse – mice などは子音が同じで母音を変えて複数形にしている。なんかヘンだなって思っていたところ、日本語でも、ひとつ(hitotu)-ふたつ(hutatu)-はたち(hatati)のように、やっぱり子音を固定して母音を変えて複数(この場合は倍数)を作っているものもあってびっくり。世界には何千も言語があるって言われているけど、日本語と英語みたいに親戚関係にないことばでも似ているところがあっておもしろい。同じ人間が話すことばだから似ている部分があっても不思議はないかもね。

■ころころ意味を変える to-不定詞
to-不定詞の名詞用法(「~こと」)と形容詞用法(「~するための、~するような」)まではなんとか理解したとして、副詞用法になると目的・結果・理由・原因・条件・仮定などたくさんの意味があって頭が痛い。

 ①Meg is very pleased to meet her boyfriend.
 ②Meg will be very pleased to meet her boyfriend.
 ③To hear him speak English, you would take him for an American.

①で to-不定詞の部分は「ボーイフレンドに会えて」の意味。ところが②になると、同じ to-不定詞が「ボーイフレンドに会えれば」という意味になってしまう。やっと不定詞の勉強を終えてやれやれと思っていると仮定法のところで③みたいな文が出てきて、to-不定詞は仮定を表すという。だから③は「彼が英語を話すのを聞いたら」の意味。
①は Meg is very pleased だけだと、何を喜んでいるのかわからないから、to-不定詞は欠けている情報を付け足している。①と②は to-不定詞の部分は全く同じだから、意味の違いは Meg の次の動詞のところ (is/will be) から来てるってわかる。③の to-不定詞は「~こと」とか「~ため」って訳すと後ろの意味としっくりこない。仮定の意味になるのはやっぱり主節の would のしわざか!これはあとで気づいたことだけど、to はもともと「~へ」という意味で、物理的な方向だけでなく心がどこかへ向かうっていう意味も表せる。つまり、これからの意味を表すことができるということ。こんなふうに考えると、

 ④I hope to see you again.
 ⑤Remember to mail this letter tomorrow morning.
 ⑥My dream is to take a trip around the world.

なんていうときに to-不定詞が出てくるのがわかる。hope も remember(忘れずに…する)も dream もこれからのことだから to-不定詞と相性がばっちり。これからのことは未来のことだから、②の to-不定詞も納得できる。未来のことはまだ起こっていない、つまり仮の話だから③みたいに仮定法の文脈で使われるっていうのも理解できてすっきり。ばらばらに覚えてきた to-不定詞の意味が、みんなつながっているように見えてきた。

とまあこんな具合に、英語の素朴な疑問はまだまだたくさんあるけれど、英語をよく観察すると、日本語やほかの言語との違いや似ているところも見つかって、ことばに関する興味は尽きません。僕の授業では将来英語教師をめざす人や英語の仕組みに興味を持っている人を対象に、たくさんの「英語の不思議」を取り上げ、ネイティブスピーカーの英語感覚を解説しています。みなさんもいっしょにことばの探検に出かけませんか。

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